8. また会ってくれる?

8. また会ってくれる?




 カフェのあとショッピングをしたりと充実した時間を過ごすことができた。最初は緊張していたけど、葵ちゃんの普段の姿を知れて楽しい時間を過ごすことができた。本当にあっという間に時間が過ぎていた。


 そして、飲み物を買って駅前のベンチで一休みしてから帰ることにする。


「あ~遊んだね!久しぶりかも、こうやって楽しく色々したの」


「そっそうなんだ?」


「うん。やっぱりたまには外に出ないとね。でも雪姫ちゃんと遊べて楽しかったよ」


 葵ちゃんは笑顔で言う。そして時計を見ると、時刻は17時になっていた。そろそろ帰らなきゃ……そう思っていると葵ちゃんが呟くように言った。


「……なんかあっという間だね。本当に雪姫ちゃんは不思議な人……」


「そっそうかな?でも……私も……今日はすごく楽しかったよ」


「そっか。じゃあ帰ろうか」


「うん。葵ちゃん気をつけてね」


 そう言ってボクは家に帰るため歩き出す。二三歩歩いたところで……


「雪姫ちゃん!」


 葵ちゃんがボクを呼び止める。ボクは振り返ると、そこには少し寂しそうな顔の葵ちゃんがいた。


「あの……私と……また……会ってくれる?」


 ……あ。そうだ……特に次の約束をしているわけじゃないんだ。ボクは……また会いたい……


「うんもちろん。私も……葵ちゃんに会いたい」


 ボクは笑顔で答える。すると葵ちゃんは急にその場にしゃがみこんでしまう。どうしちゃったんだろう?


「え!?だっ大丈夫!?」


「……うん……大丈夫……一気に緊張の糸が切れちゃって……」


「緊張?」


「……うん……だって初めてのデートだし、雪姫ちゃんに嫌われたくないなって緊張してたんだもん……こう見えてもずっと不安だったんだよ?」


 葵ちゃんは恥ずかしそうに呟く。


 え……あの葵ちゃんが?


 いや……違う。ボクは葵ちゃんのことを何も知らない。完璧な美少女……もちろんこういうデートにも慣れているかと勝手に思っていたけど、本当は不安で……


 そう思うとボクは自然と体が動き、葵ちゃんの手を握りしめていた。葵ちゃんは驚いた表情を浮かべるも、すぐに優しい眼差しになり微笑んでくれる。そしてゆっくりと立ち上がる。


「良かった……また約束できた」


「そんな断らないよ。本当に……私も楽しかったし、こうやって……デートしたのも初めてだし……でも彼女とか良く分かってなくて……葵ちゃんのためになってるか不安だし……」


「あのさ。雪姫ちゃんは友達として私に接してくれればいいよ?そういう約束でしょ?」


「あっうん」


「……私は彼女だと思って接するけどね?」


 そうウインクをする葵ちゃんはいつもの葵ちゃんに戻っていた。やっぱり可愛い……


「それじゃ……また連絡するね?」


「うん。またね葵ちゃん」


 そして葵ちゃんは大きく手を振ってくれた。それにボクも手を振り返すと、葵ちゃんも振り返してくれた。


 駅に入って行く彼女を見送ると、ボクは自分の家へと帰ることにした。不思議と足取りは軽やかだった。


 ふと右手の薬指を見るとお揃いのペアリングが茜色に反射し輝いている。まるで葵ちゃんがつけているピンク色のペアリングのように見える。それを見て思わず顔が熱くなる。


 本当に……あの葵ちゃんとデートしたんだ……信じられないけど、夢じゃない。


 そう思いながら空を見上げると夕日が沈み始めており、もうすぐ夜が来ることを告げてくる。これからもっと仲良くなれるかな?ボクは期待を込めながら家路につくのであった。

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