第3章 みんなの寄せ鍋

第14話 炊き出し

Side:フロー


 生水と点火の呪符を売ったお金で、浮浪児達の食事は改善されていた。

 売り上げも伸びている。


#include <magic.h>

extern char *user_real_name(void);

extern void cleanup(char *real_name);

void main(void)

{

 char *rname;

 rname=user_real_name(); /*使用者の真名を取得*/

 cleanup(rname); /*浄化*/

}


 浄化の呪文だ。

 これで呪符を作る。

 いまの浮浪児は懐に余裕がある。

 俺から浄化の呪符を毎日買って使うこともできる。


#include <magic.h>

extern void insec_ killer(int range_meter);

void main(void)

{

 insec_ killer(20); /*殺虫20メートル*/

}


 虫に悩まされたからな。

 病気の予防にもなる。

 回復の呪符は作るけど売らない。

 戦争に使われるからね。


 浮浪児のテリトリーは路地と点在する空き地。

 だが、浮浪児と切っても切れない場所がスラムだ。

 犯罪者の巣窟と言っても良い。

 恐れて踏み込まない浮浪児もいるぐらいだ。

 だが、物が安いから、買い物に行く浮浪児は後を絶たない。

 おそらくスラムの店の品は全て盗品だろう。


 別にスラムを改革しようとか思ってない。

 ただ、見ておいて良いかなとも思った。


 浮浪児を助けるという点では、スラムを安全する必要がある。

 物を安くという利点は潰さないで、盗品は取り締まりたい。

 正規にやっても安く物が供給できるはずだ。

 プログラム魔法ならね。


 ただ、やり過ぎると職人が食えなくなる。

 そういう事態は望んでない。

 だから、職人に俺が呪符や、魔道具を供給して、安く作らせる。

 そして、職人の手作りで作るのは高級品。

 こういう住み分けをしたいなと思っている。


 まあ、全てはこれからだ。

 アノードと共にスラムに足を踏み入れる。

 見られてるな。

 スラム以外の住人が何の用だという声が聞こえてきそうだ。

 人が集まっている場所がある。

 商店の大売り出しというわけではないだろうから、何だろう。

 すぐに分かった。

 炊き出しだ。


「押さないで、慌てなくても人数分ありますよ」


 やっている人は大変だな。

 スラムの人間は命が掛かっているからな。

 そりゃ真剣になる。


 驚いたことに指揮を執っているのは、6歳ぐらいの女の子。

 服からみるに貴族だな。

 この子が主導してやっているとしたら、凄すぎる。

 ただ、マイラの例があるからな。

 この子も特殊能力者かもな。


「おい、そいつは2杯目だぞ。俺はまだ食ってないのに」


 スラムの住人が色んな不平不満を言い始めた。

 施されているのに文句を言うのかよ。


「私が施しをしない理由だよ」


 アノードが悲しそうだ。

 まあ、俺も思う所はある。


 そして、ついに暴動が起こった。

 まず料理が入った鍋が強奪された。

 それからはもう滅茶苦茶だ。


 さて、施しが偽善で、貴族の子供のお遊びだからこうなるんだとか、そういう思いも確かにある。

 しかしだ。

 俺には炊き出しをする財力はない。

 いま自由にできるお金は金貨1枚(10万円相当)と銅貨がたくさんだ。

 今もアノードが銅貨が詰まった袋を持っている。


#include <magic.h>

#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

extern void plated_copper_coins(char *file_name);

void main(void)

{

 char fname[200];

 char buf[10];

 int i;

 for(i=1;i<1000+1;i++){

  strcpy(fname,"持っている袋の銅貨"); /*文字列に何なのかを入れる*/

  itoa(i,buf,10); /*カウントを文字列に*/

  strcat(fname,buf); /*カウントを連結*/

  strcat(fname,".html"); /*拡張子を連結*/

  plated_copper_coins(fname); /*銅貨を金メッキ*/

 }

}


 この世界、前にやった『dir』を使うと、物は『html』ファイルになるんだよな。

 『html』ファイルはインターネットで表示されるあれだ。

 ホームページと言えば分かるか。

 中身も当然見た。

 大体、ステータスみたいなのだが、『cgi』を呼び出してたりする。

 『cgi』は外部にあるプログラムだ。

 とにかく『cgi』の中身までは解析できない。


 話が逸れた。

 とにかく銅貨1000枚を金メッキした。

 俺のなけなしの金貨はかなり欠けた。


 メッキの材料として使われたのだ。

 この世界、持ち物にはその人の魔力が宿る。

 そうすると魔法で他人が操作するのはできなくなる。

 手に取るとその人の魔力に染まる。


 あと治療の場合は、許可が要る。

 ただし、意識がもうろうとしてたりすると、魔法が通る。

 他にも例外はある。

 肌が触れてたりすると、魔法が通る場合がある。


 話が逸れた。

 金メッキした銅貨ができて、アノードに向かって頷くとアノードも頷いた。


 金メッキの銅貨がばら撒かれた。


「金貨が落ちているぞ」

「俺のだ」

「拾え拾え」

「押すな」


 暴動は加速したように見えるが、炊き出しをやっていた人達への被害はなくなった。

 安い野菜の食材より金貨だからね。

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