第29話 ククノチ


 一月が経ち、ようやくこの姿にも慣れた。

 アキとエリサが来て笑っていたが笑い事ではない。

 後、俺がくるまっていたと思われる花は庭に映された。でかいヒルザキツキミソウらしい。花言葉が自由な心、無言の愛などらしいが、俺に合ってるかと言われると???だ。

 服も買い替えた。5人みんなが一緒に行って選んでくれた…と言うより着せ替え人形になった気分だったな。


「よう!タカ!」

「なんだ?何しに来た?」

「なんだはないだろ?様子見に来たんだ」

「あぁ、あれから別になにも、おい離れろ!」

「誰が離れるか!どこに行く?」

「しるか!お前まで付き合うことないだろ!」

 っと言ってる間に光に包まれ、来たのは、

「離せ、ここは最初の道か」

「おっと、あ?最初の道って…そうだな」

「ここでタネを拾ったんだ」

「俺は何にも拾ってないぞ?」

「なんか光ってて拾わずにいられなかった。ポケットいっぱいに拾ったんだ」

「そうか、ここは異世界に繋がってるよな?」

「果たしてそうなのか?」

「行けばわかるさ」

「だな」

 道をまっすぐに進んでいくと光が溢れてきて、

「っ!ここはどこだ?」

「前の世界と違うな」

「よくいらっしゃいました花の勇者」

「花の勇者?」

「あはは、今のお前のことだろ?」

「はい」

 その言葉を発しているのは綺麗な女の人だが下半身が根になっている。

「あなたが花開くのを待っていました」

「ん…あれは必然だったのか」

「はい、あなたがタネを拾ってくださり全てが花開くと今度はあなた自身の才能の開花がされるように私がタネを撒きました」

「…なんでそんなことを?」

「私達花人は神に近い存在ですが、今神から攻撃を受け、もう仲間は数百しかいません」

「は?何故神からそんなことを?」

「入らない存在になってしまったのかもしれません、それがわからないので私達も戦い、そして敗れました」

「なんだそれ!訳もわからずに入らないってのが気に食わないぜ!」

「他の花人は?」

「もう諦めています、私達は滅ぶ存在だと」

「諦めてないから俺を呼んだんだろ?」

「はい、私は何も知らずに滅びて行くのは違うと思ってます!だから力をお貸しください!」

「分かった!だがこいつは帰す、無関係だからな」

「ふざけんな!俺が勇者の時に助けてくれたんだ!俺も一緒に行く!」

「はぁ、わかった、それよりお前はここに根を張ってていいのか?」

「一度根を張るともう動けませんから私はここでいいのです」

 こんな洞窟みたいなところでいい訳ないだろ?

「名前は?」

「ガーベラです」

「わかった、ちょっと待ってろ!」

 と洞窟を出るとそこは村のようになっていた。


「おい、ガーベラの家はどこだ?」

「ん?あぁ、あの変わり者ならあそこのオレンジ色の屋根だ」

「ありがとう」

 そこにいくと人がいなくなってずいぶん経っているようで埃や蜘蛛の巣が貼っているのでクリーンをかける。


 また戻りガーベラの手を取ると転移を使いガーベラの家に、椅子に座らせると窓から外が見える。

「あぁ、また見ることができました。ありがとう」

「下は土のほうがいいか?」

「いえ。これで最後になります。私はもう長い事生きましたから」

「机の下に穴を開ける。そこなら根を伸ばせるだろう!」

 剣で切ると土が出てくるのでそこに根を置くと、

「まだ見ておけ!俺がその髪を倒すところを!」

「は、はい」

 根は土の中に入っていきこれで養分を吸収できるだろう。

「それで?ここはどう言う世界だ?」


 ガーベラが言うにはここは人間もエルフも獣人も花人もいる世界で一つの大陸だそうだ。そして花人はエルフよりも長寿で、そして弱い生き物。

 花を咲かせるために生まれ、受粉には獣人や虫なんかに頼らねばいけなく、エルフのように風や水を自在に操ることもできないので自然に頼り水や風を受けなければいけない。

 時には人間が奴隷として連れ去ったりするそうで数は少なくなる一方だったそうだ。


「それでも花人は自然のために生きてきました」

「はぁ、できることはあったはずだ!何故そこで諦めるんだ?俺は諦めない!神に近い存在だろうと、そんな風習は認めない!」

「でしょうね、私も何かできないかと思ってあなたを呼んだのですから」

「変わらなくちゃダメだ!花人自身が!」

 ガーベラは涙を流すが、首を縦に振らない。

「それは神の決めたことです。私達にはどうしようもなかった」

「…戦ったんだろ?この人達もそれなりにあがいたんだ」

 アキが言う。

「くそ!なんだって言うんだ!神?ふざけるな!種族を一つ潰すなんて」

「俺らだって気にしたことないだろ?種が消えて行くことを」

「クッ!…そうだな」

 種を守ろうとしているのは一部の人間だけで関係ないと感じてる人の方が多いだろう。


 向かいの椅子に座る。

「で?神はどこにいるんだ?」

「大陸の真ん中に大樹ユグドラシルがあります。でも花人だけでは」

「他の種族もいるのか?」

「はい、中はダンジョンになっていて、その扉を開くにはすべての種族が力を合わせる必要があります」

「獣人にエルフに人間か?」

「はい」

「わかった、ツテはある」

「神の名は?」

「ククノチ様です」

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