第8話 魔術学院の授業③

「さあ、そろそろ休憩終わりだ!次は自由発表だ、皆楽しめよ!」


人の芸を見るのは実に楽しかった。マリーが土魔法で土人形を踊らせて自分も踊ったり、ジークが風魔法で無限ジャグリングをしたり、火魔法で焼いたパイを配る生徒がいたりなど様々だった。


「次はベルナールだな、何をする?」


食べ途中だった貰ったパイを飲み込む。絶妙な味付けと火加減で美味しかった。


そして前に出る。水属性持ちは元の希少性と偶然が重なりクラスで私だけだし、水を使う芸で天気が快晴とあらばやることはこれだろう。


「私は噴水を作って虹を出そうと思います。」


そう言って地面の2箇所に魔法陣を出し、そこから水を噴出させる。すると丁度2つの真ん中辺りから虹が現れる。


「綺麗ですわ!」


「涼しい~気持ちいい~!」


「すげー!」


皆目をキラキラさせて見ている。先程の丸太攻撃、もとい丸太破壊で怖がらせたかと思ったが、どうやら大丈夫だったようだ。


「終わりです」


拍手が起こる。喜んで貰えたようで良かった。




――――――――――――――




その後他の座学の授業を2,3コマ受けて、今日の授業は終わりである。マリーと一緒に寮に帰ろうと支度をしていた。言い忘れたがこの学院は全寮制である。


ジークともう1人、暗めの赤髪に深紅の瞳の少年が近づいてきた。


「カナ、マリー!紹介するね、この人はアラン・アゴーニ、さっきの自由発表でパイ焼いてた人だよ!」


「えっと、アランだ、じゃなくてです!よろしくスオーロさん、ベルナールさん!」


「よろしく」


「よろしくお願いしますわアランさん!私のこともマリーと呼んで!」


「私もカナで大丈夫だよ」


「わかったカナさん、マ、マリーさん!」


なぜジークは急に我々にアランを紹介したのかと思ったが、今の会話で何となく察せた。恐らくアランはマリーのことが好きなのだ。一目惚れだろうか。思い返せば教室にいる間時々視線を感じていた。てっきり推薦合格者が珍しくて見てきているのかと思ったが、実際は私と一緒にいたマリーを見つめていたようだ。まあこのマリーの可愛さに当てられてしまうのは仕方がない。実際、マリーを狙っていそうな男子学生はクラス内外で見受けられる。


この2人が付き合ったらおこぼれでまたパイを貰えないだろうか、なんて思いながらアラン達といくらか会話した。


「さてカナ、そろそろ帰りましょうか。ジークさん、アランさん、また明日!」


「そうだね、じゃあさようなら」


「うんさよなら!」


「ま、また明日!」


私は歩き出しかけて立ち止まり、振り返った。そして親指を立てながらアランに真顔で一言。


「頑張ってね」


そのときのアランの赤面ぶりといったら実に面白かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る