代償

 喉元に剣を突き付けられて混乱する。目の前にいるのはこの世界の救世主だ。味方の返り血を浴びたまま、今も優しく穏やかに微笑んでいる。

「どう、して」

 本当にわからなかった。どうして彼女は裏切ったんだ、いつでも僕らが優位に立っていて彼女を便利に使っていた筈なのに!

「すぐに殺すつもりだったけど気が変わったわ。お優しい司教様。貴方は何回斬ったら死ぬかしら」

 恥も外聞もなく泣いて駆け出す僕の背に、一閃の赤が煌めく。

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