12 「優良物件」


「高校時代に二人は知り合ってたのか?」



黙って聞いていられず、俺は二人の会話にカットインした。



「私は知ってたわ。生徒会長の明堂先輩...ですよね? 私が高1の時の生徒会長。イケメンすぎる生徒会長って、私の学年でも人気だったんだから」



なんか、悔しい。


俺の心に負の感情が生まれた。


いや、前からあったのかもしれない。


ほぼ毎日一緒にいる帝翔を、マリアに今まで一度も紹介しなかった。


タイミングが合わなかったと自分に言い訳して、無意識に、俺は二人が出会うことを避けていたのかも。



「でも帝翔さんは何故私を? 一回、裏庭に呼び出されたことがあるんですけど、覚えてますか?」



裏庭に呼び出された?!


帝翔に?


何のために呼び出したんだ?!



「廊下で見かけて、美人だなって。それで、連絡先交換したいなと思って中庭に呼び出したんですけど...頭が真っ白になって...逃げてしまいました。ごめんなさい」



俺の疑問に答えるように、帝翔はそう言った。


胸が張り裂けそうだ。


それってつまり、帝翔はマリアに一目惚れしたってことじゃないか。


こいつは誰にでも連絡先を聞く男じゃない。



「へえ、帝翔が女の子を気に入るなんて珍しい。これも何かの縁だし、いま連絡先交換すれば?」



俺は傷付いていた。


でも、そう悟られたくなくて、強がって余裕を見せた。



「帝翔は良い男だぞ。イケメンだし、高学歴だし、金は持ってるし」



自分で言っていて嫌になる。


二人が連絡先を交換したら...高確率でうまく行く。


マリアは結婚願望が強いけれど、なかなか良い男と巡り合っていない。


面食いな上に、ヘラ(ギリシア神話の女神)顔負けの嫉妬深さ。


イケメンで遊んでない男なんて...少女漫画にしかいないだろ。


だが、その理想を叶える相手としては、帝翔はぴったりだ。



「それに、こう見えて童貞だし。ガード固いから浮気する心配なし」



マリアにとってこれ以上の優良物件はいない。


...俺は、こんなことを言っていいのか?


二人を繋げていいのか?

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