絵空事

 異界からの来訪者は実に好ましい男だった。この赤竜を前にしても一切動じる様子がない。

「空想上の生き物?」

「そうそう、俺の世界じゃドラゴンなんて存在しねえ。物語にだけ出てくる空想の生き物だよ」

 衝撃的な話だった。竜が世界のどこにも存在しい、空想上の産物とは。つまり……ああ何ということだ。

「存在しない世界にさえも、我らの名は轟くか!」

 堪え切れず若竜のように大声で笑った。ああ愉快、愉快。長生きはするものだ。

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