第7話 武器の調達
城門前。
食後、俺はここで待っておけと女王様から言われた。
ベルリオーネさんにこれから城下町の案内と装備品の調達をしてもらえるらしい。
さらに一緒に旅する仲間を引き入れられる酒場みたいな場所があるらしく、そこにも行くことになった。
何でも女王様がお金から仲間の雇用に関する伝手まで全部便宜を図ってくれると執事の方が伝えてくれた。
街並みはテンプレートのような中世ヨーロッパ風の石造りの建物に中央の目抜き通りと広場には多くの店と、粗末なホロ布で出来た屋根のもとで商売する露天が並ぶ。
人は多く、格好はまさにファンタジー世界の住人のスタイルで、粗末な布で出来た服とか、甲冑で歩く騎士なのか戦士みたいなのも結構いる。
旅人なのか城で雇用されている兵士なのかは分からぬ。
気になることは物は多く野菜や果物、肉や魚などの食料も豊富に売られているが、やたら物乞いも多いという点だ。
さらに、驚いたことは人間ではない存在も同じように服を着て歩いている奴らがいたことだ。
「なあ、ベルリオーネさん。何でここには魔物というかモンスターが堂々と歩いているんだ?」
「ああ、彼らはモンスターと言っても穏健派ですのでもめ事を起こさない限り城下町に入ることが許可されているんですよ」
「我が女王陛下は心がお広いお方です。人間と共存していく路線をとっているモンスターなどとはこうして貿易などを通して交流が盛んなんですよ」
フム、それならいいんだが・・・。
俺は町を2人で目的地である武器防具屋へと向かう途中、恐らくオークと言われる醜い顔つきの種族のオスのグループとすれ違った。
連中の目つきは悪く、周囲をやたら警戒しているようだった。
そして、何よりも年端も行かぬ耳の長い少女を数名連れているのが引っかかったが・・・・。
そうこうしているうちに目的地の武器防具屋にたどり着いた。
石造りの自社ビルのような5階建ての立派な建物すべてが店である。
入り口には“ハイン王国王室御用達”の文言と王室の紋章入りの金属製銘版が誇らしげに飾られている。
俺たちはまずは目的の武器を最初に吟味するべく、3階の武器展示室へと階段を上がっていく。
日本の中型のデパートともそれほど変わらない頑丈な作りの建物は確かに王室御用達と名乗るだけある。
3階に着くと、剣は鞘に入った状態でガンラックの様な木製の台に丁度傘立てに掛けられるように入れられて並んでいた。
壁には抜き身の各種刀剣や槍が並び、中には鉄の鉤爪や、ベルリオーネが持つような鉄製の魔法使いようの杖のような武器も掛けてある。
ざっと店内を見て回ったところ、品物は刃渡り65センチから80センチくらいまでの長さの西洋式両刃剣が最も多く、次いで細身で主に刺突に適した直刀のレイピア、日本刀と同じく反りのある湾刀で騎兵が馬上で扱いやすいよう片手で斬り下ろす攻撃に適したサーベルなどがある。
中には1メートルを超える長剣もある。
だが、俺はあまり長すぎる剣は好みではない。
周囲に障害物がない平野では威力を発揮するが、携行性に難がある上、森や室内、洞窟では壁や天井に阻まれて使いにくい。
ある程度様々な戦場を想定するなら刃渡りは日本刀でいえば刃渡り65センチから68センチくらいがバランス的によい。
もしそれでも振り回したりしにくいならもう一本より小型の刃物を携行するか、別のコンパクトな武器を携行する方が合理的だ。
そう考えると2本差しと言って打刀と脇差を携行していた武士の在り方は、剣だけで戦う場面を想定という制約はあるが、合理的な選択と言える。
そんなことを考えながら店内を見ていくと、他の武器とはあきらかに異質な雰囲気の剣が数本あるのを見つけた。
俺はそのうちの中で特に気になったのを手に取り、鞘からゆっくりと引き抜いて刀身を見る。
剣のハンドガードの中心には青い宝玉のようなものが埋め込まれていて、柄は紺色、刀身は青みがかった凄みのある剣だった。
他にも同類の剣が数本あった。
「ベルリオーネさん。この剣は他の剣と何か違うと思うんだが?」
「ああ、これは“アークティスクリンゲ“という剣で、魔法が封じ込めてある武器なんです」
「これは氷属性の魔法が封じられていて、魔力を持たない持ち主であっても念じるだけで攻撃魔法を放てるんです」
「魔力が込められているこの手の武器とか防具は貴重なので割と値段は高いんですよ」
「けれどほしいのでしたらお金はありますからほしいのでしたら購入していただいて結構ですよ」
「それにこの手の武器とか道具が高い理由はそれだけじゃないんです」
「というと?」
「特定の魔導士が製造に協力した大量生産品は別ですが、神代(かみよ)の時代から伝えられるレベルの武器とかからは魔力の波長を特定することが困難なんです」
「魔力の波長とは?」
「我々魔法を使う者にはそれぞれに固有の波長があります。だから、魔法を使用すると、その場に残された魔力の波長を調べれば魔法を使った人間やモンスターを特定することが可能なんです」
「ということは、魔法で何か悪さをした奴とかを追跡できるということか?」
「まあ、そう言うことですね」
「そんなわけで匿名で攻撃魔法を放てる、つまり暗殺などに適しているため悪用をできるだけ防ぐためにおいそれと買えない値段にしてあるって言うわけです」
「大量生産品の分を作っているのは魔導士なのか?」
「人間が作っているのはそうです。鍛冶屋が鍛えたりした武器等に魔力を込める作業をして完成します」
「ただ、製造に関わった魔導士を特定はできますが、やはりそれを使用した本人を特定するのは難しいんです」
銃器の旋条痕と同じ理屈か・・・・・。
何かの役に立つ知識やもしれぬ。
覚えておこう。
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