第10話 錬金術
俺たちは兵力が低下した都市バイエラン警備のため離れることが出来なかったが、帝国軍の第3軍が来たことで、晴れて帝都へ戻ることができた。
都市バイエランには爪痕が残ったが、第3軍での城壁の修理や瓦礫の撤去など行いながら徐々に復興していくことだろう。
帝城に戻り、一つの建物を訪ねる。
広い敷地面積を持つ帝城にはこういった建物がいくつか存在する。
扉をくぐり、目的の人物を見つける。
「あれ?カインお兄様。どうされたのですか?」
彼女はライナ・ローゼア。
水色の髪をポニーテールで纏め、幼さが残る体格をしている美少女だ。
別に、本当に妹なわけではないが、小動物のような可愛さの美少女ゆえ、お兄様と呼ばせている。
断言しよう趣味だ。
「実は見てほしいものがあってな」
俺は隣にたつセイルに目配せする。
セイルは頷くと、ライナの前の机に布に包まった剣を置く。
セイルが布を捲ると中から黒くて禍々しい剣が出てきた。
「先日レイナース卿が打ち取ったデュラハンの剣なのだが、見たことない剣でな。ほかに手がかりもないし見てほしいんだ」
「大丈夫ですけど、鍛冶は専門じゃないですよ?」
「構わない。材質だけでもライナの判断が欲しいんだ」
「分かりました。やってみます」
彼女は剣を手に取りじっくりと眺め、様々な器具を駆使して調査を始める。
俺は近くにあった椅子に腰かけ、セイルが机を取り出し、お茶を飲む。
机もお茶セットもどっから出したんだ…
10分も経とうかという時、ライナの解析は終わった。
「カインお兄様。簡単に言います。わからないです」
「わからない?」
「はい。いろんな検査をしましたが、ここらへんで流通してる金属じゃないですね。そこらにある鉄剣より硬いし、魔力も良く通ります。よくわからない所が多いですが良い剣ですね。これ」
「なるほど…もしかして光の剣『クラウ・ソラス』よりも上か?」
俺の質問にライナは首を横に振った
「それはありえません。それで言うとクラウ・ソラスもよくわかりませんが、あれは神の領域に踏み込んでる武器です」
光の剣クラウ・ソラスとはレイナースが常に帯剣している帝国の至宝の武器だ。
かつて、とあるボスレイド級モンスターを倒した際に手に入れた。手に入れるのに苦労したものだ。
「なるほど…とりあえずその武器はライナに預ける。ところでちょっと製作を頼みたい」
「もちろんお任せください。カインお兄様」
「これなんだが」
一枚の使用要求書を渡す…
夕方
朝に来たライナの工房は出るとき気づけば夕方になっていた。
ライナと二人でアレコレするのは楽しかったと夕日を眺める。
俺はふと夕日に照らされる指輪を見つめる。
マインドプロテクターの指輪
今回の敵が魅了を使っていたので、それ対策のアイテムを必要としていた。
俺の白魔法には状態異常を回復することはできないが防ぐマインドプロテクターの魔法があったので、魔法を保存できる指輪をライナが製作し、俺がそれにマインドプロテクターの魔法を保存した。
まだ数は多くないが、そのうち量産し、体制を整えなければならない。
俺は夕日を眺めながら未来の帝国を思い描く。
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