第45話 コイツもイカれてやがる……

威貴も来たことだし、神戸の掃討をちゃっちゃと終わらせるか。


まあ大まかには俺が暴れて消し飛ばしたんで、後は残敵のお掃除だけだが。


とにかく、奇襲が一番怖いので、港前の倉庫を中心に、開けた場所を占拠。


四方を車でガッチリ囲んで砦にし、その中に女子供を押し込め、男達には銃を持たせて巡回をさせる。


また、男女関係なく、防衛隊を志願する戦いに自信ニキネキ達には、威貴によるブートキャンプで自衛隊の戦闘方法を叩き込む。


一日二日でそううまく行くもんじゃないが、全員に銃の撃ち方と取り扱いくらいは叩き込んであるので、主にやるのは簡単な格闘術と機関銃の扱い方とかだな。それと小隊単位での動き方とか、そんなもん。予備役の訓練みたいな感じかなあ。


あと、ちょっと問題になったのは性奴隷の扱いだな。


どうやら、あっちのコミュニティには、性奴隷制度があるらしい。


俺としてはまああんまり気にしてないんだが、うちのコミュニティ側から「それはよくない」的な意見が出てきた。


まあ確かに、あけっぴろげに「奴隷です!」は色々とよろしくないので、性奴隷の立場の女の子達……十人いたんだけど、この子達は一度風呂に入れてちょっと聞き取り調査することに。


「こんにちは」


「あ、あのっ!助けて!助けてください!」


「待て待て、話は聞いてやるから、ちゃんと話せ」


「わ、私は……」


何でも、ここにいる性奴隷ガールズは、ミラから「ガチで使えない奴」認定をされて、「やることないなら性奴隷でもやってろ」と申しつけられたらしい。


ただ、調べたところ、確かにマジで何にもできん。


金持ちのお嬢様だったらしく、炊事も洗濯も何もできんし、戦うこともできない甘ったれた女とか、なんかそう言う感じの無能ばかりだった。


確かにこれじゃ、性奴隷以外に与えられる役目はないだろうな。


「悪いが、お前らを助ける価値はないっぽいなあ」


「こ、これから!これから頑張りますから!掃除も洗濯も覚えますっ、だからっ!」


「んー、娼婦じゃダメか?立場はちゃんと保証する」


「し、娼婦……?私が?!」


「ああ。一日に十人相手すりゃOKとしよう。その際は一人ずつ、部屋の中でベッドの上でな。仕事を終えたら風呂にも毎日入って良い。他の人は女でも三日に一度だが、毎日だ」


「毎日、お風呂……」


「食事も三食食べて良いし、菓子類も毎日与えよう。衣類も充分に与える。もし子供が産まれたら、コミュニティで引き取って、保育園を作ってちゃんと育てて、差別は絶対にしない」


「食べ物……、お菓子……。子供も、大事に……?」


「もちろん、恋人を作って、その恋人に身元引受人になってもらっても大丈夫だ。そうでなくても、何かしらの立場は最終的には与えよう。これからは奴隷ではなく、娼婦としてコミュニティに貢献する『仲間』になるんだ」


「仲間……、仲間として、扱ってもらえますか?もう、もう……、道具には、されないですか?!」


「もちろんだ、俺が保証する」


「……分かり、ました。娼婦になります。約束を、どうか守ってくださいね」


ま、やっぱり、そうだよな。


ここにいるってことは、ある程度現実は見えているってことだ。


ミラのコミュニティでは、言うことを聞かない奴は容赦なく射殺していたらしいから、ここにいる娼婦達も聞き分けはいいということだろう。




はい、そして人員配置のお時間だ。


俺のこのコミュニティは、基本的には十代二十代の若い男女が基本。


それ以上の年齢の人は、何かしらの技能を持っている。


サブリーダーは、外科医のおじさん(伊佐田)、車両整備士のおじさん(久留間)、弁当屋のお姉さん(飯坂)、会計士のおばさん(秤)の四人を採用していた。


それぞれが己の職能を活かして働いていてくれていたのだが……、今回は、人員を振り分け直すこととした。


まず、医療部門には、外科医のおじさんを中心に、看護師のおばさん一人と、ミラコミュニティ側の校医を名乗るおばさん。薬剤師のお姉さん二人と、あと看護学校の生徒も十人。看護師見習いとしてつけた。


工業部門には、うちの嫁である透を一応の責任者として、相談役に車両整備士のおっさん五人と、工場勤務のおっさん三人と、電気工事士のおっさん四人をつける。ミラコミュニティ側からは、ロボット研究部やパソコン研究部を名乗る陰キャオタク君達を派遣。


料理部門は、弁当屋のお姉さんを中心に、調理師学校の学生だったと言う大学生を五人と、子持ち主婦のおばさん七人。ミラコミュニティ側の家事に自信がある高校生十人を配置。


資材管理や会計は、リーダーは会計士のおばさんということにして、ミラコミュニティ側のサブリーダーをやっていたという生徒会会計の子、それと元生徒会メンバーを名乗る三人、数学が得意な大沢という大学生など、合計二十人を配置。


魔導師部門では、冬芽の尻をひっ叩いて人員を探したところ、こっちのコミュニティとミラコミュニティに魔導師、あるいはその身内と名乗る奴が合計で八人いた。なので、そいつらを魔導師として鍛えて、魔法の研究をさせることに。


警備部門だが、無子は頭がおかしく、エレクトラはまだ微妙に日本語を覚えられていないので、ミラを責任者に任命。ミラコミュニティの兵隊を吸収しつつ、百人程度の防衛部隊を結成した。威貴による軍事訓練中。


で、威貴は、俺の副官としてあえてどこかに立場を固定しないと言う形にした。俺がいない時の意思決定は威貴に一任するってことで。まあこの中のメンツじゃ一番信用できるからな。


こんな感じで人員に指示を出し……、それだけで一日は終わった……。




「……にしても、先輩。あの女達、良いんすか?」


俺の愛人達を横目で見つつ、小声で訊ねてくる威貴。


「何がー?」


「アレ、ヤバいっすよ。ガチの依存です」


ああ……。


四人の愛人達な。


冬芽、透、エレクトラ、無子。


この四人は、頭がおかしくなっている。


言わば、俺依存症になっている訳だな。


「そうだなあ、大変だなあ」


「……分かってます?異常者っすよ、あいつら。あのレベルの依存度は、いつか周囲に問題を齎しますよ?」


確かにな。


依存ってのは怖い。


学校でやる麻薬乱用ダメだよーみたいなショッパい講習会じゃ怖さが伝わらないだろうが、依存症ってのは本当に怖いんだ。


アルコールでも麻薬でもなんでも。


自分の意思じゃ辞められない、依存対象がないと発狂する、周囲に無限に迷惑をかける……。


まともに見えているのは、俺が支えているから。実際、終わってるんだよ、あの四人は。


冬芽の世界はどこまでも閉じているし、透はふわふわと浮かんでいて夢の中で生きている。


エレクトラは俺のオモチャであることこそ生き甲斐だと考えているし、無子は自分のことを侍だと思い込んでいる異常者だ。


全員、精神状態的には、精神病棟に閉じ込められてもおかしくない。


幸運なことに、いや、不幸なことに、か?精神病院なんてものはもうこの世にないが。


とにかく、この四人の精神の不安定さは特に拙く、要注意だと威貴は警告してきたのだ。


「ガキでも産ませりゃ落ち着くんじゃねーの。女ってのはそうだろ?」


「そうですかねえ……?」


「そうじゃなくとも、技能があるからな。捨てない限りは忠実な下僕で、都合のいい女でいてくれるんだ。こういう世界じゃ、裏切らないってだけで大切な存在だよ」


「うーん……。やっぱ、アレっすね」


「あぁ?何が?」


「やっぱり、先輩は自分が支えなきゃなーって」


「あっそう」

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