010-領域隠蔽ユニット防衛戦-後編

フレアの第二波によって、艦隊は甚大な被害を受けた。

モルドレッド級はパワーコアが暴走し使い物にならなくなった。

スレイプニル級は半数がシールドの安定性が低下していた。

さらに、Noa-Tunのシールド外設備が安全装置の発動に連動して停止していた。


「スレイプニル、シールドエコー開始!」

『シールドエコー開始』


ほぼ同時にスレイプニルが共鳴派を放ち、それが他のスレイプニルが放った共鳴派と同調する。

シールドジェネレーター同士が共鳴し合い、互いのシールド効率を倍に高めていく。


『第三波接近!』

「抑制ユニットを再展開! 残存したユニットを集束配置!」

『命令を実行します』


Noa-Tunの防御システムには影響が及ばないことが分かったので、荷電粒子抑制ユニットを集束配置し、隠蔽ユニットの防御に重点を置く。


「一体何波あるんだ?」

『残り六波です、艦隊総司令』


来すぎだろ。

そんなツッコミを呑み込み、俺は戦況を把握するべくあらゆるウィンドウを開く。


『第五波到達、抑制ユニットの22%に異常が発生、自爆させます』

「スレイプニルが一隻異常を起こしてるぞ」

『既に解決済みです。低電圧状態へと移行させ、不要な部品に電磁波をサージして分離しました』

「そうか、わかった」


やるな。

回路の中に入り込んだ余計な電磁波をこんな方法で抜くとは。


『第六波到達、抑制ユニット82%が異常をきたしたため、自壊させます』

「残ったユニットを更に収束配置!」

『第七波到達!』

「くそっ、やっぱりか!」


第七波が到達し、スレイプニル艦隊の表示が真っ赤になる。

これで残りの守りはペイロード三隻だけか。


「抑制ユニット、再展開!」

『在庫切れです、艦隊総司令』


しまった、もっと作っとけばよかった。

そもそもが艦隊戦ですら使わないゴミなので、在庫が元々無かったんだった。


『第八波到達、ペイロードの電磁防御ユニットが焼滅しました』

「焼き切れたか...」


ついに、守りは完全になくなった。


「最終...兵器か...」


こればかりはこんな場所で使うのは勿体無いのだが...

本当にピンチなので仕方がない。


「外周リングを回転させ、遮断フィールド展開装置の照準を領域隠蔽ユニットに向けろ!」

『命令を実行します』


直後、ブリッジ全体に大量のモニターが展開される。


『燃料の備蓄率、71%に低下』

『最終波到達まで32秒』

『エネルギー充填完了、照準誤差修正』

「発射準備!」

『発射準備完了』


照準の中にある領域隠蔽ユニットを一目見て、俺は宣告する。


「起動!」

『遮断フィールド展開』


あらゆる光線系の兵器を完全に遮断する、最強と言っても過言ではない最終兵器。

その名を、最終ドゥームズデイ・兵器デバイスと呼ばれる。


最後の波を遮断フィールドが防ぐ。

攻撃に使われるようなドゥームズデイデバイスをも防御するそれが破られることはあり得ない。


『艦隊総司令、この効果的な兵装を、なぜ温存したのですか?』

「連発できないし、そもそも一発撃つごとに膨大な燃料を消費するからな」


せっかく93%まで貯蓄したのに、22%も減らしてしまった。

燃料資源のアイスベルトはまだまだ尽きないとはいえ、採掘艦隊を動かすリソースも無限じゃないからな。


『太陽フレア、完全に沈黙。これより最大級警戒態勢を解除いたします』

「ああ」


安心したら、なんだか疲れてきた。

俺は机に突っ伏して、モニターを開く。


「こんな時間か...」


あれから数時間も経っていた事に気づき、俺は微睡の中で泥のように眠るのだった。

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