第5話
「では、この線はどうだろう。臣下の集合から解散後すぐに公園に向かう。そしてかまくらの一部を破壊し、そこから侵入。ミカンを食べ、破壊した場所から脱出。そして穴を埋める。雪なんて周りに有り余るほど存在するから、材料には困らない。」
「確かにこの方法なら出入り口に足跡はつかないな。」
執権が感心する。
「それは無理だ。」
政所が口を開く。
「このクオリティのかまくらを短期間で破壊と再生は不可能。仮に一部分でも。周りは新雪だらけで固まりにくい。このかまくらは上に人が乗ったとしても崩れないほど頑丈であり、新雪が中に入ってくることがないくらい隙間なく密度が高い。」
「政所がいうならそうか。」
執権がすぐに手のひら返しをする。
確かに政所が作るかまくらの頑丈さには定評がある。芸術や工作における政所の信用度の高さは折り紙付きである。
しかし…
「逆に政所の技術があれば短期間に作り直すことが出来るのでは?」
「仮に政所にその技術があったとしても、それは不可能だ。なぜなら、かまくらの出入り口付近に限らず、周囲全てに足跡がなかったからだ。」
問注所が重大な指摘をした。
「え?かまくら付近のどこにも足跡がなかったって?」
「そうだ。俺たち全員で来るときに確認している。」
急に難易度が跳ね上がった。
もしかしたら人間以外の可能性を考えなければいけないかもしれない。
動物がなんとなくミカンを取っていった可能性。
しかし動物があんなに器用にミカンの皮を剥けるものだろうか。某ミカンは皮がヘタの反対側から綺麗に剝かれていた。そしてその後、テーブルの上に綺麗に剥いている箇所が見えないように置かれていた。これが動物の仕業とは思えない。
犯人は臣下の誰か。
臣下がかまくらに入るには足跡が必ず残る。
かまくらを短期間に破壊し、作り変えることは不可能。
かまくらの周囲に足跡はない。
穴だらけだと思っていたがこれは本当に不可能犯罪であり、かまくらは広義の密室なのか?
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