臨海工場地帯 ~ 幻の街

殺伐としたところに住みたい

男が言った


雑草が生い茂る道端の溝に

藻色の水が淀んでいる

臨海工場群が見える辺り


コンビナートの迷路を行けば

テトラポッドの海へと導かれる

そんな場所


日が落ちて夜の暗幕が下りると

昼間の夾雑物は闇に紛れ

無数の人工灯に照らされて

新たな現実が立ち現れる


闇と光の狭間を

手をつないで歩けば

指先から感じる温かさが

いつにも増して愛おしくなる

そんな場所


ヴァンパイアが好きそうな幻の街

そうつぶやくと

女は男の首にかみつくふりをした


彼らの背後のくさむら

夕方うろついていた野良犬が

目を光らせた


https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16817330660995394936

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