メカ系魔法少女の百合を堪能する為に私は整備士になりました!

青羽真

私は転生者

 はじめまして、白鷺久美と申します。突然ですが私、異世界に転生しちゃったみたいです!


 どうしてここが元いた世界ではないと言えるのか、その根拠は……アレです。テレビで流れているニュースを見て下さい。


『〇〇町の沖にγ級の悪意の機械マリスマシンが出現し、魔法少女部隊によって討伐されました』


 アナウンサーがニュースを読む背後では、巨大ロボットと戦う女の子が映っています。

 女の子らはロボットスーツを着ていて、空中を縦横無尽に飛びながら、巨大ロボットに攻撃を仕掛けています。


 これがこの世界の日常なんです。そう、この世界ではメカ系魔法少女が実在するんです!

 みなさん可愛くって強くって……。もう最高としか言いようがありません!



 ですが、これだけだと異世界とは断定できませんよね? もしかしたら近未来の世界かもしれません。

 ですが、私はここが異世界と断言しています。その理由は……


『魔法少女の皆さんにインタビューしてみましょう。凄い活躍でしたね!』


『ありがとうございます! ミサキちゃんと一緒だったから、頑張れました!』

『もー/// そんな恥ずかしい事言わないでよ~///』


『あはは、お二人の仲は相変わらずですね。確かご婚約されているんですよね』


『『はい』』


 この世界では、魔法少女同士が百合百合恋愛して結婚するんです!

 というか、この世界には男性が全く存在しないんです。異性という概念すら存在しません。



 明らかに元の世界とは違います。ここで私はピンときましたよ。


 ――これってマンガか何かの世界ですね!


 何故か女の子しか登場しない漫画、ありますよね? 何故か男が全く登場しないアニメ、ありますよね?

 そうです! おそらくこの世界は、そういうたぐいの世界なんです!!


 この世界は百合な世界なんですよ! 間男が邪魔することもあり得ないので安心して暮らせる点も高評価。

 あっちを見てもこっちを見ても、女の子に恋する女の子がいる世界。最高ですね!!



 せっかくこんな世界に来れたので、私は魔法少女の百合を間近で見たいと思いました! しかし、困ったことに私には体力がありませんでした。魔法少女になんて到底なれなさそうで……。

 しかし、そんな私にもチャンスがあったのです! なんと、勉強さえできたら「整備士」という形で魔法少女養成学校に行くことができるそうです!

 だから私は必死に勉強しました。ちょっと頑張りすぎて大事になったりもしましたが、無事魔法少女養成学校に入る事が出来ました!


 そんな訳で今日も私は教室の隅で技術書で顔を隠しながらチラチラと女の子達を観ています。物語の主人公だからかびっくりするほど可愛らしい女の子達が和気あいあいと話しています。ふ、ふつくしい……!


 えっ? 混ざらなくていいのかって? そんな烏滸がましい事出来ませんよ! だって、この世界はメカ系魔法少女が活躍する世界なんです。そんな世界で整備士をやっている私はただのモブです。こうして眺めていられるだけで光栄な事なんです……!



 まずは教室の前の方に目を向けてみましょう。そこでは三人の女の子がワイワイと話していました。


「おはようございます。ちょっと、アヤメさん。ここは学校ですよ、制服はきちんと着なさい」


「げっ! 瀬奈せなっちが来た!」


「『げっ』とは何ですか、失礼な」


「だってぇー、瀬奈っち最近厳しいんだもん!」


 水瀬みなせアヤメさんは髪を茶色に染めていて、可愛らしいアクセサリーを身に着けている華やかな女の子です。ギャルとまでは言えないですが、垢ぬけた大学生って感じですかね。

 いつも制服を着崩していて、ちょっと色っぽいです。もう少し近くで見てみたいです……。


 瑞樹みずき瀬奈せなさんは真面目で清楚って言葉が似合う美少女です。容姿端麗、成績優秀、魔法少女としてもかなり強い。そんな彼女は先生方からの信頼も厚く、このクラスの委員長をしています。

 最近、アヤメさんの格好を注意するようになりました。


 正確が両極端で馬が合わなさそうな二人。ですが、実は結構仲がいいんですよ。ほら!


「もー。瀬奈っちが意識し過ぎなんだよ。ほれほれー」

「ちょ?! アヤメさん、そういうのは破廉恥です!」


 アヤメさんは自分の制服の胸元を引っ張り、大きく魅力的なお胸を瀬奈さんに見せつけます。そんなアヤメさんの行動にビックリしたのか、瀬奈さんは咄嗟位に両手で眼を覆いました。

 だけど、指の隙間からジーっと胸元を凝視していますね。


「あー、瀬奈っちめっちゃ見てるじゃんー。瀬奈っちのスケベー!」


「ちょ! ち、違います! 違うんです!」


「違うの? じゃあもう見せないー」


「そ、それでいいですわよ。あ、あんな行動、はしたないですわ」


「あはは! 口調が変なことになってるのは名残惜しいからかな? もー! ヘ・ン・タ・イ!」


「むむむぅ……!」


 瀬奈さんって見た目は清楚って感じなのですが、実は結構ムッツリなんですよね。そんなギャップがとても可愛らしく、いつもアヤメさんからこうして揶揄からかわれています。


 委員長キャラ(←実はムッツリ)とギャルの百合。いいですね、いいですね! とってもいいですね!

 今日も朝から百合を沢山摂取出来ました~! はぁ、はぁ、じゅるり。おっといけない。はしたない所を見せてしまいました。

 おや。そうこうしていると、瀬奈さんがもう一人の女の子に声をかけました。


「も、桃さんからも注意して下さい!」


「う~ん。登校中や授業中ならまだしも、休み時間くらいどんな格好でもいいんじゃないかな~?」


「も、桃さんまで……」


「そうだよねー! やっぱり桃っちは分かってるぅー」


「わわわ~? はい、よ~しよし」


 小倉桃おぐらももさんはおっとりした女の子。お母さんって言葉が似あう女の子です。抱き着いてきたアヤメさんを受け止め、よしよしとなでてあげています。


 はわわわ~! おっとり系の女の子とギャルの百合。これも素晴らしい物があります。そして抱き合う二人を瀬奈さんが羨ましそうに見ています。こういうのも良いです!


 はぁ、はぁ、良い! とっても良いです! はぁ、はぁ(←過呼吸)



 ふぅ。このままだと過換気症候群で呼吸性アルカローシスになって倒れちゃうかもしれません。心を落ち着けるために窓の方を見てみましょう。そこでも三人の女の子が話していました。


「朝日があったかい……」


「文香ちゃんおねむなの? 毛布、かけてあげるね」


「あったかいの相乗効果だね……Zzzzz」


 毛布にくるまってスヤスヤしているのは春風はるかぜ文香ふみかさん。いつもぽやぽやしていて、なんだか世話を焼きたくなる可愛さがあります。

 そんな彼女に毛布を掛けたのが涼宮すずみや美香みかさん。二人は幼馴染だそうです。


 幼馴染同士の穏やかな百合……素晴らしいです。私の心は浄化されました。


 そんな二人の空間にちょっとしたスパイスを入れる女の子がいます。それがみどりさん、彼女も二人の幼馴染だそうです。


「お前、なんで毛布を常備してるんだよ……」


「そりゃあ、文香ちゃんがいつだって気持ちよく寝られるようにする為だよ」


「気持ちよく? 寝る? もしかして媚薬でも染み込ませてるのか!」


「そんな訳ないでしょ?! どーして翠はいつもそういう発想になるのよ……」


 美月みつきみどりさんは、なんというかエロガキって感じの女の子です。今日のはまだマシですね、いつもはもう少しドギツい下ネタを言っています。

 そんな翠さん、実はとても頭が良いです。委員長と肩を並べるくらいの優秀さです。ですが普段が「こう」なので、先生からの評価はイマイチみたいです。



 いろんなタイプの女の子が百合百合する世界……! 最高です!

 私、この世界に転生して本当によかった……!



 これからも技術書を読むフリをしながら、百合の観察に励もうと思います!


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