第26話 才能と呪い

「DEXが……1……」


俺の口から漏れた声が聞こえたのだろう。

少女がちらりとベリトを見る。

その表情は悔しげで、とても悲しそうで、今にも泣いてしまいそうな……そんな表情だった。


「……瓶さん?」


ベリトが少女の視線に気おされて、少々非難の混じった小声で俺を呼ぶ。


「あ、ああ、すまん。一回は耐えられたんだけど、つい……」

「ううん。いいけど……ねえ、何が見えたの?」


未だに少女にじっと見つめられたままのベリトが、困ったように問う。


トーラドキオル(ドワーフ女/17)クラフト

Lv5

HP:60 MP:11

STR:17 VIT:12 DEX:1 INT:5 AGI:4 LUK:7

スキル:クラフト・鍛冶 クラフト・建築 クラフト・彫金

ギフト:天賦の才(クラフト)

称号:できそこないドワーフ

身長:130 体重:秘匿 B:66  W:55  H:68

状態異常:DEX低下の呪い


相変わらず余計な個人情報まで見えてしまうが、この際どうでもいい。

特筆するべきはスキルの多さ、クラフト系の強力そうなギフト持ち、そしてそれをすべて打ち消すかのようなDEXの値。そして、あまりにもひどい称号。

DEXが低い原因はわかっている。明らかに状態異常のせいだ。


先生に聞いても「不明。秘匿情報に抵触している可能性あり」という、業務連絡のような返答しか返ってこなかった。

ただ、呪いの効果だけは判明した。

全ての生産物の品質が失敗ファンブル、もしくは最低品質になる、というもの。

クラフトの技能持ちには悪夢といっていい呪いだった。


『……という呪いらしい』


わざわざ口にすることでもないので、念話でフィルに彼女がどういった状況なのか、軽く説明する。


『ひどいですね、それ……』

『瓶さんのジュースで呪い解けないのかな?』

『どうだろう? 試してみる価値はあるけど……』


先生に聞いてみたら、可能ではあるけど呪いに対応した【飲料生成】に、必要な成分が足りないとのこと。今すぐには無理みたい。


会話が念話だったせいもあってか、ずいぶん長い間、辺りが沈黙に包まれた。

俺たちと少女の間に、明らかに気まずい空気が流れる。


「……あの、もし間違っていたらすみません」


そんな中、少女……いや、17歳らしいから立派なレディなのだが……明らかに見た目が少女なんだよな。ムッキムキだけど。

ともかく、少女の方から声をかけてきた。


「もしかして……スラストホークのを討伐した冒険者さんですか?」


その問いはさすがに予想外だった。

俺たちが明らかに困惑した顔をしていたのだろう。少女が慌てて違うとアピール。


「あ、いえ、変な話じゃなくて。親方がスラストホークの剣角を手に入れるために商業ギルドと、その、ちょっと色々あって……というかありすぎて。どうにもまとまらないからって、素材が差し戻しになったんです」


ああ、そういやギルマスがそんなことを言ってたな。


「それで、その。さっきこの前を、商業ギルドの方が「変な瓶を持ち歩いている、二人連れの冒険者姉妹が素材を持っている!」って、叫びながら走り去って行ったんです」


変な瓶……。3人の視線が同時に俺に向けられる。


「俺は瓶じゃないぞ」

「ひゃんっ!?」


【ワープポイント】でフィルの前に転移すると、慌てることもなく両手のてのひらに乗せて、少女に向けてくれた。

そしてなぜかベリトが真っ赤な顔をして、両手で胸を隠しながら不機嫌そうに膨れてる。


「え……今のは……転移とんで……?」


目をぱちくりする少女。


「初めまして、俺はペットボトルのアーティ。よろしくな!」


【移動補助】を使って手足を生やし、かっこよくポージング。


「あ、はい。初めまして?」


ほうきを胸に抱いたまま、可愛く首を傾げる少女。

初対面の人の挨拶が、もれなく疑問形になるのはデフォなのだろうか。


「私の名前はトーラドキオルです。長くて呼びずらいのでトーラと呼んでください」

「よろしくな、トーラ!」

「私はフィルです、こっちは妹のベリト。よろしくお願いします」

「ベリトだよー」

「はい、よろしくお願いします、アーティさん。皆さん。それでその、質問なんですけど……」


首を傾げたまま、トーラが問う。


「アーティさんは……なんでしょう?」


それは俺も知りたい。



「すごい! アーティファクト! 始めて見ました!」


質問に答えるついでに、俺の正体と、昨日冒険者になったことなど、かい摘んで説明してみたら、トーラのテンションが振り切れてしまった。


「ちょっと触ってみてもいいですか!?「いいz……」わぁ、感激です!」


食い気味!


ドワーフの血が騒ぐのだろうか。最初の悲しそうな表情から一転。キラッキラの笑顔で俺を持ち上げ、余すことなく、まじまじと観察する。照れるぜ。


「透明なので瓶かと思ったんですけど、ずいぶん軽いんですね! 素材はなんでできてるんですか!? 硝子でも水晶でもなさそうですよね。とっても薄いし、不思議な感じです! ひゃ! なんか今弾かれたような!?」


俺をべこべこ弄ってたからだな。反射が軽く発動したのだろう。


「俺の材質はポリエチレンテレフタレートだ。この世界にはない素材だぞ」


「未知の素材! わぁ、アーティさんってロマンの塊じゃないですか! いいなぁ、私も欲しい!」

「残念ながら非売品だ」

「残念です」


しょぼんとするトーラ。

それでもすぐに俺を観察しながら、笑顔になった。

明らかに幼女に玩ばれているおもちゃ扱いの俺。

信じられるか? これでフィルよりお姉さんなんだぜ。


というか初めの暗いテンションはどこにいったのだろうか。

こっちの方が素なんだろうな。何となくそう思う。


「アーティファクトで冒険者なんて、聞いたことがありません。もしかして凄いお力があるんですか? そうでもしないとスラストホークなんて倒せませんよね、どうやって倒したのか、すごく興味あり……」


トーラがテンションマシマシの声でそう言おうとした瞬間。


「うるせーぞトーラ! 店先で騒ぐな! この恥さらしが!!」


店内からおっさんの怒鳴り声が響いた。

先ほどまで楽しそうに笑っていたトーラの顔の表情が一瞬で抜け落ちる。


「……ごめんなさい、親方」


トーラが店からのっそり這い出した、屈強そうなドワーフに頭を下げる。


「掃除は済ませたのか!? 掃き掃除の一つもできねーから出来損ないって言われるんだぞ。分かってるのか、トーラ!」

「……はい」


赤ら顔で怒鳴り散らすおっさんドワーフに、トーラが無表情で頭を下げる。


「まったく、兄貴の子供じゃなかったらとっくに追い出してるところなんだぞ! まともに鍛冶仕事もできねー極つぶしが! 与えられた雑用位きっちりやりやがれ!」


「……すみません」


トーラが顔を伏せたまま、きゅっと拳を握り締める。


「ったく、ただ飯喰らいの分際で」


……トーラの酷い称号の遠因は間違いなく、こいつのせいだと思う。


「っと、客か? すまねーが今は依頼を受けちゃいないんだ。それどころじゃねーんでな。既存の武器なら店にあるやつを適当に見繕ってくれ」


おっさんドワーフが明らかに適当な感じに手を振る。

あっちへ行け的なアレだ。さすがの俺でもカチンとくる。

フィルやベレスもそう感じたらしく、明らかに不機嫌そうな顔をしている。

ベリト、気持ちはわかるがそのブツブツ言うのを止めなさい。それファイアボールの呪文だろ? 怒られるぞ? 個人的には許可したいところだけど。


「……鍛冶の依頼ではありませんよ。買い物に来ただけです」


フィルが明らかな作り笑顔を浮かべ、おっさんドワーフに微笑みかける。


「そうか。そりゃよかった。今鍛冶ギルド総出でスラストホークの素材を持っている冒険者を探してる途中でな」

「スラストホーク……ですか?」


フィル俺を見る。


「そうだ、スラストホークの剣角だ! こんな田舎町じゃ滅多にいられない極上品が出たってのに、商業ギルドが出張ったせいで、手に入れそこなっちまったんだよ、まったく忌々しい!! しかもなんだ! アイツら独自に冒険者を見つけて交渉しようと町中駆け回ってやがる! 俺達も負けてられねぇ! 王都の品評会が近ぇんだよ! ここで取り逃したら、ガンドのじじいにぶっ殺されちまう!」


徐々に興奮して語尾を荒げるおっさんドワーフ。

おやおや。なんだか色々聞き覚えのある単語が出てきたぞ。

ここでスラストホークの剣角を取り出して「控えおろー!」とかやったら面白いことになりそうだ。


俺はトーラをちらりと見る。

俺をぎゅっと胸に抱いて、悲しそうな顔のトーラ。

俺と目が合った。

何かを訴えるような、潤んだ瞳。


「なぁ、トーラ?」


俺は小さくトーラの名前を呼ぶ。


「……?」


トーラが感情の消えた顔で俺を見る。


「お前はここに残りたいか?」


俺は問う。


「……………」


返事はない。


「もしよかったら……俺たちと来ないか?」


ピクリと、眉が動いた。


「俺たち、今仲間を集めてるんだ。できればトーラに来てほしい」


彼女の才能はすごいのだから。


「……無理だよ」


トーラが小さくつぶやく。


「なぜだ?」

「私には……才能ないから」


トーラが絶望したように声を絞り出す。


「いや、あるぞ」

「ないよ……鍛冶も彫金も、まともに成功したことないもの……」

「トーラは魔物と戦ったこと、あるか?」

「……」


首を横に振る。


「ということはクラフトのみでレベル5まで上げたのか。頑張ってるじゃないか」

「どれだけ頑張っても、最低品質物しかできないの……」


それは呪いのせいだと説明してやりたかった。

でもそれは、今、言葉にしてもきっと意味がないことだと思う。

口で何とでも言えるのだ。

今すぐ呪いを解いてお前はすごいと教えてあげたい。


「俺達ならお前の手助けになれる。だから一緒に行こうぜ?」


優しく説得するも、トーラは首を横に振る。


「……ダメなの。お父ちゃんが死んで、おじさんが借金を肩代わりしてくれたから」


返すまでは……自由になれないのだと言った。

絶望の浮かべた顔で。

光の見えないほどの真っ黒い瞳で。


「借金、返す充てもないし、技術もないの、だから無理……」


トーラの心は折れてしまったのだ。

今の環境に居すぎたから。

そこしか、いる場所が無かったから。

どこで、どうして、トーラがこんな呪いを受けたのか分からない。

知り合ったばかりだけど、先ほどまで俺を見て喜んでいた笑顔を知ってしまった。

この子は絶望の中に居てはいけない子だと思う。

だから。


『フィル、ベリト』


俺は念話で二人に声をかけた。

二人が同時に、ちょっとびくっと反応したのは面白かったけど、すぐに俺を見て返事を返してくる。


『スラストホークの素材なら、お好きに使ってください。ベリトも、いいわよね』

『ふぇ? 何かに使うの? よく分からないけど、瓶さんが使いたいっていうなら、あたしはいいよ?』

『ありがたい』


二人の優しさが身に染みる。

フィルは俺が何をしようとしているのか、なんとなく察したようだ。


「うん? そういやおめぇさんたち、商業ギルドが言ってた冒険者に人相が似てるな……まさか、ちょっと確認なんだが、もしかして、スラストホークの剣角を……持ってたりしないよな……?」


おっさんドワーフがおずおずとフィルに問いかける。

そして何かを探すように周囲を見て、トーラに抱きしめられていた俺を見た。


「ガンドのじじいが言っていた……しゃべるアーティファクト持ちの冒険者……」


何かを恐れるように、ちらちら俺を見る。


「もしかして俺のことか?」


俺はそう言って、転移でおっさんドワーフの前に飛んだ。もちろん手足は展開済み。

くるっと回転して、いいポーズのおまけつき。


「ヴァン辺境伯の宣言のアーティファクト! マジだったのかよ!」


お、俺のことが少しは知られているようだ。

各ギルドに話を回したのかな? あのギルマスもやればできるじゃないか。

……いや、アルマさんか、部下の職員が頑張ったんだろうなぁ。


「確かにスラストホークの素材は俺達が持っている」

「おおおおおお! ほんとか!?」


フィルが肩掛け鞄から、スラストホークの素材を取り出していく。

羽、爪、嘴。そして……剣角。


「こ、これはマジもんの……どうか頼む、これを売ってくれ!!」


人の目もはばからず、がばっと五体投地で懇願を始めるおっさんドワーフ。


「おっさん、取引がしたい」

「お、おう!? 俺にできる事なら何でもいいぜ!」


おっさんドワーフが顔を上げ、上気した顔で俺を見る。


「この素材全部で、トーラの親父さんの借金を返せるか?」

「え? そ、そりゃこの素材なら余裕で釣りも出るが……」

「あ、アーティさん!?」


俺が何をしようとしたのか、トーラが気づき、声を上げる。


「この素材で借金を帳消しにして、トーラを開放してほしい」

「そりゃ願ってもねぇけど、こいつは正真正銘の役立たずだぞ?」

「……それは俺達が決める」

「ひっ!?」


俺の声のトーンが下がったのが分かったのか、おっさんドワーフが慌ててスラストホークの素材をかき集めて胸に抱く。


「アーティさん、私なんかのために、そんなことしちゃだめです!!」


トーラが必死に言う。


「トーラ。いやなら断ってくれてもいい」


「えっ……」


俺はトーラに向き合い、問いかける。


「俺たちと来ないか?」


もう一度、そう言った。


「……なぜですか?」

「お前の才能に惚れ込んだ」

「何度も言ってるじゃないですか。ありませんよ、そんなの」

「何度も言ってるだろ、あるよ、間違いなく」

「なぜ私なんですか? 出会ったばかりじゃないですか……もしかしてロリコンさんでしたか? 私の身体が目当てです?」

「それに関しては力いっぱい否定させていただく。俺はお姉さんが好きなんだ」


ぶっちゃけたら、なぜかフィルとベリトから、ジト目が飛んできた。


「それなら、ますますわかりませんよ。てんで役立たずで出来損ないの私に、なんで優しく声をかけてくれるんですか?」

「お前には才能があるからな。正直言って打算半分だ」

「ないです」

「いや、あるよ」

「ないんです!!」


感極まったのか、とうとうトーラが叫んだ。


「何年工房で修業したと思ってるんですか! 12の時からずっと、ひたすら修行して、ただの一度も低品ですら作り出せない、役立たずなんですよ、私は!」


長年積み重なった思いの丈を吐き出すように、トーラが叫ぶ。


「くる日も来る日も、役立たず、できそこない、ただ飯喰らいと言われ続け……兄弟子たちも、冷ややかに私を見るだけ。誰も助けてくれなかった」


俺は一瞬、おっさんドワーフを見た。


「苦しかった、辛かった……死んだお父ちゃんを恨みそうになった自分が嫌だった」


ばつが悪そうに視線を逸らすおっさんドワーフを見て、腹が立った。


「私は救われてはいけないの。お父ちゃんが死んだのは、私を庇って魔物に殺されたせい。お母ちゃんが死んだのは私を産んだせい。そんな私が、救われていいはずがないのよ。だから」


トーラが俺をまっ直ぐ見る。


「だから、呪われたの」


そう言って、絶望の言葉を吐いた。


「いいや違うな。お前はこれから幸せになるんだ」

「だからそれは……」

「俺と、俺たちと。面白おかしく生きるんだよ。そのためにはお前の力が必要だ」


俺はトーラの前までゆっくりと歩いて行って、手を差し出した。


「だからこの手を取ってほしい。もう一度聞くぞ。俺達と一緒に来ないか?」

「………………」


まぁ、呪いも物理的に消しちまう予定だしな。これは絶対の決定事項だ。


「ダメなんです……」

「ではなぜ、嫌だと言わないんだ?」

「そ、それ、は……」


トーラが困惑したように顔を伏せる。

もう答えは出てるだろう、あとほんの少し踏み出せばいい。


「お前は幸せにならなきゃいけない。俺が決めた。今決めた。異論は認めないぞ。なんせ俺はアーティファクトだからな!」

「そんなの、関係ないじゃないですか……」


「「神器アーティファクト」だぞ? 信じられないか?」


「………………」


トーラが顔を伏せる。

少しの間、周囲に沈黙が包まれる。

そこには、色々な感情が渦巻いていた。


大切なものを何度も奪われ。

守られることもなく。

正しい選択を選ぶこともできず。

ただ生きていくだけの虚しさに絶望し、。

それでも、両親の後を追うことも許されず。

トーラはゆっくり壊れていくところだったのだ。

そんな暗闇の中から光射すが如く、変なアーティファクトが声をかけてきた。

それは、不自由と束縛からの脱却の誘い。

トーラは初めて選択することを許された。

それは、自分自身の足で踏み込まなければいけない一歩だと、彼は言った。


『トーラ、愛してる。お前は生きて、幸せに…なりなさい……』


今際の父の最後の言葉。

トーラのただ一つだけの心のよりどころで。


最悪の呪いの言葉だと思っていた。


でも多分、それは違うのだろう。

幸せになる権利は、実はみんな平等に与えられているのかもしれないと。

この不思議なアーティファクトが、トーラの暗闇にほんの少しだけ亀裂を入れる。


トーラがゆっくりと。本当にゆっくりと、顔を上げた。


「……アーティさん」

「なんだ」

「フィルさん……」

「はい」

「ベリトさん」

「はぁい」


俺たちを見る。ただ静かに、俺たちを見る。


「役立たずの私が、皆さんにどれだけご恩を返せるかわかりません。それでもいいんですか?」


その瞳には、ほんの少しだけ、光が戻っていた。


「何度も言っている。お前が必要だ」

「まるでプロポーズの言葉みたいですね」

「うぇ!? そ、そういう意味で言ったわけじゃないぞ!?」

「ふふ」


トーラが可愛く笑う。

そしてそのまま、深々と頭を下げた。


「私を……地獄から救ってください。お願いします……」


多分折り合いもついていないだろうし、完全に信じてくれたわけではないと思う。

自信だってないだろう。

でも、もう一度、信じてみようと思ってくれたことが、嬉しい。


「ああ、もちろんだ!」


トーラがそっと抱き上げて、胸に抱く。

トーラの瞳から、大粒の涙が何度も流れて落ちた。


「……おい、おっさん」

「は、はい!?」


おっさんドワーフに宣言する。


「素材と交換で、借金の証文を渡してもらおう。騙したりするなよ? 俺は今、結構本気で怒ってるんだ」

「私も怒っています」

「瓶さん! ファイア解禁? めんどくさいから建物ごと燃やしていいー?」

「おっさん次第だな」

「ひぃ! す、すぐにお持ちします!!」


慌てて工房から証文の束を持ってきたおっさんから、それを取り上げ、すぐさまベリトに燃やしてもらう。

本当はちゃんと確認したほうがよかったんだろうけど、1秒も長くトーラをここに置いておきたくなかったのだ。


ベリトア燃やした証文の束が、灰になって空を舞う。


長年トーラを縛り上げていた足枷が、燃えて天に還った証でもあった。

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