異界の守護者たち

@kazu2134

第1話 風の旅人

緑豊かな森の中を、若者リオンは独り歩いていた。突如、彼は不意に足を止め、耳を澄ませた。枝葉が擦れ合う音の中に、何か他の声が混じっているような気がしたからだ。



「おかしいな…」リオンは呟くと、ふと目の前で舞う葉っぱに気付いた。それは自然の動きとは異なり、まるで意志を持って動いているかのように見えた。

突然、風が強まり、リオンは目を細めた。「誰かいるのか?」彼は大きな声で尋ねた。



風が応えるように、再び強く吹き、彼の周りの木々が大きく揺れた。そして、ほんの一瞬、風の中に細い、透明なシルエットが現れた。




「私は風の精霊、ゾエル。リオン、君を待っていたんだ。」声はやわらかく、そして

明確だった。



「精霊…? 私を? どうして?」リオンの声には驚きと混乱が交じっていた。



「君には特別な力がある。風を操る力だ。そして、その力が今、世界を救う鍵となる。」ゾエルの姿がはっきりと現れ、リオンの前で静かに舞っていた。



リオンは深呼吸をし、周りの自然を見渡した。風が木々を通り抜け、彼の髪を優しく撫でる。確かに、彼はいつも風と特別なつながりを感じていたが、それがこんな形で現れるとは思ってもみなかった。



「しかし、どうすればいい? 私一人で何ができるというのだろう?」彼の声は少し震えていた。



「恐れることはない。まずは、他の守護者を見つける旅に出なさい。各地に散らばる守護者たちと力を合わせれば、闇の力に立ち向かうことができる。」ゾエルの言葉には力強さが感じられた。



リオンは一瞬ためらったが、心の奥底で何かが彼を突き動かすのを感じた。彼は頷き、決意を新たにした。「分かった。旅に出よう。世界を救うために、何ができるか見せてやる。」



ゾエルは微笑んで、再び風となって森を駆け抜けていった。リオンはその場に立ち尽くし、新たな使命を胸に、初めての一歩を踏み出した。



その日から、リオンの長く、孤独な旅が始まった。しかし、彼は決して一人ではなかった。風がいつも彼を守り、導いてくれるのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る