幼馴染が俺の部屋をラブホ代わりに使って浮気していた件について。

サドガワイツキ

第1話 俺の幼馴染が俺の部屋をラブホ代わりに使っていた件について(前)


―――最初はふとした違和感からだった。


 朝出掛けた時と掛け布団の置き方が違ったよあちな気がした事。そして部屋の中に微妙に残るすえた臭い。これに関しては童貞男子高校生の部屋だと思えばまぁそういうものなのかもしれないと思うことにして、最初は気にしなかった。俺も賢者タイムするし。


 そして幼馴染で恋人でもある岡島なのみの付き合いが悪くなった事も重なっていた事もあった。

 俺となのみは幼稚園の頃からの幼馴染で、家同士も近所でお互いの家を行き来したりすることもある。なのみのお父さんがなのみを溺愛していることもあり、“そういう事”は大人になって結婚してからと口酸っぱく言い含められていたので恋人同士では会ってもそういう事はせずに健全なお付き合いをしていたので、俺は彼女在り高校二年生であっても今だ童貞という訳である。


 今日も今日とてなのみに放課後にお茶をする誘いを断られたので部屋に帰ってきたが、今回は少しばかり事情が違った。仲の良い友人に部屋の様子が違う気がする、という相談をしたら持っていた据え置き型の隠しカメラを貸してくれたので、俺はそれを部屋に設置することにしたのだ。ストーカーとかだったら怖いですよ!!という心配からで半信半疑とはいえ友人の厚意に甘えることにしたのだ。


 俺の家は両親共働きで、おかげさまでそれなりに裕福な暮らしと不自由しない程度のお小遣いをもらっているのでそこは感謝しているし、そのおかげでか子供のころから炊事洗濯等家事をしていたので家事スキルが一通り見についたのも結果オーライだ……なんてことを考えつつもカメラを設置して数日後……謎は全て解けた。


 ――――幼馴染のなのみが、俺の部屋に男を連れ込んでやがった。


 最初見た時は目を疑ったが、どうみてもなのみだし連れ込まれている相手はサッカー部3年の林間(はやしま)だな。イケメンで女子に人気があるとは聞いていたけど、それがまさかなのみと浮気ハメをしているだなんて。その映像を視た時、俺は耐え切れずにゴミ箱の中にゲロをぶちまけた。カメラの中で痴態を見せる幼馴染、恋人、“だった”その女はもう、酷く汚らわしい物体にしか見えず、怒り、悔しさ、やるせなさ、絶望、とにかくネガティブな負の感情が際限なく湧き上がってくる。俺はあの裏切り者にどう落とし前をつけるか悩んだが、証拠をPCとスマホに保管した後、再度カメラを元に戻した。

 随分と手慣れた感じで俺の部屋に入ってきてベッドの上でヤって帰っていっていたから、これが初めてじゃない。証拠をもっと押さえてやる。


 カメラを貸してくれた友達に恥を忍んで詳細を話すと、我が事のように怒りながら追加のカメラを貸してくれた。屋外でも使える防滴タイプのもので玄関にはじまり、廊下、そして俺の部屋用の追加カメラだ。それらを設置するときは陰鬱な気持ちだったが、しっかりと証拠を揃えるために心を殺して設置したが、設置し終わった時には俺はなにをやっているんだろうと哀しみと悔しさで涙が止まらなかった。


 そしてそんな間もなのみは俺にバレていることを知らず、いつもと変わらない態度で接してきた。明るく朗らかで人当たりが良い人気者。2年になってから友達に誘われる形でサッカー部のマネージャーになったが、もしかしたらその時から浮気をしていたのかもしれない……今更だが。

 表面上は涙を隠し感情を殺し、極力今までと変わらない態度で接していたがそんな俺の異変にもなのみはまったく気づくそぶりを見せなかった。

 長い付き合いだからこそ、よくみていればバレてしまうであろう隠しきれない負の感情と態度にも気づかず、あぁ、こいつはもう俺の異変や変化に気づかないほどに俺への興味を失っているんだなと落胆をした。


 そしてその後もなのみは俺の部屋をヤリ部屋、ラブホ代わりに使って林間と元気にサカっていた。その記録が2回ほど貯まったところで、俺は記録映像と共に両親に詳細を打ち明けた。親父は絶対に許さん、と静かに怒り、母さんは静かにあの家と断交はさておいても民事刑事で訴えないといけないわね、と映像を持って警察署に相談に行くと言っていた。訴える、訴えるってシャバいおどしではなく訴えたならいっても良いと語る母さんからは、女子大生にしかみえないと言われる若さと柔和な態度とは違う『スゴ味』があった。

 もはや俺の両親にとってもなのみは俺の幼馴染ではなく、無断で家に侵入してラブホがわりにつかう不法侵入者でしかないのだ。


 ―――そして警察の相談の中で、林間が俺の部屋に在るマンガ本やゲームソフトをを盗んでいるシーンも保存されていた。音声で、なのみが「持っていっちゃえ」と言っている所もしっかりと残っていたのだ。

 まともな状態なら気づいただろうが、なのみの事でいっぱいだったのとメンタルがやられていたのでマンガやゲームがいくつかなくなっても気づかなかった。


 証拠を提出し、警察にも窃盗で訴える旨を申し入れ被害届は受理された。俺は涙を流し、くやしさに歯噛みしながら厳罰をお願いしますと訴えた。そして被害届は絶対に取り下げない、早島と、なのみは絶対に許さないと訴えた。


 それから、岡島の家の4人、岡島の両親、なのみ、そしてひとつ年下の妹であるこのみちゃんの4人を呼びつけた。お互いの家の今後に関わる事だから申し訳ないが一家全員で来てほしいという事で呼びつけた。

 ……ちなみにこの話し合いには、他県の大学に通っているうちの姉さんも戻ってきた。

 姉さんはなのみもこのみちゃんもどちらも妹のようにかわいがっており、それ故になのみが俺を裏切って寝取られていたことを聞いたときにはその日のうちに実家にとんぼ返りしてきていて、格闘漫画の住人かとでもいうほどに顔面に血管を浮かび上がらせていた。ビギッ……ビキキッ……!!と修羅の形相をしている我が姉はミディアムヘアの似合う清楚可憐な次代のミスキャンパス候補、なんていわれてるみたいだけど、今此処にいるのはただの阿修羅すら凌駕するナニカだった。


 そして俺の両親と姉さん、俺、対して岡島の家からなのみの両親、なのみ、このみちゃんと総勢8名が俺の家のリビング集まる事になった。

 岡島の家の人達も何か俺となのみとの関係の事だろうかくらいに思っているようで気楽なもので、うちの家族も内面の怒りを押し殺しながら岡島の家を迎え入れていた。


 ……よぉ、なのみ。お前地獄に堕ちる時間だぜ。

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