第15話

 捜し物が見つかったのは良かったけれど、片付けはまだ終わっていない。

 私はもう解雇かしら? それとも……

 不安な気持ちでいると、パパゴブリンが何か話しかけてきた。

 とても熱心に話しているけれど、私はゴブリン語がわからない──。


 すると、エプロンのポケットで携帯がピポーンと鳴った。

 取り出してみると、『異世界ヘルパー管理システム』が起動していて、画面にこんな文字があった。



『延長希望』

 依頼主から業務の追加希望が出ています。


【業務内容】家の片付け

【労働期限】ゴブリンの家が完全に片付くまで


 追加業務に応じますか?


『はい / いいえ』



 私はパパゴブリンを見た。

 片付けたいんだ!

 捜し物が見つかった後も、家を完全に綺麗にしたいんだね!


 私の返事を待って心配顔のパパゴブリンに、私は何度もうなずいて見せた。

「うん、うん、片付けようね。

 ここを暮らしやすい家に整えようね!」

 おっと、アプリで返事しなくちゃいけないのね。

 画面の『はい』をタップ──。


「キー!」


 アプリからゴブリン語が流れてきた。

 私に代わって返事をしてくれたらしい。

 たちまちパパが嬉しそうな顔に変わる。


 もう夕方の5時が迫っていた。

 4日目の終業時刻。

「また明日来るからね」

 そう言って、私は自分の家に戻った。


 そして。


 翌5日目、片付けは本格的に進んだ。

 家の前が仮置きに使えるようになったから。

「いる」ものでいっぱいになった箱を外に出せるようになったおかげで、家の中に作業スペースが増えて、分類がとても楽になった。


「イル、イラナイ、イル、イル」

 ゴブリンたちが5番目のブロックをどんどん分類していく。

 そして、そこからはいろいろな物が見つかった。

 鍋、大きな木のスプーン、鏡、ハサミ、くし……生活用品が次々出てくる。


 5番目のブロックがすっかり片付いたらかまどまで出てきた。

 小さなストーブのような形をしていて、煙突をつないで家の外に煙を出す仕組みになっている。

 煙突はまだ出てこなかったけれど、復元できれば、家の中で料理もできそうだった。

 物が溜まりすぎたせいで、料理までまともにできなくなっていたのね。

 そう考えたら、なんだかつんと鼻の奥が痛くなった。

 うん、人間らしい暮らしに戻ろうね。

 あ、いや、ゴブリンらしい暮らしか。

 とにかく、まともな暮らしに戻ろうね──。


 その日は片付けに片付けて、とうとう6番目のブロックまで綺麗にした。

 不用心なので、暗くなる前に「いる」ものの木箱を家の中に戻して、私はまた家に戻った。

「あともうちょっとで片付くなぁ」と思いながら。

 物の分類はあと2日くらいで終わるだろう。

 そうしたら、いよいよ家の中を整えていこう。

 ゴブリンたちが生活しやすくて、散らかりにくい、そんな家になるように。



 でも、私は失念していた。

 その日は金曜日だったんだ。

 翌日は土曜日、そしてそのまた翌日は日曜日。

 ヘルパーの仕事は「お休み」だった──。


(つづく)

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