第12話 部活見学

時の流れとは早いもので、入学から1ヶ月が経とうとしていた。そして私はある1つの問題に直面していた。それは――――


「あ、そういえばさ、カナは部活どこはいるか決めた?」


そう、部活動である。


魔術学院では原則として全員部活動に入ることになっている。だが私はまだどの部活に入るか決められていないし、今はちょうど新入生歓迎週間なので見学に行くなら今だろう。


「いや、それがまだ決まってなくて…」


「じゃあ一緒に色々見て回ろうよ!僕もまだ決めてないんだ~」


「いいね、行きたい」


「それなら私も行くわ!」


「じゃあ俺も!」


「それなら皆で行こうか。皆見に行きたいところはある?」


「私はダンス部を見に行きたいわ!」


マリーは確か前の魔法実習の自由発表でも踊っていたので、ダンスが好きなのだろう。


「俺は剣術部と調理部あたりかな」


アランは随分と両極端なチョイスだが、剣は強いしパイは焼くしで今までを見ればうなずける。


「僕は特にこれっていうのがないから色々見てみたいな!」


ジークは恐らくできることがありすぎて、逆にやりたいことが定まらないのだろう。


「カナは?」


「私もどういうのがあるかもよくわかってないし、色々見たいかも。」


ちなみに前世で中高は理科部に入っていたが、この魔法ありきの世界に「理科」「科学」という概念があるとは考えづらい。しかも大学ではサークルには入っていなかったので、どこに入るか決めかねていた。


「オッケー!そしたらアランとマリーの行きたいところ優先しつつ、色々見て回ろう!」


こうして私たちの部活見学会が始まった。


部活動の種類は、前世にもあったようなものも無かったものも様々だ。


「サッカー部体験やってます!」


「魔法の研究にご興味は~?」


「吹奏楽部入りませんか?初心者でも大歓迎です!」


部活は、一部を除きこの部活棟にまとめて部室がある。そのためまとめて見学するには利便性が高い。


「どこから行く?」


「とりあえずダンス部・調理部・剣術部で近いところから先に行けばいいんじゃないかな」


「そうね!それならまずは…」


「おい。そこのお前、止まれ。」


すると突然、後ろから話しかけられる。振り返るとそこには、青色の髪につり目で紺色の瞳、身長180cmという高身長の少年がお供らしき生徒を従え仁王立ちしていた。


私はこの少年を知っている。今年の一般入試次席合格者であり、「Amour Tale(アムールテイル)」攻略対象者の1人のリアムール王国第2王子、ラクア・リアムールである。遠巻きで見たことはあったが、第二王子と会話するのも攻略対象者と接触すること自体もこれが初めてだ。


「『お前』、と言うと誰のことでしょう?」


「お前以外に誰がいる、推薦合格者。」


「……私にどういったご用件でしょうか、殿下」


第2王子ラクア・リアムールは典型的な「俺様」キャラである。俺様な上に王族という最高権力持ちとか地雷な気しかしないが、あちらから接触してきた以上王族を無下に扱う訳にはいかない。


「俺の部屋に来い。話はそれからだ。」


ここで言う「俺の部屋」は寮の寝室ではなく、王族にのみ用意される校舎内の休憩室のことを言っているのだろう。


「わかりました。」


「皆、悪いけど3人で見学行っててくれる?」


「いいけど……1人で平気?」


「大丈夫。できたら剣術部は私も見たいから調理部と舞踏ダンス部に先に行っててくれると助かるかな。」


「…うんわかったよ、何かあったら言うんだよ!」


「うん、ありがとう」


「おい、そこで何をコソコソ話をしている。」


「いえ、お待たせしてしまい申し訳ありません。」


「ふん。とっととついて来い。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る