第2話「魔女とほうき」

…チュンチュン


…ん?ああ、朝か。結衣は起き上がる。そういえば昨日はウルウが現れて大変だったなあ。どういう魔女なんだろ?


だいたい魔女というと良いイメージと悪いイメージの差が激しい。ウルウは恐らく良い魔女なんだろう


…あれ?ウルウ、どこ?そう思ったらなんとすぐ横にいた。そう。添い寝をしていた


結衣は思わずびっくりした。あれ!?私添い寝してほしいだなんて言ったっけ!?


あ…そうだ。私の部屋はそもそもおふとんはベッドのみで基本一人のみの布団しかなかったんだ


そうして仕方がないからウルウも一緒に寝ようとした。そうだった。寝てすっかり忘れていた


だが、このウルウという人物。彼女は本当に魔女?としてはきれいな顔してるなとは思う…


そう思ったらウルウは目を覚ますような動きかたをした。おっと起きてくるか


「ん…ん…おはよう結衣」


「お、おはようウルウ」


なんだか結構艶のある言い方をして女である私ですらドキドキしてしまう。まさか魔性の女とか言われてないよね


「朝食、作るね?」


「うん。契約者」


…その契約者とはなんだろう。また新しい単語が出てしまったぞ



結衣とウルウはひとつのテーブルに向かい合う形で朝食を食べていた


突然増えてしまったもうひとりの同居人。これは偶然なのか。運命なのか。それはわからないが


ごはんや味噌汁、漬物や納豆などを出したが、ウルウは普通に食べている。結構外国人っぽい顔つきしているのだが


「ウルウってこういうの、好き?」


「納豆や漬物?大丈夫よ。私、これ好きよ」


へー。なかなかよくできた人だ。…そうだ、そういえばこの人、いくつぐらいの人だろうか


「ねえウルウ、貴女はいくつなの?」


「私?私の身長は179センチよ」


でか…じゃないそうではない


「違うよ年齢よ」


「年齢?そうねえ…200歳。と言ったとこかしら」


200歳…今の時代から遡ると江戸時代末期だろうか…?いや、まだ末期ではない


「でも…封印されて一旦成長?は止まったんでしょ?」


「そうよ。ちょうど…記憶の限りでは1945年ぐらいかしらね…」


第二次世界大戦が終わった年。となるとウルウはそこらへんで封印されたのだろうか


「そうなんだ…封印されているときってどんな感じだったの?」


「私が封印されたときは、どこか暖かい水の中にいたわ。まるでお母さんの胎内にいるような。プカプカ浮遊して、気持ちよかったわ」


胎内…浮遊…どんな感じなんだろう


「なるほど…ありがとう」


「いいの。貴女は既に契約者。なんでも答えてあげるわ」


「うん。さて、私はそろそろ仕事に行くわ」


食器を片付けて仕事へ向かおうとしている結衣。ウルウはなんだと思った


「…どうしたの?」


「仕事って何?」


う、うむむ。それを説明しないといけないのか…


「仕事っていうのは社会のための労働だよ」


「労働!外にあるの?」


「そうだよ」


結衣が言うとウルウは前に封印されていた本を用意した。なんだろう?と思ったら魔法陣のページを開いた


「…それ!」


ウルウは魔法陣のページの中をどういう原理かしらないがつっこみ、そして中からあるものを取り出した


「それって!」


「ほうき、よ」


魔女にほうき。と言ったらあれしかない


「まさか…飛べるの!?」


「そうよ。案内してくれればほうきで飛んであげる」


す、すごい…!早速このウルウという魔女の素晴らしさに感動するところだった


「さあおいで」


ウルウは早速玄関に。結衣はついていくことに



マンション中庭に。ウルウは前に。結衣は後ろにいた


「早速飛んで!」


「待って注意事項を言うわ。ほうきで飛んでるときは私の体にしっかり捕まっていてね。もし、離そうものなら…わかるわね?」


…つまり、落下死ということか…


「わ、わかったわ」


「よーし、じゃあ出発!」


ウルウが言うとほうきがふわっと飛ぶ。ゆっくりと上昇していき、ある程度地上から離れた高度になった


そしてほうきは飛ぶ。しかも結構早い。結衣は頑張ってウルウの体にしがみついていた


「早い!車やバスで行くより早い!」


「これが魔女の基本の魔法。ほうきでの飛行よ」


これが基本なのか…


あまりにも早いほうきの飛び方。そして空気抵抗もなく、ひとっ飛びだった。もう住宅地から都会の場所まで行く


「誰も気がついてないね?」


「地上の人たちでしょ?これはステルス搭載だからなのよ」


ステルスすらできるのか。魔女の魔法とはすごいもの


「あ!あそこの会社だよ!」


「はーい」


結衣の務める会社へと着いた。会社の横にある人気のない道路に2人は降りた


「ありがとうウルウ」


「大丈夫よ。このぐらい、軽い運動よ」


2人は笑顔になっていた。本当に魔女とは凄い人なんだ。結衣は改めて実感した


「…そうだウルウ。うちの鍵を渡すからうちでゆっくりとしてるといいよ」


そう言って結衣はウルウに鍵を渡す


「そう?わかった。じゃあ家でゆっくりとしてるわね」


「うん!それじゃあ!」


結衣は会社へと入っていった



「ふーん。色々な本。あるのね」


ウルウは結衣の場所に帰ると早速本を読んでいた。様々な本があるこの結衣の買った本はウルウから見てもとても面白い


「持論、物語、考察。結衣ってとても読書家だったのね。私も魔女だからこういうのはとても好きよ」


パッパッと読み進めるウルウ。この魔女というのは速読も基本であり、読んで理解しないと魔女とはならないのだ


「いかがわしい本もないから安心ね。でもあったらあったで面白いと思うけど…ふふふ…」


まあ結衣はそんな本は買ってないためウルウは本を読んでいた


しばらくの間、ウルウは結衣の本を読んでいる。とても面白い本が多くて、ウルウはそれだけで十分に時間が流れていったのだった



結衣とウルウ


まだ始まったばかりの2人であった



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