第11話



翌日。


軍団長に案内されていた。


王の間と呼ばれる部屋まで連れてこられた。


扉を開け部屋に入ると赤いカーペットが部屋いっぱいに引いてあった。


(王族が過ごす部屋って感じだな)


そう思って前を見ると、視線の先には美しい女性がいた。

それは、昨日の人だった。


「あちらが皇女様でございます。粗相がありませんよう。お願いします」


俺と皇女の目が合った。


「あなたが、大地様でしょうか?」


皇女様は少し期待の眼差しで俺を見ていた。


「はい」


「なんて、これは運命ではないでしょうか?!」


皇女様は椅子を飛び降りると真っ直ぐ俺の方に走ってくる。


「英雄様と昨日の方が同一人物だったなんて」


「俺も驚いてるよ正直」


「まぁ……♡」


俺の事を目をハートにして見てきていた。


事情を知らない隊長は少しばかり困惑していたようだ。


俺もジーッと見つめ返してると皇女はクネクネと体をよじらせた。


「そんなに見られては恥ずかしいですぅ……♡まさか、同時に思いを寄せていたおふたりが同一人物だったなんて、なんていう幸せなのでしょう」


そのとき、こほんと咳払いした女の子。


「私は皇女のセイレーンと申します。以後お見知り置きを」

「セイレーン様ですね」

「礼儀正しいお方ですね。ですが呼び捨てでかまいません。あなた様は帝国の命の恩人ですからね。そして、私の愛するお方」


ニコッ。


素晴らしい笑顔を向けられた。


眩しすぎるぜ。


そう思っていたらセイレーンは玉座から降りてきて俺に近付いてきた。


スっ。

手を伸ばして俺の頬に手を当ててきた。


「セイレーン?」


びくっとなって思わず身を引いてしまった。


「すみません。つい、触りたくなってしまったのです。触れたくなったのです。あなたに」


「別に構わないけど……」


びっくりしたな。いきなり触ってくるんだもん。


「大地様♡」


俺の事を見つめてくるセイレーン。


その目は真面目だった。


「なんでしょう?」


とても真面目な目で見てくるものだから、俺も思わず身構えてしまった。


「今一度正式に言います。私と結婚してください、お願いします」


周囲が騒然としだした。


「皇女様が結婚だと?!」

「婚約すらもする気がなかったあの皇女様が?!」

「ふむ、大地様はやはり英雄に相応しいお方ですな。あの皇女様の心を射止めてしまうなんて」






「私と結婚してください。私にあなたをもっと触らせてください」


スーッ。


俺の胸をもう一度触ってそのまま下の方に移動させていく。

胸、腹。それから……


(その先は、公衆の面前ではまずいですよっ?!)


俺は後ずさって口を開いた。


「ちょっと待って……」


俺ももう一度舐めまわすようにセイレーンの体を見た。


胸、巨乳。

腰つき、エロい。


顔、SSSランク美少女、


答えは、すぐに出た。


「分かりました、結婚しましょう」


「うぅ……大地様と結婚出来なんて夢のようですぅ。こんなに幸せでいいのでしょうか、私は」


セイレーンは周りの人達に指示を出した。


「これより大地様との結婚式を行います。準備してください早く。私は1秒でも早く大地様と結婚したいのです」


「「「はっ!皇女様の仰せのままに!」」」


慌ただしく動き始めた周りの人達。


黙々と結婚式の準備が始まっていく。


「ところで、なんで俺?まだ会ってもいなかった時からすごい好かれてたけど」


そう聞くとセイレーンは恥ずかしそうにモジモジし始めた。


「私は大地様の報告を聞いた時から結婚したいと思っていました。たったひとりで王国軍に立ち向かったと聞いて、この人以外にいないと思いました」


「それでも気が早くない?まだ会ってもいないのに」


「はい……(シュゥゥゥゥゥゥ)自分でもそう思うのです」


顔が真っ赤になっていた。


どうやらこのことを話すのは恥ずかしかったことらしい。


「ごめんね、そんなに恥ずかしい思いをさせてしまって」

「大地様……そんなこと言われると、キュンキュンしてしまいます♡」


俺の両手を取ってきた。


「愛しております、大地様ぁ♡」


犬のように腰をフリフリさせていた。


「大地様が早く欲しくてたまりません。私ははしたないでしょうか?」

「うんうん、ぜんぜん、はしたなくなんてないよ。キレイだよ」

「まぁ、キレイだなんて。そんなっ♡」


頬に手を当てて照れていた。


そのときだった。


ガシャガシャガシャ。


鎧の音が聞こえてきた。


この場に似つかわしくない音だったため俺は音の方を見た。


そこにいたのは騎士の姿をした男だった。


「セイレーン皇女様。そのような振る舞いはやめた方がよろしいかと」


俺を見てきた男。


「この方も内心は、はしたないとお思いかもしれませぬぞ」


(なぜ俺を巻き込んだ。まるで俺が「はしたない」と思ってる、ようなことを言ったが)


俺とセイレーンが結婚関係にあることはこの場にいる誰もが知っていることである。だってついさっき目の前で結婚すると言ったのだから。


その結婚相手の株を少しでも下げるような意図の発言をしたことに違和感があった。


「そうなのですか?大地様(ウルウル)」


「思ってるわけないじゃないか。かわいいと思うよほんとに」


俺は騎士を睨んだ。


「何が目的だ?」


「それは、こちらのセリフですよ。王国人。貴様らが我々帝国にやってきたことの罪消えると思ってるのか?」

「何を言い出すかと思えば、そんなことか。知らんな」


俺は目を細めた。


「次に俺を侮辱するようなことを口にしてみろ。その首たたき落とすぞ」


「聞きましたか?セイレーン皇女様。これがこの男の本性ですよ。やはり王国人は危険です」


セイレーンに訴えかけた騎士だったが。


ピトッ。


セイレーンは俺にくっついた。


(効果一ミリもないじゃん)


「謝りなさい。騎士団長ヴァイスッ!今のはあなたが5000倍わるいです!大地様はなにも悪くありません」


「皇女様、騙されてはいけませんぞ!」


ブン!


俺はヴァイスをぶん殴った。


ザワザワ。


「なんだ?!」

「暴力?!」


ヴァイスがニヤリと微笑んだ。


「皆の者この者を捕えよ!皇族でない者がこの場で暴力行為に及んだ!皇女様をお守りしろ」


「「「はっ!」」」


ダッ!

ガシャガシャガシャ!


鎧姿の奴らが俺に向かって走ってきた。


恐らくヴァイスの指揮下にある騎士たちだろう。


「スラッシュ!」

「スタブ!」


俺はそれを全身で受けとめた。


俺の防御力の前では避ける必要すらない。


「大地様っ?!」


セイレーンの声が響いてきたが、俺に触れた剣が全部粉々に砕け散った。


「ふふふ」


思わず笑い声が漏れてしまう。


「な、何がおかしい?!王国人?!」


「これだけハンデを与えてやっても傷1つつけられないんだな、お前ら」


俺は騎士達ひとりひとりに目をやった、そのときだった。


セイレーンが声を出した。


「私の大地様に手を出すなんて、あなたたち覚悟は出来ているのですね?大地様、このような不届き者は全員殺しても構いません。むしろ殺すべきです」


俺は首を横に振った。


この人、中々過激な皇女様のようである。


「俺に斬りかかったやつ、ここで謝れば追撃はせん。それは約束しよう。本当は自分の意思じゃないんだろう?」


騎士たちは顔を見合わせて相談し合っていた。


その結果、カランカランカランカラン。


ヴァイス以外の兵士が武器と装備を落とした。


「勝てるわけねぇ」

「なんなんだよ、この化け物はっ?!」

「ひぃぃぃぃ!!!俺だけはお助けをぉぉぉぉ!!!」



ヴァイスの顔が真っ青になった。


「き、貴様ら裏切るのか?!」


俺はヴァイスの胸ぐらに手を伸ばした。


甲冑に手を触れた瞬間ヴァイスは言った。


「甲冑を外すつもりか?!」


拳で甲冑を砕いて中のインナーを掴んだ。


「なっ?!防御力900の世界最高級のミスリルの防具だぞ?!」


ザワザワ。


「すごいぞ大地様!」

「あんなお力を持っていながら、劣勢の帝国に味方してくださったのか?!ヴァイスは消えろ!」

「大地様ばんざい!死ねヴァイス!」


周りは俺の味方なようだ。


どうやら今の嫌味は完全にこいつら騎士たちの暴走だったようだ。


「ヴァイスよ。聞いてやろう。俺たちの結婚式を邪魔しようとした理由はなんだ?」


だいたい分かるけど。


俺が王国人だからなんとしても結婚を辞めさせようとしたのだろう。


敵国の人間が自国のトップと結婚しようとしていることを見れば普通のやつはたしかに怪訝に思うだろうな。


気持ちは分かる。


「ヴァイス、俺は確かに王国軍所属の兵士だったが、王国人ではない」


「なに?!」


「だから王国の文句を言われても俺は知らないんだよ。お門違い、言葉の意味は分かる?」



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