復讐の魔王は、転生を繰り返し女勇者を手籠めにする。

異常那月

プロローグ〜復讐の始まり〜

「これで最後だ、魔王!」


 手にした大剣を掲げ勇者が魔王に向って駆ける。魔法使いから発せられた魔法がその身体を包む。《身体強化(ストレングス)》の魔法をかけられた勇者は地面を蹴ると高く跳躍した。その乳房がプルンと揺れ、短いスカートが際どいラインまで翻る。


 その刹那、魔王の視線は白い太腿に奪われた。攻撃の為に放った無数の触手が意識を逸らされ狙いを外す。強引に軌道を曲げ上空の勇者を狙うが、神官の防御魔法によって弾かれる。魔王は神官を睨みつける。が、その法衣の上からでもわかる豊満な肢体に、思わず顔がにやけてしまう。


「い、いかん! 《防壁(プロテクション)》」


 しかし、そこは魔王である。瞬時に顔を引き締め防御結界を張ると、次なる魔法を発動させようとする。しかし、いつの間にか側面にまわっていた剣士の一撃が防御結界を粉砕する。


「なにぃ!」


 魔王がそちらを向いた時には、既にその姿は離れていた。素早く動く騎士の引き締まって弾力のありそうなムチムチの太ももが魔王の視界にちらつく。自然に目で追ってしまうのは、魔王といえど男の性(さが)だ。


 その隙を見逃す勇者ではなかった。小生意気そうな少女の姿をした魔法使いにより、空中に作られた足場を蹴ると魔王の手前に着地した。上からの攻撃を予想していた魔王は完全に意表をつかれる。勇者はその勢いのまま、地面を蹴り水平に飛ぶ。勇者の持つ大剣が、深々と魔王の胸に食い込む。


「ぐおぉぉっ! な、なんの、これしきの事で魔王たる私が、倒れるとでも……」


 生命の源である魔力を他者から搾取することで膨大な力を蓄えたその身体は、物理的なダメージでは倒れることはない、はずであった。


「な、なんだ、これは。力が……」


 魔力が急速に失われていた。胸に突き刺さった大剣に吸い込まれているのだ。勇者が持つには、あまりに禍々しい姿の大剣、それに魔王は見覚えがあった。


「それは、魔力食い(マジックイーター)!」

「消え去れ、魔王!」


 勇者は力を込めさらに深々と突き刺す。凄まじい勢いで、魔王の魔力が剣に吸い込まれていく。


「おのれぇぇ。このままで、終われるものかぁ!」


 身体が朽ちていく中、残された僅かな魔力を振り絞り、自らの魂を移す禁呪魂の転生(リインカネーション)を唱えた。



 完全に油断だった。これまで、幾度となく訪れた勇者と称する者達を屠ってきたというのに。まさか勇者が封印された魔剣、魔力食い(マジックイーター)を手にしていたとは。


 魔王の肉体が勇者達の目の前で灰になっていく。喚声を挙げる勇者一行。その様子を転生した姿で遠目に見ながら、魔王は叫んだ。


「なんであいつらが魔力食い(マジックイーター)を持ってんだよ! それに金髪、巨乳の勇者なんてありかよ! それに、あの鎧は何? 隠す気あんの? 気になって戦うどころじゃないだろ!」


 そう、この勇者は女、そのパーティーの魔法使いも、神官も、騎士までもが女。皆タイプは違えど魔王の好み。どストライクだったのだ。


「くそぉ、今に見てろ。力を取り戻し、あいつら全員ヒイヒイ言わせてやるからな!」


 見事な負け台詞を吐く魔王だったが、自らの姿に気づくと、激しく絶望した。魔王が転生した生命体は、直系3センチ程の丸い殻を持った、この世で一、二を争う歩みの遅い生命体、蝸牛だったのだ。


「よりによって蝸牛かよ! どーすんだよこれ!」


 ここから、魔王の長い復讐の旅が始まる。


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