第2話 幻想世界ルミナバール
「・・・エ。ヒョウエ。起きてください」
誰だ?
夢の中なのか?
ここはどこだ?
俺は目をゆっくりと空けていく。
覚ますとそこは・・・・・。
なんだ!?
手で触れた感じと、かすんだ目に飛び込んできた映像の感じからして床は石造り。
そして深紅のじゅうたんの上に俺は寝ていた。
痛っ!!
上半身を起こすと、頭がくらくらした。
そう言えば俺は電車に轢かれて・・・・。あれからどうなったんだ!?
「目が覚めましたね、スドウ・ヒョウエ」
「えっ、どちら様でしょうか?」
俺は反射的に声がする方を振り返りながら返答していた。
「わたくしはミレオール・ハイン。この地域を治める領主です」
目の前に立派な玉座に座った色白の物凄くきれいな人がいる。
頭痛をこらえて周囲を見回すと、そこは一般の日本人が想像するであろう豪華絢爛なヨーロッパのお城そのものだった。
深紅のじゅうたんや豪華絢爛なシャンデリア、それに金銀の細工が施された壁一面に備え付けられた彫刻の数々。
俺はふと広間の両サイドにある大きな鏡を見た。
そこに映し出されている自分の姿を見て驚愕した。
「えええええええ!!!!!!!!!!!!!!」
気が付くと自分の体が何か違う。
確か学ランを着てたはずなのに、なんか・・・なんていえばいいんだ・・・・。
自分でも着ている服装を疑った。
大昔の服・・・というか、大昔のヨーロッパの貴族のそれっぽいのを着ている。
“どういうことだ?”
俺は自身に起きていることが理解できずにいた。
「ようこそ我が居城へ。そしてようこそ、幻想世界ルミナバールへ」
“日本語に堪能だ”
どう見ても金髪碧眼の大学生くらいのすごい西洋の美人さんなのにネイティブ級の日本語を流ちょうに話す。
“一体何者なんだこの人?“
「ベルリオーネ、召喚の儀は無事成功したようですね」
「はい、女王様」
その人がベルリオーネと呼んだ人物は玉座の横に立っていた。
古典的な魔法使いというか、ハロウィンで被る白っぽい魔女の帽子を被り、帽子とおそろいの色合いのマントに茶色のロングブーツを履いた女性がいる。
年齢は俺より少し上くらい、高校1年くらいかな・・・。
黒髪のセミロングで雰囲気は玉座の女性より日本人の感じに近い感じ・・・。
おまけに金属でできていると考えられる杖を持っている。
先端には大きな赤い水晶なのかが埋め込まれている。
なんか俺がやってきたロールプレイングゲームに出てきそうなキャラクターだなと、ふと思った。
「初めまして、私の名はマリー・ベルリオーネ」
この女の子もまた日本語がナチュラルだ。
そのあどけなさが残る少女は女王と呼ばれた玉座の人に代わって俺に説明を始めた。
「今回、私は女王様の命に従いあなたをこの世界に召喚いたしました」
「えっ、どういうこと!?」
「あなたにこの世界を救っていただきたいのです」
「私、この世界とは別に存在するであろう複数の世界から転生者を召喚する儀式を行っていたんです」
「魔法?まさかあのゲーム、あ、いや呪文みたいなあれの事?」
いきなりRPGのワードを出してくる彼女に俺は一瞬拍子抜けした顔をしたと思う。
俺はとりあえず何の魔法を唱えたのか聞いてみる。
「それで魔法使いさん、一体何の魔法を唱えたんだ?そして、なぜ俺をここに召喚したんだ?そして、世界を救うって何のことだ?」
ベルリオーネという少女は一息ついた後、よりかしこまった顔つきになった。
「私が詠唱した魔法とは“リンカーネーションスカウト”」
「これは別の世界で事故に遭ったりして不慮の死を迎えた人間の無念の魂を救済するよう祈ることで、ずば抜けた資質を持つ者の魂をこっちの世界に転生召喚させることができる私の特殊スキルの一つです」
「けど、私、まだ未熟なところがあって・・・、他の皆さんがすぐに成功する中で失敗ばっかりで魔導士の資格試験に合格したのに一度も召喚できなくて・・・・、今回やっと152回目で成功したんです」
「そしてやっと召喚できたのがあなたです。栄えある最初の人です」
他の皆さん・・?
彼女の他にも魔法使いみたいな人がいるのか・・・・。
まあこれだけ大きな城ならそりゃいるだろうな。
「けど・・・・、成功してうれしいような・・・・、やっぱり・・・・やだな・・・て・・感じも・・・・」
?
何を言ってんだこの子?
いまいち話の内容が分かるようでわからん。
そんなことを頭の中でめぐらせているところに顔を変に赤らめたベルリオーネと呼ばれる少女の大きな声が飛び込んできた。
「それではスドウさん!一応確認ということ・・・・、じゃなかった!!もうもうそうじゃなくて・・・・・!!!!」
「いったいどうしたんだそんなに慌てて?」
ベルリオーネという少女は顔を真っ赤にして両手をジタバタ慌てている。
古典的なあわてんぼうの少女という感じに見えた。
「そうじゃなくてー!!!意識を集中して目の前に念じてください!それからステータスって言ってみてください!!」
「えっどういうこと!?」
「今のあなたの魔法力などの各種ステータスが表示されます」
俺はややためらいながらも言われるままに念じてみた。
「ステータス!!」
体から何か湧き上がる何かを感じる!
けど、目の前に魔法陣みたいなものがいきなり出てきたがそれ以外出てこない。
何かもっと言うことがある感じが無意識にした。
「ええとそれからなんて言うの!?」
「ああ、言うの忘れてた!!!オープン、オープン!!ステータスオープンと言ってください!!!」
俺は言われるままに言う。
「ステータスオープン!!!」
すると魔法陣の中から光のボードがさらに表示される。
・ヒョウエ・スドウ
年齢15歳
クラス:勇者
・攻撃力:30
・防御力:32
・すばやさ:40
・運の良さ:150
特殊スキル:Lv10
属性:オールラウンダー
炎属性魔法:フレイムボール
水属性魔法:ハイドロレイン
電撃属性魔法:サンダーファイヤー
氷属性魔法:ブリザードスピアー
光属性魔法:フラッシュバム
闇属性魔法:ダークメテオ
目の前の魔法陣から表示されるまさにゲームのステータスの表示。
完全にRPGの世界じゃないか!?
それを遠目で見た女王様が俺に向かって歓喜の声を上げた。
「すごいですわスドウ!!勇者クラスの人材は数千人以上の召喚者のなかであなたが5人目です!!」
「ベルリオーネ!!レベルが上がりましたね!!これも日ごろの修行の成果、しかと見届けましたよ!!」
「ありがとうございます、女王陛下!!」
「なあ、ところでどういうことなんだよ!?俺にこの世界を救えって!?」
「いきなりの出来事で申し訳ございません。今日はもうすぐ夜ですし、詳しい事情は明日、ゆっくりお話しいたします。今日は別世界から転生しての初日。いきなりの出来事ばかりでお疲れのことと思います。今日はゆっくりお休みください」
「ええ、はっ、はあ・・・?」
そう言われて俺はベルリオーネ及び従者と思しきメイドさんの服を着た女性2名と執事の服を着た男性1名に連れられて玉座の間から退出する。
そして、自分用にと用意された部屋へと案内された。
玉座の間には一人残った女王はささやいた。
「術者との契約前にもかかわらず、既にあれだけのステータスを持っているとは・・・」
「中でも運の良さがかなりのもの・・・。まあ、妙なことにならないといいけど・・・・」
鏡に映った女王の横顔からは先ほどまでの柔和さが消え、陰のある能面のような表情が映し出されていた。
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