第14話 石川元助 毒矢の文化 5/15

今回は石川元助著『毒矢の文化』です。

紀伊國屋新書978-4314006491。

NDC分類では社会科学>衣民族学. 文化人類学に分類しています。


1.読前印象

 毒矢というとロマン武器。それぞれの文化圏で何の素材を何を毒にしているのかが気になるところ。イメージ的には毒矢といえばポリネシアなんだけど、忍者とかも毒矢、というか吹矢を使う。よく考えたら自分の毒矢のイメージって吹矢か投擲武器だったけれど、よく考えたら弓矢の形態も一般的なはずだ(一般とは……。

 毒矢から結びつく僕の一番の印象は対人戦で、その次が狩猟あるいは害獣駆除がくる。対鳥獣、つまり食料用の場合は毒の性質によっては使えない。毒の原材料についても植物毒や動物毒、効き方についても神経毒や出血毒、それから筋肉毒と色々あって、用途によって異なるはずだ。

 僕は毒というか卑怯戦が大好きだ。毒を食らった主人公はよく「くっ卑怯な」って言うけれど、お前のチートの方がよっぽど卑怯だよっていつも思うのだ。常々英雄譚を阻害しようとする汚い試みこそ、弱者が絶対的な強者に対する知恵を用いた戦いっぽくて好き。実際出てくるのはだいたいただの残念なチンピラなんだけどさ。

 さぁ、張り切って開いてみよう~。


2.目次と前書きチェック

 はじめにの『人類は、自然界に存在する毒物を動物の体内に注入し、生きとし生けるものを殺戮してきた』っていう表現が割り切ってて好き。

 目次はアジアの毒矢、アフリカの毒矢、南北アメリカの毒矢と続く。確かに場所や気候によって存在しうる毒というのも違ってくる。毒によって用いる器具や警戒による都市形成や人的資源の投下なんかも違ってきそう。

 この中で『アジアの毒矢文化』と『東北アジアの毒矢文化の特性』、それからアフリカの毒矢で『巨象にいどむホッテントットの毒矢』を読んでみよう。東北アジアはそのまま興味のあるところだけど、象狩りってあの象皮に矢を刺すのは大変そうです。あまり考えたことがなかったけれど、やっぱり落とし罠式の罠が効く……んだよな。


3.中身

『アジアの毒矢文化』と『東北アジアの毒矢文化の特性』について。

 アジアの毒矢は北緯20度を教会として北はトリカブト、南はイボーに分かれる。これこれ、こういうのが知りたかったんだよ。そして植生や民族の移動による伝播、文化による使用方法の話に続き、寛永9年のアイヌと松前藩の戦記(結構具体的な)に突入する。なにこの滾る構成。

 話の中心はその戦いに使用されたアイヌの毒矢に戻って来るが、様々な論拠を述べながらの考察は説得力が高い。時代違うけどアルテイとか日本の反主流派勢との戦いを書いてみたいです。

 その後古シベリア、中国古代北方民族の毒矢と話がうつり、それぞれ興味深いもののこの章のメインはアイヌの毒矢感だった。

『巨象にいどむホッテントットの毒矢』について。

 毒矢は主に象に用いられ、小動物には用いられなかったらしい。ホッテントットは毒蛇とハエマンツスの球根の毒を練り合わせたものあるいはユーホルビアの乳牛とイモムシをすりつぶしたものを矢毒としているようだ。それを鳥管骨を鏃としてその中に毒を塗る。体の中に毒を置いてくる発想だよねこれ。

 アフリカのあたりにいるマンバ(毒蛇)は神経毒だった記憶があるけれど、象の巨体の動きを鈍らせるためにはどのくらいの容量と時間が必要だったのだろう。人間なら横隔膜を麻痺させて窒息死したりするけど、象に対する毒の効き目って気になる。イモムシ毒は未知の領域だ。詳細が知りたい。

 小説に使う時は普通のファンタジーなら毒特性なんかは考えないだろうけど、世界観を作るのに使えそうな気がする。ミステリーに使うには管理方法や適切な保管温度なんかのもう少し科学知識の追加が必要と思う。

 

4.結び

 毒! 好き! これはダラダラよんでても僕は面白い本ですが、毒が好きでなければ面白いかはよくわからない。

 次回は渡辺是広著講談社『日本の歴史 04 平城京と木簡の世紀』です。

 今は心理比重の重い話を書いていて、本とか他のを描くのが難しい現象が生じています。そっちの締切は5月27日なので、そのあたりまで遅滞するかも。

 ではまた明日! 多分!

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