第21話 やっぱりリハビリは最高だ!

「お腹もいっぱいになったし、そろそろ行くか」




「はーい、また来てくださいね!」




お姉さんに見送られて店を出る。


街を歩いていると、向こうに人だかりが出来ている。




「なんだ、トラブルか?」




「貴様、子供に手を挙げるなど恥を知れ!」




どうやら暴力沙汰の問題になっているようだ。


「何があったんですか?」




「なんか、おじいさんがエルフの子供を殴ってしまったらしいんだ」




うわ、結構酷い話だな


現代の日本でもこんな事件あったような




「いいか、このニュートラリアでは全てが平等なんだ」


「子供だろうが失礼なことを言うと痛い目を見るんだよ」




なんか、平等を履き違えている感じがすごい


日本のデイサービスで働いている時を思い出す


歳を取るとって考えが少し変わってしまうんだよな、、、




そして、対応も一般的な対応では


日に油を注ぐ結果になってしまうんだよな。




「なんだと!」


「貴様、平等を履き違えていないか?」




「うるせー、俺はこの街に住んで長いんだ」


「よそ者のあんたらよりはこの街の文化を理解している」




だめだ、高齢の相手に正論を言ってしまうと


相手のプライドを傷つけてしまって話が進まない




この世界は高齢者の対応について理解が乏しいのかも知れないな




「まあまあ、そんなに声を荒げてどうしたんですか?」




俺は無意識に両者の間に割って入ってしまった。


理学療法士として働いていた頃の癖で


高齢者の揉め事はなんとかしないといけないと身体が勝手に動いてしまった。


完全な職業病だよな、、、




「なんだお前は!」




「僕はこの子の保護者みたいなもんです」


「この子が何か失礼をはたらきましたか?」




「そうか、こいつが俺の右腕はなんで上がらないんだ?」


「って言いやがったんだ」




「右手は何か怪我をさせているのですか?」




「ああ、俺は鍛治職人を長く続けていてな」


「腕の使いすぎで右腕が上がらなくなっちまったんだ、、、」


「腕が上がらないと服を着替えることも難しくて」




なるほど、このドワーフは腕が上がらなくて


生活の質が下がっていることを悩んでいたのか。




そんなところに子供の純粋な疑問をぶつけられてしまって


自分の情けなさ、悩み、イライラの感情が混ざって爆発してしまったと言うわけか




「なるほど、それは苦労されたんですね」




「ん?、、、ああ、大変だったんだよ」


「家族の生活のためとはいえ自分の身体を使いすぎたんだ」




「確かに、健康って失ってから大切だったんだって気づきますよね」




「そうなんだよ、でももう遅い、、、俺の腕は元に戻らないんだ」




「少し僕に右腕を見せてもらえませんか?」




「ん?まぁ、見せるだけならいいぞ」




やっぱり、高齢者の接し方は


日本でも異世界でも同じようだ。




まずは、相手の話を最後まで聞くこと


話を遮ってはいけない


相手を尊重しつつ、敬語を使って提案をする




この基本ができていれば


よほどのことがない限り揉めることは少ない




「ありがとうございます!」




改善する眼かいぜんするめ


どうやらこのドワーフは腕橈骨筋の筋肉が固くなっていることで


腕が上がっていないようだ


筋膜のリハビリをやっている頃を思い出すな〜




改善する者かいぜんするもの


俺はドワーフの腕橈骨筋の硬さを取り除くことにした


側から見れば撫でてるようにしか見えないが


スキルで筋肉の硬さを取り除き、柔軟性を出している




「よし!これで大丈夫なはず!」


「少し右腕を上げてみてくれませんか?」




「ん?挙がるなら苦労しない???」


「おっ?挙がる!腕が上がるぞ!」




ドワーフは目を丸くして驚いている




「こりゃすごい!右腕が上がるなんて20年ぶりだ!」


「あんた、どんな魔法を使ったんだ?」




「いえこれは魔法じゃなくて、リハビリっていうんです」




「リハビリ?初めて聞く言葉だが、とにかくありがとう!」




ドワーフの目には涙が溢れていた。


「どうしたんですか?」




「いや、腕が上がるのが嬉しくてね」


「これで孫を抱っこできると思うとさ涙が止まらないんだ」




そうだ、人間もドワーフも同じなんだ


怪我をすると自分の生活の質は下がるし、自分の夢ややりたいことができなくなる


リハビリすることでそれらができるようになるんだから


嬉しくて当然なのだ。




まして、この世界では


怪我が回復するなんて概念がないのだから


感動は計り知れないんだような




「お役に立てて良かったです!」


「でも今は一時的に筋肉を柔らかくしているので、自主トレとして腕の筋肉のマッサージと運動を続けてくださいね!」




「ああ、自主トレ?はわからないがやってみるよ」


「お前さんには感謝してもしきれねーな」


「今度、俺の店に来てくれ!しっかりお礼させてもらうから」




「いえ、お役に立てて良かったです!」




ドワーフは笑いながら去っていった。




そして、群衆も解散していった。




いやーデイサービスでのリハビリを思い出すな〜


やっぱりリハビリって素晴らしい!


俺が感動に浸っていると




「おい、さっきの技は一体なんだ!」




後から声をかけられた


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