お買い物

 夏に向けてお洋服を一新したいと思ったので、今日は洋服屋さんでショッピングをしています。


「このワンピース、可愛いですね。うーん、青色にするか緑色にするか……悩みますね」


 緑色のワンピースは私好みのシンプルでスッキリしたデザイン。青色のはちょっと派手で私には合わなさそうなんですよね。でも色合いは青色の方が好きですし……。

 取り敢えず一度着てみてから判断しようと試着室へ向かうと、そこには見知った顔が。


「あ、桃さんじゃないですか。こんにちは」


「久美先生、こんにちは~。わあ、こんなところで会うなんて奇遇ですね~。先生もお買い物ですか~?」


 桃さんがいました。私服姿の桃さんを見るのは初めてですが、とってもお洒落で可愛いです! 桃さんは優しくっておっとりしてて、まるでお母さんのような雰囲気の女の子です。

 そんな彼女が私服を着ていると、溢れんばかりの慈愛のオーラが増強されて、まるで聖女のように見えます!

 良い物が見れました、今日は素晴らしい日です。


「はい、お買い物中です。前の夏服が古くなっちゃったので、新しいのを買おうと思ったんです。あ、それと『先生』じゃなくていいですよ。私たちは同級生でありクラスメイトなんですから、タメ口で大丈夫です」


「そう? それじゃあお言葉に甘えてタメ口にするね~。でも久美先生は久美先生だよ、だって『先生』って感じだし~」


「そ、そうですかね?」


「はい! あ、ひょっとしてそれを買うんですか~? 先生は大人ぽいのでどんなものでも似合いそう~」


「そ、そうですかね? えっと、これはどっちにしようか悩んでて……。色だけでいうと青色の方が好きなのですが、ちょっと私には派手過ぎるかなーって。どう思います?」


 大人っぽい? 私が?

 うーん、言われてみるとそうかもしれません。私は学生ですが同時に社会人でもあります。自分でお金を稼ぎ、それを好きなように使う。そんな生活をしていると、自然と価値観が高校生のそれとは離れてしまうのかもしれません。


 おっと話がそれました、今はどの服を選ぶか悩んでいる最中でしたね。私は手に持ったワンピースを桃さんに見せながら、どっちが良いと思うか尋ねました。

 自分で見るのと他人ひとから見られるのでは印象が全然違いますからね。


「そうかな~? 先生はこういう可愛い服も着こなせると思うけどな~。でもそれならくつかばんもそれに合わせないと~」


「靴と鞄も、ですか?」


「そうだよ~! コーディネートは全身で作る物だから~。予算はどれくらいを考えてるの~?」


「えーっと、そうですね。特に制限はないですけど、無駄に高いブランド品とかはちょっと……って感じです」


 整備士としてそれなりに稼いでいますので出し惜しみするつもりはないですが、お金持ち自慢するつもりはないので、ブランド品は遠慮したいですね。


「りょうかいだよ~。ちょっと待っててね~」


 そう言い残して桃さんはトタタターっと走っていきました。店員さんと何かを話してから笑顔で帰ってきました。


「合いそうなバッグとサンダル、借りてきたよ~。これに履き替えた上で、こっちの青のワンピースを着てみて!」


「あ、ありがとうございます。じゃあ着てきますね」


 奨められるがままに着替えました。着替え終わってから、鏡で自分の姿を見てみますが……似合ってますかね? 私には合ってない気がしますが……。


「着替え終わった~?」


「はい、こんな感じで……。あんまり似合ってないですよね」


「あ~バッグはそうじゃなくて、こんな風に持つの。ワンピースは確かにサイズがあってないかな~。一つ小さいサイズを探してくるね~。――あった~! はい、こっちに着替えて」


「は、はい。わざわざありがとうございます」


「いえいえ~」


 ワンピースを着替えて鞄の持ち方を変えて……。こんな感じでしょうか?

 確かにさっきよりも似合ってる気がします!


「どうでしょうか?」


「おお~! とっても似合ってるね、可愛いよ~!」


「そ、そうでしょうか?」


「うん! 一応他のも試してみよっか」


 その後も色々なコーディネートを試しましたが、結局一番最初のが一番似合ってると思いました。早速ワンピースを購入し、靴と鞄もそれに合わせて買いました!

 ふと時間を確認すると、もうお昼になっていました。お腹が空いて来ましたね、せっかくなので桃さんを誘って何か食べましょうか。


「色々アドバイスに乗ってくれてありがとうございました、おかげでいい買い物が出来ました! あの、よかったらお昼一緒に食べませんか? もちろん奢りますよ」


「喜んでくれたならよかった~。ご飯は一緒に行きたいけど、奢らなくてもいいよ~」


「いやいや、先生なんだから生徒に奢るのは当然です!」


「う~ん、そんな風に言われたら断りにくいよ~。それじゃあごちそうになります、先生」


 こうして私たちはお昼ご飯を一緒に食べることになりました。


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