ゲーム世界に転生した俺が、現実世界に戻れたら運命変わった件 ~ゲーム世界を現実の力で無双してたら、現実世界でも話題になってます~

純クロン@弱ゼロ吸血鬼2巻4月30日発売

第1話 日本に転移


「ごほっ……ラグナロク騎士爵よ。本当に我が娘を救う手立てがあるのか!?」

「はい。ございます」


 玉座の前で跪く俺に対して、王は驚きのあまりか大きな声で叫んできた。少し風邪気味なのかせき込んでいる。


「我が娘は病に侵されていて、どんな医者も諦めておるのだぞ!」

「存じております。ですが大賢者の作った伝説の薬があります。それを飲めば姫様も助かります」

「ほ、本当か!? 本当に我が娘は助かるのか!? ごほん……まるで救う手立てが見つからなかったのだぞ!?」

「我が家名にかけて約束いたしましょう」


 俺は元大学生の日本人だったのだが、『ディアボロス・クエスト』というゲーム世界にとある少年キャラの姿で転生した。今の名前はファンタジーらしくスレイン・ラグナロクだ。


 そんな俺はアーレーン国の王城玉座の間で謁見を行っている最中である。

 

 このアーレーン王国は俺の領地の属する国で、『ディアボロス・クエスト』で魔王軍によって最初に滅亡させられる国だ。


 だがこの世界はゲーム本編開始の直前なのでまだ残っている。そしてアーレーン王の娘、つまりアーレーン姫ももうすぐ病気で死ぬはずのキャラだった。


「ラグナロク騎士爵よ! ならば我が娘を救ってみせよ!」

「ははっ!」

「頼むぞ……んんっ」


 王は最後に喉を鳴らした。少し調子が悪そうだな。


 こうして王との謁見は終わって、俺は玉座の間から出ていく。そして与えられていた部屋に入って扉を閉めると。


「どうだった? うまくいったかな?」


 道化師ピエロをイメージしたドレスを着た、明るい雰囲気の少女が愉快そうに笑いかけてきた。


 彼女は俺の仲間のクラエリア・クラウンだ。エメラルドの色のショートヘアを肩まで伸ばして、シルクハットをつけている。さらに服はカラフルな上に色も左右非対称でと情報が多すぎる。


 そんな情報過多なこの少女は俺の仲間である。


「ああ。姫様を治す許可を頂いたよ。これで邪魔されずに解呪できそうだ」

「それはおめでとう。せっかくスレインを慰める言葉を用意していたのに残念だねぇ」

「ちなみにどんな言葉を用意してたんだ?」

「失敗した? いえいえお気にせず! ああ! 哀れな姫様が運命の元にお亡くなりになるだけ。そう、スレインが失敗したせいで! アーレーン姫は哀れな石像になり、新たな悲劇が生まれるだけ!」

「慰める気ゼロだろ」

「ボクは道化だからね」


 ケラケラと笑うクラエリア。


 こんな彼女だが『ディアボロス・クエスト』における隠しボスだったりする。


 ゲームでは絶対に仲間にならないキャラだが、俺はチートすら生ぬるい方法で彼女を手懐けたのだ。


 クラエリアだけは俺が転生者であることや、この世界がゲームであることも知っている。教えることが仲間になる条件のひとつだったから。


「それでどうするのー? 本当に行くのー?」

「もちろん行くさ。にアーレーン姫を救う手立てはないからな」


 俺は『ディアボロス・クエスト』のことなら知り尽くしている。だからこそ断言できるのだが、この世界にアーレーン姫を救う方法はない。


 だがこの世界の医療技術では彼女は治せず、彼女は死ぬ運命にある。回復魔法は身体の傷こそ治せるが病には大した効き目がない。


 酷い話だ。アーレーン姫と俺は同じだ。世界に死ねと言われているに等しい存在。


 つまり彼女は救えない、それがこの世界の摂理だ。


 …………ならば、この世界でない力ならばどうだ?


 この世界は魔法こそあるが、文明的には中世ヨーロッパレベルで、病気に対する医療はあまり発達していない。


 つまり地球よりも明らかに医療技術は低いはずだ。世界史でも黒死病とか習ったけど、あれも今なら薬で治ると聞いた。


 ――じゃあ地球から風邪薬とか持って来れば死なないのでは? 


 俺はこの世界で魔法を学んで転移魔法を会得した。転移は自宅へワープできる魔法だ。


 この魔法はどれだけ距離があっても、別次元の世界だろうとも転移できる。この世界では魔王の国が別次元の世界にあるから、転移魔法は別世界だろうと関係なく飛べるのだ。


 そして俺は日本からの転生者だ。つまり日本にも家を持っていたわけで。


「クラエリア、俺の手に掴まれ。地球に飛ぶぞ」

「わーい。ボクはアイスクリームとやらが食べてみたいなー♪」

「身体に抱き着けとは言ってないんだが」

「固いこと言わないでよ。美少女に抱き着かれて嬉しいでしょ?」

「自分で美少女とか言うな。我が望みよ、空を翔けよ。テレポート」


 俺は地球へ向けて転移魔法を使った。



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