第21話

「何を見ようか。」


 映画館について上映スケジュールを眺める。これと言って惹かれる映画もない。まぁ本というとちょっとエロそうなシーンの映画がある。ちょっと気になる。


「おっ、これ妹が気になってたんだよね。」


 そういってそいつが指さした先には某有名アニメ会社の新作映画がある。この後にあの映画を見たいとは言えない。上映時間も丁度いいこともあって、男子高校生二人でアニメ映画を見ることになった。

 映画はウサギの家族が悪のイタチを倒すため奮闘する話だった。まぁこんなのは所詮、ファンタジーだから。実際超能力を身に着けている俺からしたらおかしなところもあるのだろうが、そこは、目をつぶってやろう。どれどれ、お手並み拝見といきますか。

 代々超能力を持つウサギ家族とその力を利用する為にイタチがちょっかいを出してくる。みんなが上手に超能力を使えるのだが、末っ子だけは上手く超能力を使えない。そんな中、家族がさらわれてしまい。家族を取り戻すために超能力を使おうとするがやはり上手くいかない。何度も挑戦する中で父の言葉を思い出す。


「いいか。イメージだ。具体的にイメージするんだ。ケーキが食べたかったらイチゴの粒まで想像するんだ。」


そして彼女は超能力を使いこなし、見事イタチを懲らしめ、家族を救い出す。

正直にいうと、面白かった。特にイメージの話は、とても参考になった。

映画が終わって開口一番


「いや~面白かったな。結構りあるだったし、特にイメージする話は参考になったよ」


思わず熱が入ってしまうが、そいつは特に気にも止めず


「あぁ、やっぱり3D作画だとちょっと動物っぽいよな。あそこシーンは結構熱かったよな。」


そういっておなじ熱量で向き合ってくれた。

帰りに館内の売店に寄る。丁度主人公のアクリルキーホルダーがあったので、手にとって見る。するとそいつが


「いいな、それ。」


と覗き込んで来た。


「そっちはなんか買うの?」


 と聞くと


「あぁ、これ?妹に買って行ってやろうかと思って。」


 というので


「あぁ、じゃぁ俺に買わせてくれよ。」

「いや、悪いよ」

「遠慮するなって、こっちだって映画代は出してもらってんだからさ。」

「そうか、悪いな。あいつも喜ぶよ。」


 その後、併設しているファミレスで、学校のことや映画のことを話す。


「こういう映画はよく観るの?」

「いや、妹が言ってたからいつか観に行こうと思ってさ」

「俺と観ちゃってよかったのかよ?」

「え?あぁ。あいつ外には出られないしな」


 しまった。そうだった。全く何やってんだおれは。どうして、軽々人の地雷を踏んづけてしまうんだろうか。


「てか、お前も無理しなくてよいいからな」

「何が?」


 俺は聞き返す。


「いや、外出したいとか言ってたけど、気にしなくて良いから」

「いや、、」

「それにそんなにもう少ししたら出られるよ」

「あ、そうなの?」

「うん、普通に先生の言う通りにしてたらね。まぁ、薬飲むの嫌がったりして大変なんだけど」

「はは、いやまだ子供だもんな」


 いや、俺らも子供なのだが、ついそんなことを言ってしまう。


「そうだ、迷惑じゃなかったら、これから病院行かないか?これを渡しに。」

「いいのか?」


 そういって急遽お見舞いに行くことが決まった。

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