第4話 魔導士との打撃戦


そこにはベルリオーネさんが立っていた。


彼女は先ほどの正装姿のまま。


そして、銀色の杖を構えている。


俺がなぜ身構えているのか聞こうとする間もなく・・・。


いきなり襲い掛かってきた!!


俺はとっさにかわす。


斜め横から振り下ろされた金属製と思われる杖が鈍い音を立てて床にめり込んだ!!


ギーンッ!!という鈍く振動するような金属音から、直撃したらもちろん、下手に受ければ骨が折れることはすぐに頭の中で理解できた。


この女、本性を現したというのか?


にしても、魔導士と言いながら魔法ではなく物理的な打撃攻撃とはどういうことだ?


「ちょっと、待ってくれよ!!」


一応、話し合いによる交渉をまず試す。


彼女の厳しい表情と間合いを詰めてからの杖による打撃攻撃は終わらない。


次々に繰り出される杖による打撃の動きはなかなかで、武道系の動画で見た棒術の動きに近い。


時折床に叩きつけられると、めり込むほどの威力がある。


大振りとはいえ本気の意志が伝わってくる衝撃が来る以上、交渉の余地はないようだ。


俺はわざと左右に移動し、彼女の集中力をそらせるように謀る。


俺は寝間着と首から掛けたタオル以外に身につけている物がない。


当然周囲に武器もない。


ならば!


俺は周囲の床や壁を一瞬だけ見まわした。


すると部屋の中で2か所、漆喰で塗り固めたような跡がある壁があった。


これだけ古い城ならどこかにあると思ったがやってみるか!


俺は気づかれないよう移動しながら彼女を誘導し、俺の後ろに漆喰跡が残る壁を背にした。


「追い詰めましたよ、スドウ!!」


俺は大上段から振りかぶってくる。


俺は振り下ろされる瞬間、タオルを彼女の顔に投げつけた。


空気抵抗を受けて宙を舞うタオルで彼女の視界が一瞬奪われた。


「子供だましを!!!」


そのまま振り下ろした先には彼の姿はなく、そのまま漆喰の壁を杖はぶち破った。


「彼は!?」


「ここだ!」


俺は彼女の横に移動しつかみかかる。


彼女は杖を横なぎにしようとするも、壁に引っかかってわずかだが引き抜くのが遅れた。


俺は彼女に右掌底突きの要領で顎を抑え、同時に足払いをかけた。


後ろ手に転倒するベルリオーネ。


壁に後頭部を打ち付ける前に俺は左手で彼女の背中付近を抱えるようにして止めた。


「いったいどういうつもりなんだ、ベルリオーネさん!?」


体を俺に抱えられたまま、彼女の表情から緊張感が消えていく。


「ふう・・・・、やはり、あなたはすごい」


「勇者クラスとだけあって、戦闘経験はなさそうなのにその動き、私の攻撃に対する返し方は見事です」


「どういうことだ、ベルリオーネさん!!いきなり金属の棒で襲い掛かってくるなんて!?」


「そして何より、魔力を封じて戦っていたとはいえ、私の間合いにいとも簡単に入り込んでくる距離感と、私の心の迷いを見抜く洞察力」


人の話を聞いていない・・・・・・。


「よかったあ!!私、すごい子を召喚出来ちゃった♬」


いきなり金属の杖を振り回してきたベルリオーネに驚いた。


恐らく魔法の杖とはいえ金属製。


打撃系の武器として使えば床にめり込んだ感じを見ても威力はそれなりにある。


直撃してれば間違いなく骨に最低でもひびは入っただろう。


んな危なっかしいことをいきなりしてきて妙に能天気な態度。


クールなようで結構おちゃらけた性格なのか・・・・この人・・・・?


ただ、攻撃自体は正直、間合いを取って左右に動いて的を絞らせなければそれほどかわすのは苦にならなかった。


部屋が広くて動き回りやすかったことも幸いした。


しかし、おそらく姿かたちからして打撃攻撃を本業ではないせいか、あるいは手加減していたのか袈裟斬りの要領で振り回してくる金属杖の軌道は大振りだったから見切るのは容易(たやす)かったのが幸いだった。


多分この人が取得しているであろう魔法と同時に本気で攻撃して来られたら間違いなく俺は仕留められていたから、魔力を封じていたという弁明は嘘ではないようだ。


彼女は俺に抱えられている体勢から勢いよく起き上がった。


「や・・・やはり・・・あなたが初めての契約の相手で・・・・よ・・・よかった・・・です!」


彼女の顔が妙に赤くなっていく。


すると彼女は白い魔女帽を両手で脱いでそれを空高く放り投げた。


それは天井に届く前に光となって消えた。


手品か!?と思うような華麗さに俺は見とれた。


同時に彼女、その場で服を脱ぎ始める!


「てっ!!!???ちょっとまてええええええええっっっっ!!!!!!!!!!!!!」


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