二話(1/3) 合気道

 突然出てきた『合気道』という単語に、みどりは困惑しながらも不思議と興味が湧いていた。

 袴の女子についていくと、ブースには『体育会合気道部』と書かれていて、眼鏡をかけた袴の男子が一人座っていた。

「自己紹介がまだだったね、アタシは体育会合気道部二年の九十九つくもあずさ。こっちは同じく二年の嶋田しまだ直大なおひろ

 袴の女子、梓はみどりと優梨乃に二人の名前を告げる。袴の男子も優しく微笑みながら会釈する。

「一年A組の柳葉みどりです」

「同じく一年A組の北条優梨乃です。よろしくお願いします」

 みどりと優梨乃が自己紹介すると、よろしく、と直大が返した。

 梓に座るように促され、みどりと優梨乃はブースの席に腰かける。

「さて、二人とも、合気道て何か知ってる?」

 梓が二人に問いかけた。

 少し考えて、優梨乃が

「女性が身につけると良いとされる武道ですか?」

と答えた。

「お、よく知ってるね。そう、護身術の一つで、力を必要としないから、女性でもできることで有名なの」

「なので、僕たちは体育会としては珍しく、厳しい筋トレを必要としないんです」

「筋トレしないんですか?」

 梓と直大の説明に優梨乃が疑問に思ったことを聞いた。

「全く、てほどではないですが、週に一回するかしないかの頻度ですね。しない方が多いです」

 体育会はもっと厳しいイメージがあっただけに、二人には意外な話だった。

「全然やったことなくても大丈夫なんですか?」

 みどりが不安を抱いたことを聞く。

「もちろん! むしろ毎年入部する部員のほぼ全員が合気道初心者だよ。二年の秋には昇段かな」

「昇段!」

 梓から昇段という単語を聞いて、優梨乃が食いついた。

「昇段て、つまり黒帯てことですか?」

「そうですね。僕たちも今はまだ三級で白帯なんです」

 ほら、と梓が立ち上がって、袴の隙間を指差す。そこには白帯が巻かれていた。

「これが秋に黒帯になるんですね」

 優梨乃は黒帯の響きに魅力を感じているようだった。みどりも先輩二人の話を興味深く聞いていた。

「まあ、百聞は一見に如かず、と言います。明日の放課後に講堂で演武をするので、ぜひ見に来てください」

 みどりと優梨乃は、先輩たちに話を聞かせてもらったお礼をすると、ブースを離れた。

「これからどうする?」

 優梨乃がみどりに聞く。

「そろそろ帰ろうかな。また明日ね」

 その日はその場で解散となった。

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