第17話 すべてを元通りに ※ランドリック視点

「今晩、一緒に食事でもどうかな?」

「ごめんなさい。今日は用事があって」


 レイティアを食事に誘ったが、バッサリと断られる。またダメか。


「そうか……、残念だ」

「それじゃあ、私は失礼します」


 そう言って、颯爽と立ち去るレイティア。彼女の背中を見送りながら、俺は舌打ちした。これで断られたのは何回目だろう。避けられているような気がしてならない。


 次期当主の座から降ろされたのは、まずかったか。彼女にも、俺の将来が危ういと思われたかもしれない。


 このままだと、レイティアが俺から離れていってしまう。それだけは、避けたい。どうにかして印象を挽回しなければならない。


 今動くのは得策ではないと言われたが、このまま何もしなければ状況は悪くなっていきそうだ。何かしないと。


「……」


 無言で自分の腕を見る。念じると、金色の輪が現れた。精霊の契約をした証。あの女との繋がりが、まだ残っている。コレをどうにかしないと、前に進めそうにない。


 慰謝料の支払いで、メディチ公爵家の財産も吸い取られている。それを止めないといけないだろう。


 仕方ないか。前の関係に戻そうと、アンリエッタを説得するしかないな。それで、この忌々しい精霊の契約を破棄してもらう。


 精霊の契約は、お互いが納得した時に破棄することが可能なはず。


 きっと彼女も、貴族に戻りたがっているだろう。平民の生活なんて、令嬢には耐えられないと思う。


 アンリエッタだって、精霊の契約を破棄したいに決まっている。そうに違いない。


 問題は、俺が折れたら彼女は大きな要求をしてきそうなこと。それはちょっと面倒だが、交渉すればいい。ある程度は譲歩して、妥協点を見つけよう。


 もう一つの問題は、レイティアのこと。妾になってくれたら一番楽だが、納得するだろうか。


 プライドの高いレイティアは、正妻じゃないと嫌がりそうだな。だが、嫌でも納得してもらうしかない。元通りにするため、妻はアンリエッタにすると説得しよう。


 表向きにはアンリエッタを正妻にするが、一番に愛する相手はレイティアだ。そう言ってやれば、理解してくれるさ。そういうのはよくある話で、珍しくもないから。


 ただ、子どもは正妻が先に産まないと面倒なので、そこも譲ってもらう必要があるだろう。跡継ぎの権利も、先に生まれてきた子に優先権がある。そこでまた揉めそうだが、それについてはその時になって考えることにするか。


 とりあえず今の最優先は、アンリエッタとの関係を元通りに戻すこと。


 元通りにすれば、次期当主に再指名されるはず。そうなれば、何も問題ない。


 やることが決まって、希望が見えてきた。まずは、アンリエッタに会いに行こう。それからだな。

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