018-工城建造計画

それから数日後。

俺はネムとルルの二人と遠隔で会話をしていた。


「この間のことは済まなかった、俺は単なる人間だ、神を名乗るなど烏滸がましい事をしてしまった、謝罪する」

『あ、頭を上げてください! た、例え神でなくとも、あなたが偉大な人間であるということに変わりはありません!』

『そうだよ...じゃなくて、そうです!』


それが嫌なんだがな。

俺は別に偉大ではない、Noa-Tunは嫌がるだろうが、この場にいたのが俺以外の誰かだったとしても、きっと同じようにこの二人を救っただろう。

もしくは、太陽風で早くに位置がバレて襲われていたかのどちらかだな。


「あなた達も、もうすぐ地上に戻られる故、この事を同族に広めて欲しい。俺は神でも王でもない、それでも付いてくる気があるのならこちらは胸襟を開くと」

『.........良いのですか?』

「こちらとしては、ぜひそうして欲しい」


幼い彼女らに、俺の事情など測り知れないだろうが.....

少なくとも、大人たちに言葉を伝えるくらいは可能だろう。


『あ...あの! 私たち、ここにずっと住みたいです!』

「すまないが、それは許容できない」


ネムの言葉に、俺は首を振る。

使者を返さないのは、交渉で最も悪手となる行為だ。


「だがもし、そちらの統治機構が再び派遣を決定するような事があれば、こちらは受け入れよう」


二人の顔が綻ぶ。

そんなに良い生活をしたのか?

まあ、この要塞は俺の世界でもSF要素の塊だ、二人にとっては素晴らしい宮殿に映ったのかもしれない。


「...」


だが、それは子供心から来るものだ。

無機質なこの場所にずっといると、彼女らのような存在でもいなければ気が滅入る。

こんな星空の牢獄になど、いる必要はない。


「戻れ、生きるべき土地へ」


最後の言葉は通信を切って言った。

少し寂しいが、些細な問題だ。







『意見具申があります』

「聞こう」


俺はオーロラの話を聞きながら、復旧状況を確認する。


ホールドスター 『Noa-Tun』 状態:係留 惑星軌道上


◇物資倉庫 状態:『平常』 

◇修理ベイ 状態:『平常』

◇マーケットベイ 状態:『切断』

◇ドローンベイ 状態:『平常』

◇加工施設 状態:『平常』

◇研究施設 状態:『平常』

◇居住区画 状態:『大破』 修復中

◇弾薬庫 状態:『平常』

◇小型艦艇ドック 状態:『平常』

◇中型艦艇ドック 状態:『小破』 修復中

◇大型艦艇ドック 状態:『中破』 修復中

◇旗艦級ドック 状態:『建造中』

◇戦闘指揮所 状態:『平常』 拡張中


◆シールド 100%

◇シールド発生コア 状態:『平常』

◆アーマー 100%

◇アーマーリペアシステム 状態:『建造中』

◆HP 100%

◇オービタルコアシステム 状態:『稼働中』

◆非常電源残量:100%

◇セントラルコアシステム 状態:『稼働中』

電力バランス:正常


大分修復してきたな。

俺がそう思いつつ、モニターを閉じるとオーロラが話し始める。


『新しく、ザヴォート工城を建造しませんか?』

「工城か.....」


ホールドスターが戦闘特化の要塞であるならば、ザヴォートは生産に特化した建造物だ。

完成すれば、ホールドスターに直接リペアラを掛け、自分はリーンフォース状態になってダメージを受けなくする事も出来る、支援役という面もある。


「その心は?」

『惑星からの物資が続々と集まり始めていますが、ホールドスターの設備ではこれらを適切に処理しきれません。水資源の完全濾過装置は建造していますが、製造ラインが少なく他の中型装置の製造ラインが止まっています』

「現在の資源から見て、建造による一時的な弱体化は見過ごせないが?」

『敵勢力が存在しないため、現在より多くのシステムリソースを使用して採掘艦隊を動かせば、恐らく減少した資源は数週間で元に戻るはずです』

「..........わかった、とりあえず見積りと建造地点の測量だけ任せる」

『わかりました』


工城か......

確かに必要だ。

だが、少し性急に過ぎるような気もする。

オーロラ、お前は一体何を考えている?

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