異世界の君、復興物語 ~狩猟技術と農家の知恵でお国復興しちゃいます~

瀬夏

第1話 Iターンしたはずが異世界の君となる(1)

「ようこそ異世界の君、この枯れた土地に恵をもたらしていただきたい」

 ポニーテールにくくった長い黒髪、赤いジャージに身を包んだ酪農家な農業女子かつ狩猟女子、異世界に立つ。


 

 兄が家を継ぎそうにないこと、家業が好きなことから大学を卒業後、実家に戻った。

 大学は農学部。うちは酪農家で、乳牛がメインでありおおよそ100頭ぐらい飼育している。


 これからは家が私の研究所であり工房だ。


 Iターンを喜んだ両親が大学で学んだことを活かせるように、新事業の展開を見据えてチーズ工房も併設することを目的として別棟を建て、一昨日完成。

 

 その数日後、両親がお寺さんの檀家旅行に行くというのでに空港まで送り、夕方の仕事までの間、愛犬を膝に乗せながら漫画を読みながらダラダラしていたら、窓が外が見えない程光った。


 雷が近くに落ちたのかもしれない。

 両親不在の間に落雷火災とかシャレにならないので、割と平気そうにしている愛犬改めカニンヘンダックスフンドの『うい』を抱きかかえ、家の様子と動物たちの様子を見に外へ出たでたところ


 うちの牧場の敷地以外が丸ごと荒れた雑草地になっていた。


「何これ、夢?」


 気温はそんなに変わらない、空の色はなんかちょっと違う。

 うちの土地だけはなんかそのままなのだがそれ以外が遠目に見たことのない風景になっているし、お隣の家も見当たらないし、遠くに何か建築様式の違う建物が見える気がする。


 状況確認をしながらも、牛たちがまず心配なので見回り、とりあえず無事を確認。

 ちょっと安心はしたけれど、うち以外世界滅亡なんてことはないだろうし、夢かもしれないからこれは寝て起きたら気のせいかもしれない。

 

 そう思った時に聞こえて来たのがさっきの天からの声である。そして、こう続いた。


「異世界の君、貴方の土地にはあなたの許可をいただかないと強固な結界が張られているため立ち入ることができない。後ほど、あなたの土地の門まできていただければ案内を向かわせますので、出てきていただきたい」


 若い男の声が拡声器を通したような音でノイズ交じりに聞こえる。

 

 動物たちの点検は終わってるのでいつ行ってもいいんだけど、どうしたものか。


 正直夢にしてはなんかおかしい。しかも私や動物たちの周りに何かチカチカしたものが周りに見える。

 とりあえずういにハーネスとリードをつけ、外に向かってみるかという気持ちと、不用心かなという気持ちと、結界で入って来れないって言ってたから問題があったら門から外に出なければいいじゃないかという無謀な安心感でとりあえず外に向かってみることにした。

 そして向かった先で見たモノは、言葉を話す碧く、大きな尾の長い鳥だった。


 「ようこそ、異世界の君。ナット王国へ」

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