第23話 5日目ー8
スープの炊き出しは大好評だった。
まず、この地で旨味成分を大量に含んだスープを楽しめるのは貴族か王族くらいしか居ないだろう。
更に言うと、こちらで手に入る野菜類よりも、俺が変質魔法で造り出す野菜モドキの方が地球産を素にしているだけに品種改良が施されているから美味いんだ。
それは鶏のつみれモドキも同じだ。
日本のスーパーで売っている食品類は全て美味しくなる様に改良に改良を重ねた逸品揃いだと今だと断言出来る。
その証拠に、スープを飲んでいる住人が全員満足気な顔をしているからな。
ちょっと意外だったのだが、スラム街の中に建てられている教会から、炊き出しの手伝いに神官と神官補の2人が来てくれた。
時間が空いた時に話したんだが、神官は35歳でマクガルド・ヒルサイド2等神官というらしい。神官補はルーク・マウントス3等神官補と言って駆け出しに近いらしい。
2等神官はそれなりに偉いみたいだが(自嘲気味に言っていた)、ドムスラルド領の教会を閉鎖する時に打診された異動を断って、領民の為にわざわざこのスラム街に教会を自身で建てたらしい。
マウントス神官補の方は19歳らしいが、やたらとキラキラとした目で俺を見ていた。
エド爺が言っていた様にこれまでも定期的に教会が炊き出しをしていたらしいが、規模はこれほど大規模なものでは無いらしく、『浄財』で辛うじて細々と行っていたみたいだ。
それでも、王都内のスラム街の方では餓死が日常茶飯事だった事を考えると、こちらのスラム街で餓死者を出していないのは偉業と言って良いだろう。
うん、俺はそう言う話に弱いんだ。
身を削って他人の為に行動出来る人間は報われてしかるべきだ。
という事で、マクガルド・ヒルサイド2等神官には、特別に精霊+を1羽をプレゼントしよう。
これまで彼に憑いていた精霊(神官などの治癒魔法を主に使う人間には数年くらいすれば特定の精霊が憑く事が多い)はルーク君に憑いてもらおう。
いいかい? いいらしい。
これで2人とも治癒魔法の効果はかなり上がる筈だ。
下手すれば、マクガルド・ヒルサイド2等神官はこの国で1番の治癒魔法使いになったかもしれない。
教団でも治癒魔法に特化した『安寧を齎すメシーナ様』を崇めるメシーナ派が知ったら、絶対に引き抜きに来るレベルだ。
当然、俺は後悔も反省もしない。
そうそう、今後の炊き出しは俺が材料と調理器具を出して、教会主催でやって貰う事にした。
今までは教会の土地を使っていたが、狭いらしいのでここでやる事にした。
こうなって来ると、巨岩のせいでこの場所を使えなかった事が幸運に思えて来るから不思議だ。
教会を隠れ蓑に使う事は、打算的だが、俺だけ目立つのではなく、監視の目を分散させる意味も有る。
これでは『浄財』ではなく、『浄罪』だな。
まあ、現在進行形で進んでいるエド爺の召喚を覗き見ている俺にとっては、偽善や打算などは今さら感が有って心も痛まないんだが。
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