呪いの装備 脱げない着ぐるみ
MenRyanpeta
第1話 魔法使いミラ
「ライトニング!」
「げぎゃぁぁ!!」
コロン!
光の矢に貫かれ、魔物は魔石へと変わり洞窟の床に転がった。
魔法使いのミラはそれを気だるそうに拾い、マジックバックの中に入れた。
(はぁ…これで何匹目?弱いけど数が多いから意外と大変ね)
ミラはギルドでダンジョン内の魔物の一掃のクエストを紹介された。
本当は他にもメンバーを募りたかったが、彼女は凛々しい見た目とは裏腹に内気で人見知りなため誰にも声をかけられなかった。
彼女は攻撃系の魔法使い職なのだが物理ステータスも割と高く、回復魔法も使えてしまい腕も立つ。
仲のいいメンバーもほとんどおらず、ギルドで声をかけられても口下手で冷たくあしらったように見られてしまう。
実際に周りからも「彼女の実力なら一人で大丈夫だろう」、「クールで性格がきつそう…」と勝手に思われている。
結局今回も一人でクエストに挑んでいた。
(ちゃんと他の人と話せるようにならなきゃ。でも何を話せばいいの?物理職でも使える攻撃魔法の術式の組み方とかかな?)
的外れな会話デッキを想像しながら彼女はダンジョンの奥へと足を進めていく。
そうこうしているうちにダンジョンの最奥へと到達した。
扉を開ける…そこにはサボテンのような魔物が巣を作っていた。
部屋中に人一人分くらいあるツボミが沢山ある。
(これは…ここから魔物が産まれるのかな?じゃあ本体を叩かないとね!)
「フレイム!」
ミラは最奥にいるサボテンの魔物に炎を浴びせる。
しかしまるで効いていない。
逆にサボテンの魔物に気づかれ、緑色の包帯のような触手に体をぐるぐる巻きにされ、まるでミイラのようにされてしまった。
「むぐぅ!うぅぅ…」
杖も荷物も落とされてしまい、口を塞がれ魔法も唱えられない。大ピンチ!
かのように思われたのだが…ミラは触手で全身ギチギチに締め上げられながらも案外冷静だった。
(くっ!きつい…油断してた。でも…これならどう!獄炎!)
ミラを巻き付けていた触手からプスプスと黒い煙があがる。
次の瞬間、触手は一気に消し炭となり、炎の中からミラが現れた。しかも全裸で。
(これ使うと服まで燃えちゃうのよね。あとで改善しないと…そんなことより、さっきのお返しさせてもらうよ!)
ミラは一気に魔物の本体まで距離を詰め、トゲに覆われた外皮など物ともせずにその拳を魔物にお見舞いさせた。
ミラの拳が魔物に突き刺ささる!
「ギビィィィ!」
「中からなら燃えるよね!ギガ…フレア!!」
「ギギャァァァァ!!」
体の内側からの業火をくらい、サボテンの魔物は瞬時に燃え尽き大きな魔石へと変化して床に転がった。
ミラは無理やり殴って傷ついた拳を回復させながらそれを拾う。
(結構レベルの高い魔物だったんだ。っと後片付けしなきゃ)
部屋の中のツボミを全て焼き払う。
これでおおむねクエストは完了、あとはギルドに報告するだけだ。
ミラはマジックバックから予備の装備を取り出し、手早く身に着ける。
そして辺りを見回した。
(打ち漏らしはないよね?さっきの魔物の卵とか…ん?)
部屋の隅になにか黒い箱のようなものがあり、ゆっくりと蓋を開けてみる…宝箱だ!
金貨や素材がぎっしりと詰まっている。
(やった!いっぱいある!焼けてなくてよかった!あぶないあぶない♪)
ミラは自分の強烈な炎魔法で焼いてしまわなかったことに安堵していた。
財宝を一つ一つマジックバックに入れていく。
換金用の金貨をはじめ、あまり見ない希少な素材ばかりだ。
ミラはこの素材からどんな装備や防具が作れるかを想像しニコニコになっていた。
(すごいすごい!これで物理寄りのを作る?それとも普通に魔力寄りに…迷っちゃう!…ん?なんだろこれ?)
金貨や素材のなかに未鑑定の装備がある。
緑色の…手のひらサイズの植木鉢付きのサボテンのようだ。
しかし本物のサボテンではなく、ぬいぐるみ?のようなものだった。
ミラはそれを持ち上げ首を傾げた。
(これは…ぬいぐるみ?本当に装備品なの?アクセサリーの類かな?)
色々疑問を抱きつつも一旦サボテンのぬいぐるみを床に置き、他の宝をマジックバックに入れた。
(よし、全部入れ終わった。あとは…これね)
ミラは床に置いたぬいぐるみを見て腕を組む。
本来、未鑑定の装備品は街の道具屋などで鑑定してもらうのが一般的だ。
なぜならダンジョンに落ちている装備品は呪いなどが付与されていることが多く、周りに人がいた方が格段に安全だからだ。
しかしミラは鑑定の魔法も使える。
この時のミラはお宝を手に入れた高揚感と目の前の謎の装備品への好奇心から警戒心が薄れてしまっていた。
(ここで鑑定しちゃっても…大丈夫だよね?うん!鑑定しよう!どんな装備か知りたいもんね♪)
この軽率な行動が災いし、この後あんな辱めを受けることになるなんて、この時のミラは微塵も想像していなかった。
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