THE STEEL FICTION 〜灰に帰した世界・機械少女と女兵士〜

タイガー・ナッツ・ケーキ

登場人物・用語・世界観 NO.1


【世界観】


 原子力が一般化した未来。


 世界は鋼鉄の巨人を礎に暮らしていた。


 原子力駆動多脚歩行式車輛。『NAW』


 同時期に開発された小型核分裂炉キャニスターにより、半永久的な動力源を獲得したNAWは人類の活動のあらゆる局面に置いて不可欠となった。


 勿論、それは軍事においても例外では無い。


 元来、NAWは軍事目的で開発されたものだ。


 当然、その開発競争は国家間のパワーバランスを更に流動的で不安定なものへと変える。


 第二次世界大戦時、各国が戦車や戦闘機をこぞって開発しようと躍起になった様に。


 最早、破局を迎えるのは必然だった。


 企業を代理とした無数の低烈度紛争が勃発する。


 その戦いの原因は千差万別。


 鉱物資源、民族問題、人道的介入、株価指数、選挙、イデオロギー、テロへの報復。


 その戦いは時や場所など無差別。


 資源が眠る用地、先進国の首都、インターネット、経済、あらゆる場所が戦場と化した。


 それは国際法が擁護しえない全く新たな戦争だった。 

 

 そして、『崩壊』が訪れる。


 世界の至る所が、虫食いの様に欠け落ちた。


 放射能、生物兵器、化学物質、末期的思想と猜疑心。その全てが至る所に空白地帯を作り上げたのだ。


 国家は最早、体裁を為さない。それに代わるのは、遥かにちっぽけな利益集団。


 その存在は、すがるには余りにか細く役立たずだった。


 それでも、人の本質は変わらない。


 争い、奪い奪われて、それを口実に再び争うのだ。


 それは崩壊後も何ら変わらず続いている。


 これは崩壊後の御話だ。全てが終わった後の物語である。


 始まりがあれば、終わりがあり、その逆もまた然り。


 一人の機械少女と一人の女兵士は何を求め、何を為すのであろうか…



                 ☢️



【登場人物】


① [ピース・ランバート] 性別:女 年齢:17歳 登場機体:HA−88

 汚染地帯に暮らす薬物中毒のスカベンジャー少女。

 汚染によって腐り落ちた部位を全て義肢で代替した為、脳味噌を除く全てが機械仕掛け。幻肢痛を抑える為に有機溶剤『リバシン』を詰めた電子タバコを愛煙している。

 情緒が不安定であり、少しばかり厭世的。つまり、思春期真っ只中。


② [スペンサー・クローヴィス] 性別:女 年齢:29歳 登場機体:M90

 企業複合体『第六複合体』の情報将校。

 謎のカリスマ性があるが、NAWの操縦技術はかなり御粗末。前線基地を飛び出し、独断専行の下に第五空白地帯へ偵察に向かうが、敵対組織によって僚機もろとも撃破されてしまう。その後、幸運にもピースによって救出され、自身の身柄を前線基地へ送り届けるよう彼女に依頼する。

 性格は実直そのものだが、インテリジェンス・オフィサーらしく口が達者である。嘘も方便であると本気で信じている。現実主義と理想主義の狭間を常に揺れ動いている。



                 ☢️


【用語解説】


① [NAW](Nuclear Auto Warrior)

 原子力駆動多脚歩行式車輛。

 人類を助け、破滅させた鋼鉄の巨人。小型核分裂炉を搭載しており、半永久的に稼働する。体高は15m前後が標準規格。

 破壊された場合、周囲に放射性物質と充填材として利用されるリバシン等による化学汚染をもたらす。


② [崩壊コラプション

 企業を代理とした度重なる紛争の末に人類が行き着いた境地。

 長年に渡る紛争によって世界の至る所が、虫食いの様に欠け落ちた。放射能、生物兵器、化学物質、末期的思想と猜疑心。その全てが至る所に空白地帯ボイドを作り上げたのである。その結果、国家は霧散し、より小さな利益集団が無数に誕生した。


③ [リバシン]

 世界を変えた新技術の一つ。有機溶剤にして充填剤。

 NAWの動力部である小型核分裂炉に充填され、反応の制御を可能とした偉大な物質。しかし、その裏の顔は余りにも非情だ。吸引した者に強い陶酔感と中毒症状を与える。シンナーなど比ではない。


④ [第五空白地帯ボイド・ファイヴ

 面積二十万平方キロメートルに及ぶ広大な汚染地帯。

 元はメガロポリスとして栄えた都市だったが、当然、標的となり考えうる限りの種類の攻撃を受け、死の土地と化した。残留する汚染物質と放射能は生物の侵入を拒み、その探索には常にNAWの鋼鉄の肉体が不可欠となる。


⑤ [第六複合体シックス・コンプレックス

 崩壊後、6つの企業が合併して生まれた企業複合体。

 勿論、有限会社。株式など吹き飛んで久しい。軍によって隠匿されていた山奥の研究都市に居を構える。倫理観には多少、疎いが比較的に真っ当な組織。多分…


⑥ [コーザ=アストラ]

 PMCを前身とする武装組織。

 第五空白地帯とその周辺における最大勢力。数多くの軍用NAWを保有し、行動規範も好戦的。軍隊を気取るが、その内実はハイテクな追い剥ぎ。


⑦ [レザボア・ジャッカス]

 第五空白地帯を闊歩する追い剥ぎ集団。

 世紀末に適応したとも、人間としての尊厳を失ったともいえる行動規範を持つ。根城は地下鉄。



                   ☢️



【登場機体】


① [HA−88]

 主人公の搭乗機体。

 日系企業である小野田重工業製の第四世代NAW。工業・建設業を主目的として開発され、実際にその方面で多大な成功を収めたベストセラー機。恵まれた積載量から来る汎用性の高さは業界随一。型落ち品として第三世界へ流出したあとも、無反動砲だのを無理やり溶接されるといった現地改修を受けるなど不名誉な歴史を持つ。


 元ネタ:トヨタ自動車製ランドクルーザー、イスラエル製ブルドーザーD9R、第三世代MBTのメルカバ


② [Tー96]

 PMC集団コーザ=アストラが主力機として運用する機体。

 亡共産国の第五世代軍用NAW。体高16m。流線的な楕円形のボディ。胴体に張り付く様に配された三つの複眼型カメラ。スプリングが剥き出しの細身の二脚。拡張パーツとして炭素鋼ブレードが公式から発売中。軽量化を極めており、同世代では速度は最高級。ただし、装甲は御粗末。生産性に優れており、ライセンス無しでのコピー品を含めれば最も多く生産された軍用NAW。


 元ネタ:湾岸戦争のヤラレメカことTー72。と、後継機のTー90。


③ [M90]

 企業複合体である第六複合体が好んで運用する機体。

 生産国は亡合衆国。崩壊の十年ほど前に勃発した第二次ベトナム戦争にて投入されたNAW。開発、配備自体はそれ以前から始まっており、投入時には若干、型落ち感が否めなかった。中程度の足回り、中程度の装甲、標準的な武装。その代わりに多くの派生機が存在し、増加装甲をつけたもの、空挺仕様に軽量化されたものなど、様々である。

 

 元ネタ:M4シャーマン、M60パットン

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