第26話 『さつき』と【命】と「不潔男」
〈どもども、私は三年五組、
「二年一組、
【同じく、二年一組
『
〈おおー、校内の有名人が揃ってると壮観ですなあ……って、どしたの? みんなしてそんなにマジマジと見つめて〉
「あ、いや、すみません……」
【なんというかその……】
『青いな、ッテ……』
〈あはは! そっか! はじめましての人はそうだよね。こんだけ青けりゃ気になるって話だよね! 私、めっちゃ青好きでさ。見ての通り、髪からピアスからソックスからスマホケースから、校則に反しない限りのもんは全て青で統一してんだよね。ま、会長の改革のおかげでうちの校則ユルユルだからほぼ真っ青なんだけどね、あはは!〉
『い、いきなりでちょっとびっくりしまシタけど……でも、とてもよく似合ってマス、サツキ』
〈あはは! あんがと白姫ちゃん。青ってなんかスカッとする感じがして気持ちいいんだよね〉
【成程。会ったばかりなのに不躾かもしれませんが、さっぱりした感じの先輩とも合致している色ですね】
〈おーおー、嬉しい事言ってくれるねぇ黒妃ちゃん。ま、たしかに私こんな感じのチャキチャキだから、『ほぼ学年違いなのに姐御』とか言われてんだよね、あはは!〉
『え?……それッテ――』
〈ん? どったの白姫ちゃん?〉
『い、いえ……なんでもないデス……』
〈?…………ってか、褒めてくれたからつい軽く自分語りとかしちゃったけどさ……もっと触れなきゃいけない事があるよね? そこで突っ伏して、ぐでー、ってなってる子は?〉
《ああ、申し遅れました。二年七組
〈よ、よろしく……って、彼女はどういう立ち位置なの?〉
「あ、ああ、すみません……実は赤ヶ原は新会員なんです。なんか極端に体力が低いらしくて……失礼なかっこですけど勘弁してやってください」
〈あ、そうなんだ。まあ私は全然気になんないけど……うーん、やっぱり変わりも――おっと、個性が強い人間じゃないと、この『白黒つけよう会』には入れないのかな、あはは!」
【そういう訳ではないのですけど……】
『でも安心してくだサイ、サツキ! ユラはものすごーく優秀で、ついさっきも謎を鮮やかに解明してくれた所なんデス!』
〈お、それは期待できるねえ。じゃあ私の相談もちゃちゃっと解決してもらおうかな!〉
《力の限りを尽くします。えいえいお~》
〈あはは! そんな気の抜けたエイエイオー聞いた事ないよ。面白いねー、赤ヶ原ちゃん! じゃあ早速本題に入らせてもらおうかな――私さ、付き合ってる彼氏がいるんだけどね。同じ学年の
【浜松先輩といえば、たしか野球部のエースですよね。成績も良く、性格も真面目で後輩部員からの信頼も厚いとの噂をきいた事があります】
〈あはは! まあ『
『あ、あれ? なんか急に元気が……どうしまシタか、サツキ』
〈うん……野球部にはマネージャーがいるんだけど……雅志がその女の子と一緒に、駅前のアクセショップで――買ったその場で名前を刻印してくれるのウリで、結構有名なとこなんだけど――楽しそうに指輪選んでるの見た、って友達が……〉
『え……そ、それッテ――』
〈そうなの……浮気かもしんないの〉
【……失礼ですけど、そのお友達の証言に信憑性はありますか?】
〈うん。その子、私の親友だから。
『む、武者小路デスか?……サネアツ以外ではきいた事ありまセンよ、その名字……』
〈お、そんなのよく知ってるね白姫ちゃん。正にその武者小路で間違いないよ。そんで、下の方は
『げ、激シブじゃないデスか……でもかっこいいデス!』
〈そーなのそーなの。また本人も名前負けしないような子でさ、めちゃくちゃかっかよくてモテモテなんだよね。おそらく明日とかプレゼント攻めにあうんじゃないかな――おっと、なんか脱線しちゃったね〉
『そ、そうデスね。メイにも非常に興味がありマスが、今重要なのはその目撃内容デス』
〈だね。まあ内容っていってもさっき話したのが全てで、命とはほんとにマブダチだから、嘘ついたりしてる可能性はゼロ。絶対にその二人だったって断言してるし、見間違いの可能性もほぼないと思う。雅志に関しては特に〉
【特に?……武者小路先輩と浜松先輩には、何かあるんですか?】
〈うん、命と雅志は家がお隣同士の幼なじみだから〉
【幼なじみ……では二人は旧知の間柄だと】
〈そうそう! 私がその二人と初めて出会ったのは高校からなんで、変な話、命と雅志は私とよりもずっと付き合い長いんだよね〉
【成程……だとすれば少し不自然ですね】
〈ん?……なにが?〉
【それだけ見知った間柄なのであれば、武者小路先輩は浜松先輩に直接問いただしたりしそうなものですけど。もちろんその場では無理でしょうけど、『親友』の一大事かもしれない事態……後でいくらでも探りを入れる機会はあったはず。でも、今の若葉先輩のお話しぶりから察するに、それが行われた様子はない】
〈ああ、それは命本人も言及してたよ。『万が一浮気なのであれば叩き切ってやりたい所だが、まずは恋人であるさつきに報告し、判断を委ねるのが筋だと思った』って〉
『な、なんか武士みたいな人ですね……』
〈あはは! そーなの、剣道もめっちゃ強くて、女の私から見ても惚れそうなくらいに凜々しくてさー……って、いかんいかん。また命の話になっちゃったね……あ、それで一個思い出した!〉
『お、なんデスか?』
〈そもそもさ、雅志って浮気なんてするような奴じゃないの。そこは私も命も共通してる見解〉
『へ?……じゃ、じゃあ今回も疑う必要ないんジャ……』
〈でもね、命が言うには二人とも恋に浮かれた目をしながら指輪を選んでた』んだって〉
『こ、恋に?……そんなの見ただけで分かるものなんデスか?』
〈それが分かるんだなー。さっきからチョイチョイ言ってる通り、命ってめっちゃモテんのね。だから告白されるのとかしょっちゅうで――本気で恋してる人の目が経験則的に分かるようになっちゃったんだって〉
『はえー……そんな事が……』
〈あはは! 軽い特殊能力みたいだよね。でも、命は憶測で疑いを向けるような人間じゃない。ましてや雅志の誠実さや義理堅さを私よりも知ってる――その彼女が言うんだから、よっぽど本気の目だったんだろうな……って〉
「成程、そういう経緯が……で、武者小路先輩に判断を委ねられた若葉先輩は、浜松先輩に何かアクションをかけたんですか?」
〈ううん……〉
『あれ? なんか以外デスね。サツキのキャラならストレートに聞いちゃいそうなものデスけ――あ、ご、ごめんなサイ! まだ会って間もないのに勝手に決めつけるような事を言ってしまッテ……』
〈あはは! いーのいーの! 私、白姫ちゃんの言う通りあけっぴろげで、思った事はなんでも口にしちゃうタイプだからさ……でも、駄目なの。恋愛関係の事だけは駄目なの……どうしても積極的になれないっていうか、ここに相談に来るのも大分迷ったっていうか……うああ……な、なんか顔が赤くなってきちゃった……うう……ご、ごめんね……〉
『か、かわいいデス……』
【……かわいいわね】
〈へ?〉
『あ、ご、ごめんなサイ。ギャップにやられてしまってツイ……』
【ご、ごほん……失礼しました。相談者に過度に入れ込み過ぎるのはよくないのに……反省します】
〈あ、あはは……いーのいーの! 柄にもない事言ってんの分かってっから。気ぃ遣わないでリアクションしてくれた方がこっちもやりやすいし〉
「まあたしかに今の若葉先輩、かわいかったもんな」
『……ちょっとなに言ってるか分からないデス』
【不潔だわ】
「お前らのフォローしたんですけど!?」
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