そんな風にキミが笑うから

夏音

初恋

高校3年の、まだ5月になりたての頃


クラスのみんなで海に行ったんだ


なんで行ったのかとか全然覚えてなくて


でも、その日は天気もよくって

海から吹いてくる風が頬を撫でるのが気持ちよかった


遠くではしゃぐクラスメートの声


ぼくは何人かの友だちと砂浜まで下りて

暖かい日差しと優しい風を感じながらボンヤリと海を眺めてた


「ねぇ、一緒においでよ」


不意に声を掛けられて目を向けると

波打ち際に女友だちと足を浸すキミがいた


世界の色がクリアになる

他の全てが背景にかすむくらい


気持ち良さそうに目を細めて柔らかく笑うキミ


そんな風にキミが笑うから


ぼくはキミから目が離せない


キミと一緒にいたいと


自分の目の前の全てを賭けて


履き古したスニーカーを脱ぎ捨てた

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