第27話 連れ戻されて ※ランドリック視点

 アンリエッタの説得に失敗して、実家に連れ戻されてしまった。そして今は、父の前に引っ張り出されている状況。


 部屋に入って来た父は、激怒している。アンリエッタとの婚約を破棄した時以上の激怒っぷりだ。その怒りを向けられる。


「バロウクリフ侯爵家から抗議があったぞ! お前は一体、何をやっているんだ!」

「仕方なかったのです! すべて元通りにしないと、俺には希望がなかったから」


 メディチ家を継ぐ権利を失い、次期当主の候補から外されてしまった俺は、どうにかしないといけなかった。そのために、すべて元通りにしようとアンリエッタに会いに行ったというのに。彼女は全力で拒否してきた。


 駆けつけた兵士に俺は乱暴に拘束されて、しばらく牢屋に閉じ込められていた。


「何が、仕方ないのだっ! お前の勝手な行動で、我が家に大変な迷惑をかけていることがわからんのか!」

「で、ですが――」

「黙れ! もういい。このバカ息子め! お前のような愚か者など、もはや息子ではない!」

「……」


 怒りに震える父を目の前にして、俺は何も言えなくなった。このままだと、本当にマズイ。どうにかして、父を説得しないと。アンリエッタとの婚約を元通りにして、メディチ家を継がないといけないんだ。そうしなければ、俺の居場所はない。


 だが、どうやって説得すればいいんだ? 何か言わなければ、どうしようもない。けど。


「お前を王都から遠く離れた辺境へ送ってやる。そこで一生、反省してろッ!」

「そ、そんな!?」


 辺境へ送られてしまったら、本当に役立たずになってしまう。そして、俺の人生も終わり。死ぬまで一生、役立たずとして生かされるなんて嫌だ。屈辱的すぎる。


「それならいっそのこと、俺を処刑してください!」

「出来ることなら、そうしている! お前の存在は、メディチ家にとって害悪以外の何ものでもないからな!」

「それなら、どうして!」


 俺を処刑しないのか。もしかして父はまだ、俺に期待してくれているのでは。そう思ったが、違った。


「精霊の契約があるからだ」

「どういうこと、ですか……?」

「下手にお前を殺してしまったら、我が家にまで契約の影響が及ぶ可能性がある。だから簡単には、処刑が出来ないのだ……!」


 父は悔しそうに、拳を握り締めながら言った。また、精霊の契約か。こんな時まで、俺の人生に影響してくるなんて。本当に最悪だ。その名称を、もう聞きたくない。


「だからお前は生かしたまま、もう勝手に行動しないよう、どこにも行かないように監視もつける」


 なんで、こんな事になってしまったのか。どこから間違えたのか。考えれば考えるほど、分からなくなる。俺はただ、幸せになりたいと思ったから、レイティアと一緒になりたかったからこそ、行動しただけだというのに。


「安心しろ。お前ともう一人、彼女も一緒に辺境へ送ってやる」


 父が、そう言う。彼女とは誰か。もしかして。


「ちょっと、離しなさいよ!」


 連れてこられたのは、拘束されたレイティアだった。

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