第11話 キミが絶対に転生するRPG♪


 主人公の勇者はハトノショ。

 ヒーラーは俺(山田マモル)が担うことになった。


 プレイするRPGの戦闘システムは、コマンド選択式のターン制バトル。 

 味方を一切攻撃できないシステムだ。


 ハトノショが敵に攻撃して、俺が回復をするというパターンで、雑魚敵を倒して物語を順調に進めていき……。


「あ、最初のボスですね」


 洞窟の奥に潜んでいたボスとの戦闘が始まった。


「よし、じゃあ攻撃頼むぞ。さっき覚えた爆炎剣ばくえんけんをお見舞いしてやれ!」


「は、はい!」


 ハトノショが勇者のコマンドを入力して、


【ハトノショは爆炎剣を放った!】 


【しかし謎の引力が働き、剣先が山田マモルに向かう!】


【山田マモルに9999999のダメージ!】 


【山田マモルは瀕死状態になってしまった!】


 ヒーラーの山田マモルは棺桶のアイコンになった。


「何でだああああああああああああああああああああああ!」


 俺は叫んだ。


「おかしいだろおおおお! このゲーム仲間に攻撃できないシステムだよね? なんでテメーがトドメ刺しにきてんの? つーかダメージ量殺意さついありすぎだろ! 序盤じゃゼッテー出ない数字叩き出してんじゃねーよ! チートコードでも入力したのかテメーは!」


「ああああぁ……。ごめんなさい、私、どうやら転生癖てんせいぐせがあるようで……」


 転生癖って何?


「小説でも登場人物を転生させないと気が済まなくて……」


 そうだとしてもおかしくない? 

 ゲームのシステムにまで影響するってこと? 

 もうNASAナサかどっかで研究対象になるレベルじゃねーか。


「あ、でも今回は瀕死になってるだけで転生してないですね! 一歩前進です!」


 それは前進してるって言えるのか?


「あと山田マモルさん、凄いですよ!」


「……何がだよ……」


「ほらほら、自分のステータス見て下さい!」


 俺は棺桶(瀕死)になったヒーラー、山田マモルのステータスを確認。


【ヒーラーの瀕死状態の効果。勇者のHPが減るごとに自動でHPを全回復する。勇者が一撃で倒されるようなダメージを受けた際、HPは必ず1残る。勇者がHP1の状態で攻撃を受けた時、逆にそのダメージを吸収する】


 なんでヒーラーなのに瀕死状態の方が強いの? これじゃほぼ無敵じゃねーか勇者。


「す、凄いです山田マモルさん! ああ、もうサクサク進んじゃいますよこれ!」


 だろうね。


「楽しいですね」


 不意に、ハトノショがそう言いつつニコッと笑った。とても純粋で、本当に楽しいんだなと感じた。その笑顔を見た俺は、ふわっとした雰囲気に包まれていた。


「……ふん……。まあ、ハトノショが楽しいんなら良いや……。俺をこのまま蘇生させるなよ……。棺桶のままのが強いから……」


「あ、はい!」


 ハトノショはどんどん進めていき、物語は一気に中盤へ差し掛かった。

 その時、


【ここからもう1人の主人公の物語が始まります。名前を決めてください】


 ゲーム画面にそう表示された。


「あれ? これって主人公もう1人居るのか?」


「そのようですね。うーん、名前どうしましょう?」


「そーだなー……」


 って待てよ……と、俺はパッと閃いた。


「そうだ! これだ!」


 転生を回避する、完璧なアイディアを思いついた。

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