005-コア復旧

『――――てください』


どこか遠くから、声が聞こえる。

慣れ親しんだはずの声なのに、俺はその声に聞き覚えが無かった。


『――――起きてください、艦隊総司令!』

「うわっ!?」


何かを掴もうとした手は空を切り、俺の視界一杯に女性の顔.....オーロラの顔が映った。

俺はあちこちに身体をぶつけた末に、起き上がった。


「.....なんだ、起こしてくれって頼んだか...?」

『いえ、艦隊総司令は就寝後17時間21分の睡眠を取っていました。私が覚醒状態へと艦隊総司令を移行させたのは、次の作業内容の指示をお願いしたいからです』

「....って事は」

『はい、セントラルコアシステムが稼働可能状態になりました』

「よしっ!」


全ての前提にあったセントラルコアが起動可能になった。

俺は乱れた服を正し、言った。


「.....セントラルコアシステムを稼働! 次は研究施設にリペアドローンを集中させ、コア出力が安定すると同時にストラクチャーアーマーリペアラを起動しろ」

『了解、セントラルコア――――点火』


直後、遠くから重低音が響き、戦闘指揮所自体が一瞬大きく揺れた。

揺れはすぐに収まり、戦闘指揮所の計器が全て一斉に起動を始めた。


『現在セントラルコア出力20%、発電した電力をホールドスター内部の電気機構の再起動に使用中――――』


俺はNoa-Tunの状態を再度確認する。


ホールドスター 『Noa-Tun』 状態:係留 未知の惑星軌道上


◇物資倉庫 状態:『破損』

◇修理ベイ 状態:『大破』

◇マーケットベイ 状態:『崩壊』

◇ドローンベイ 状態:『破損』

◇加工施設 状態:『小破』

◇研究施設 状態:『崩壊』

◇居住区画 状態:『崩壊』

◇弾薬庫 状態:『大破』 

◇小型艦艇ドック 状態:『破損』

◇中型艦艇ドック 状態:『大破』

◇大型艦艇ドック 状態:『崩壊』

◇旗艦級ドック 状態:『未接続』

◇戦闘指揮所 状態:『中破』


◆シールド 0%

◇シールド発生コア 状態:『破損』

◆アーマー 3%

◇アーマーリペアシステム 状態:『未接続』

◆HP 62%

◇オービタルコアシステム 状態:『稼働中』

◆非常電源残量:99.3%

◇セントラルコアシステム 状態:『稼働中』出力20%《不安定》


ボロボロだが、何とか立ち直れた。

エネルギーがあれば何とでもなるし、一週間もあればほぼ修復も完了するはずだ。


「よし、俺は何をすればいいと思う?」

『作業が完了するまでは就寝に戻られてはいかがでしょうか?』

「....どうも、そうするしかないようだな」


セントラルコアが起動すると、15時間の出力不安定状態に入る。

この15時間の間に、ゲーム中では熾烈な争いが繰り広げられるのだ。


「.....そうだ、今係留している惑星に探査ユニットを打ち込んでくれ」

『分かりました、地上探査だけでよろしいですか?』

「ああ、こっちに直接リンクしてくれ。地上の様子を観察したい」

『了解しました』


Noa-Tun下部の惑星開発モジュールが起動し、惑星探査・基地建設に特化したドローンを載せたドロップシップを投下した。


「.....これで少しは、娯楽になるか?」


俺は真っ赤に燃え上がるドロップシップを見て呟いた。

空気があるということの証拠だ。


『警告。地上に複数の生命反応を検知』

「数は?」


その時、オーロラの警告が耳に届く。

最悪ドロップシップからこちらの位置を割られるかもしれない。

文明的な社会があるのなら、軌道上に係留されているこのホールドスターを見逃すわけにはいかないだろうからな。

最悪ドロップシップを自爆させる覚悟で、俺は地上の様子を見る。


『数、推定4万2000。その内人間に類すると思われるパターンは2万3000。中央部に存在する何かを囲むように、野営を行っているようです』

「何か?」

『警告:生命反応に未知の波長あり。既知生命ではない可能性があります』

「......へぇ...興味があるな、このまま降ろせ。場合によっては軌道爆撃する。リペアドローンを弾薬庫の修繕に回せ」

『はい』


こんなに早く必要になるとは思わなかったが........背に腹は代えられない。


「面白くなってきたな....」


俺は密かに、新たな娯楽の登場に胸をときめかせていた。












「ねえ....お姉ちゃん、流れ星」

「.....ネム。今はそんな事、言ってる場合じゃ....」

「お父様たちの無事をお祈りしましょ?」

「.....ええ」

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