第30話 今この瞬間は、力こそがすべてだ!
俺は、漁業組合のおっさんらと、釣った魚を干物にしたり、三枚に下ろしてから冷凍したりして、海での保存食作りをしている。
保存食は今のこの世界では交渉材料になるからだ。
そして、俺の分も欲しい。未だに魚はシーチキン缶しか出せてないからな。サバ缶出ねえかなあ……。
冬芽は魔法の研究をして、透は銃の練習。
エレクトラは、トレーラーハウスの周りを警戒する為、外に出て見回りをしていた。
無論、見回りと言っても、そう遠くまではいかない。
トレーラー周辺の十数メートルを駐回して、見張りをしているだけだ。
『あっつぅい……!あっついのよ!日本!』
エレクトラが何事か文句を言って、保冷剤を包んだタオルに頬擦りする。
日本の夏は確かに、湿度が高くてキツいな。
だが、人がいなくなった分涼しげだと俺は思うんだがね。ホラー要素もあるし更に涼しげでいいんじゃない?
『そろそろ休憩するぞー』
『はーい』
はい。
で、俺は女達に、自作したアイスキャンディーを振る舞うことにした。
いつぞやに出したマンゴーを搾ってジュースにしたものを、スーパーから拾ったヨーグルト酵母の粉末と牛乳から自作したヨーグルトに混ぜて、砂糖を加えて冷凍したものだ。
『そっ、それ!アイスキャンディー?!どうやって手に入れたの?!』
『作った』
『作った〜?!』
問題でも?
『す、凄いわ!アンタ、実は神様なんじゃない?!少なくとも、今この瞬間はキリストより信仰できるわっ!』
そう言って、アイスキャンディーが刺さった割り箸を受け取るエレクトラ。
「ふわあぁあ……!甘い……!」
「アイスだっ!やっぱり、夏はこれだよね!」
冬芽と透も、とても喜んでくれている。
うむうむ、良い空気吸えてんなあ。
アイスを食べ終わると、しばらく休憩をすることになった。
今度は俺が外に出て、警戒をする。
あ、怪力ゾンビの群れだ。
この辺は漁師が多いからだろうなあ。
漁師みたいな肉体労働者はマッチョゾンビに転化して、その後に怪力ゾンビに進化するって訳だ。
どすどす、大きな足音に反応して、女共も車から出てくる。
「……何、あれ?」
「クソっ!手伝うよ、旦那!」
『ご主人様!そいつ、めちゃくちゃタフなのよ?!私が援護するから……』
「あーあー、要らん要らん。戦いは俺に任せておけ、女は守られてりゃそれでいい」
そう言って俺は、メイスを片手に肩を回しつつ、怪力ゾンビの群れの前に立った……。
『お、おお、ガァ!!!』
怪力パンチ!
並の人間なら、直撃を貰えばアバラが全部イカれて肺が潰されるような威力!
それを俺は、片手で受ける。
「おおあ!」
気合いの声と共に俺はその掴んだ腕を引っ張り、筋肉で膨れた200kgはありそうな怪力ゾンビの肉体を持ち上げる。
そしてそのまま、一本背負い!
投げた地点にいる怪力ゾンビを、投げた怪力ゾンビの質量で叩き潰しながら、俺は更に叫ぶ!
「はああ!」
メイス一閃、横薙ぎの一撃で、怪力ゾンビの頭が爆ぜる。
『ごあっあ!』
「むっ!」
背後から怪力ゾンビが抱きついてきて鯖折りしてきた。
それだけじゃない、前にいる怪力ゾンビが、動けない俺に殴りかかる!
「あ、危ないっ!」
女達が悲鳴を上げるが……。
「おらあ!」
俺の強烈な蹴りで、前にいた怪力ゾンビは首が空に打ち上げられ即死。
返す刀で、背後で俺に抱きついている怪力ゾンビの腕を引っ張ってもぎ取り無力化……。
「おらおらおらおら!」
そして、囲まれているのを良いことに、無茶苦茶にメイスを振り回して周囲のゾンビを粉砕する……。
……三分後、最後に立っていたのは、否、最後まで原型を留めていたのは俺だけだった。
「シャワーを浴びてくる」
俺は、作業着を脱ぎ捨ててエレクトラに渡して洗濯させようとしたところで……。
「お兄さんっ♡」「旦那♡」『ご主人様♡』
三人に抱きつかれた。
「好きっ、好きです!愛しています!あんなに強いだなんて!」
要約すると、生で見た俺の強さに惚れ込んだらしい。
「強い男性に守っていただいて、幸せです……♡」
とのことだ。
とある漫画に、金さえあれば、女は汚いおっさんのチンポもしゃぶる、みたいな言論があった。
これは正しい。
女は力が強い男に対して、本能的に傅こうとするからだ。
優しくて誠実な人よりも、いかにも「女なんてオメコするだけの道具やんけ!」としか思ってなさそうなヤンキーや成金の方がモテるだろ?
もっと言えば、見るからに陰キャののっぺり撫で肩黒縁メガネ前髪長過ぎ野郎でも、金持ってたらモテる。
つまりそういうことだな。
ただ、今のこの世界では、その力の多寡を札束の重さではなく物理的な戦闘能力と持っている物資の量で測るという元の世界との違いがあるが。
そして、この世界で恐らくは一番強いであろう俺は、一番女にモテるって寸法よ。分かりやすくて良いな!
「好きっ!好きです!愛してる、愛しています!私のこと、ずっと守ってくださいっ!」
表面上は元気そうに見えるが、この子達は今まで生きていく中で、人間らしい尊厳、夢も希望も踏み躙られてきた。
それが、まともでいられる訳がない。
貞操だのプライドだの、そんなものより、俺から与えられる安全が何よりも大切なのだ。
俺に惚れているかどうかは分からんが、これだけは絶対に確かだな。
「よしよし、ずっと守ってやろう。俺が飼ってやる。良い子にしろよ?」
そして、それに問題があるか?と言えば、無い。皆無だ。
え?!こんな時にまで「恋愛」とかいう余裕があるとでも?!
まさか、「安全と引き換えに良いように操るなんて!」とか、「心から好きになってもらえないのは虚しい!」とか、いかにも童貞が言いそうなイカ臭い理想論を……?
残念ですが、結婚だの恋愛だのはある種の「契約」だし、ある程度の経済力や各種スキルがなければその「恋愛」とやらをする土俵にも立てないんですよ……?
これは「契約」なんだよ。
俺はこの子達を自由に弄ぶが、生活に不自由しないように守り抜く。
この子達は、俺のことを愛して、俺に命じられるがまま役目を果たす。
そういう「契約」なんだ。
なあに、中世貴族と一緒よ。愛なんて共に生活するうちに芽生えれば良いなあ……みたいなもん。
と言うより、愛なんてふわふわしたもんは言ったもん勝ちだし……。
「アタシも愛してるよ、旦那!アタシ、何でもするからさ、守ってね?もう、怯えて寝るのは嫌だ……!」
『愛してるわ、ご主人様!だから、だから、私の前から消えないで。ずっと側にいて、お願い!何でも、何でもするから……!』
……ほら、愛されてるだろ?
何も問題はないな!ヨシ!
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