第4話『ベレッタ92FS-MC』

 足元もよく見えないほど暗い森の中、謎のタブレット端末であるアフエラが画面を光らせる。


〔こちらが私のお勧めとなります〕

「どれどれ……?」


ー【お勧め】ーーーーーーーーーーーーーーー

ベレッタ92FS-MC

H&K MP5短機関銃-MC

M1014散弾銃-MC

FN ミニミ軽機関銃-MC

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 み、見覚えがある。全て銃では無いか。

 銃の種類などの細かい部分は覚えていないが、どれも聞き覚えがある。


「ぜ、全部銃なのか? コストとか大変そうだが……」

〔銃はマスターの好みであると認識しております。それと、素材はデグルベアの骨を使用することで作成することができます〕

「骨……まじか。このMCって何だ?」

〔Magic Customizedの略称です。火薬が手に入る機会が少ない今、魔法の存在があるこの世界ならではの改造です〕


 銃が銃弾を発射する仕組みに電気は使われていない。基本火薬のエネルギーのみで動くのだ。火薬の爆発が鉛玉を飛ばし、反動で銃のスライドが後退し、リロードが自動で行われる。いわゆるリコイルだ。この動作に火薬の存在は不可欠。それを魔法で代用する……。

 仕組みはともかく、銃の作成が可能なようだ。


「じゃ、じゃあ……ベレッタで」

〔了解いたしました。素材を『デグルベアの骨』と『デグルベアの魔石』とし、『ベレッタ92FS-MC』を作成いたします〕


 そう言うとアフエラは肉を加工した時のような動作を行い、数秒経ってから『出来上がりました』と言った。

 アフエラが出したのは白い銃身の自動拳銃。よくドラマなんかで目にするよな標準的な形をした銃。なんだが、本来の黒色ではなく真っ白だった。


「なんで黒じゃないんだ?」

〔骨が白かったからです〕


 じゃあこの銃全部が骨……ひえっ。


「ん? そう言えばデグルベアの魔石ってどの部分に使ったんだ?」

〔トリガー周辺に突起があるかと思われます。そちらに『魔力貯蔵庫(マナプール)』として使わせてもらいました〕

「な何故? そもそもマナプールってなんだ?」


 ため息をつくかのような間を開けて説明し始める。本当に機械なのかコイツ。


〔マスターは魔法が使えないはずです。何せ、この世界で暮らしてきた人間とは違い、魔法という感覚が無いでしょう。そこで、擬似的に魔法を使う方法として魔力貯蔵庫を使います。本来弾薬に使われる火薬を補う方法として『爆破魔法』を使用し、弾丸を飛ばす予定でしたが、マスターが魔法を使うことができないため魔力を持つ『魔石』を元に魔法現象を発動させます。そうすれば魔法の使えないマスターでもこの世界でお手軽に銃を扱うことができます〕


 アフエラの話を要約すると、魔石のエネルギーで銃弾を放つ機構を作ったと言うことだ。


「銃弾はどうするんだ?」

〔その辺の石を加工するだけで充分です。爆破魔法の衝撃で、銃や弾丸が破損しないための硬質化の魔法も仕込んであります〕


 なんて便利な。これでもう敵対生物も怖く無いのか。


〔ちなみに、本日は寝ないことをお勧めします。睡眠中に魔獣が襲いかかってきたら普通に死にます〕


 敵対生物めっちゃ怖い。

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