SCENE-002 鳴神の双子


 ダンジョンで初めて獲得するジョブは〝天職〟とも呼ばれている。どこの誰が、どういう基準で与えてくれるのかはわかっていないけど。ダンジョンでモンスターを倒し、レベルを上げて、ステータスを解放するとともに初期職ファーストジョブを得てしまえば、その影響から目を逸らし続けることなどできはしない。




「ロウ、ジン。あんたたちのジョブはなんだった?」


 パーティを組むつもりだからと一緒に行動していた幼馴染みの双子に声をかけると。外見的には髪を短くしているか、伸ばしているかくらいの違いしかない鳴神なるかみロウと鳴神ジンの兄弟は、二人で私のことを挟んで左右から、示し合わせたように同じ動きで自分のDタグを差し出してくる。


「あんまり人に見せるものじゃないのよ、それ」

「姫ならいいよ」

「同じく」


 私の手には二人分のDタグが押しつけられて。

 その代わりとでも言うように、ロウが私の手元からDタグを抜き取っていく。




 狼と仁が私のDタグを回し見ている間に、私が確認した二人のDタグには、双子らしく全く同じジョブが刻まれていた。




「二人とも獣士ビーストなのね」

「不満でも?」

「他人のジョブにケチなんてつけないわよ」


 ダンジョンで獲得できる、Dタグに表示されるジョブは大まかに〝戦闘職〟と〝支援職〟に分けられるとされていて。私の使役士テイマーは支援職。狼と仁の獣士ビーストは戦闘職だから、三人パーティのバランスとしては可、といったところ。


 三人中三人が支援職だと当初の予定通りパーティを組んでもピクニックレベルのエンジョイ探索しかできなかっただろうし、三人中二人が支援職でも同じようなものだっただろうから。私一人が支援職で、狼と仁が戦闘職というバランスは悪くない。


 贅沢を言えば近接と遠隔に分かれてくれていたら文句なしだったけど。獣士ビーストならセカンドジョブに遠距離攻撃手段のあるジョブが発現する可能性は低かったはずなので、あまり期待はしないでおく。




 レベル1で天職とも呼ばれる初期職ファーストジョブが発現して、下級職セカンドジョブが発現するのはレベルが10になってから。

 その二つのジョブから称号職とも言われる上級職サードジョブが派生するには最低でもレベルを50まで上げる必要があって。そこまでいくと、一流の探索者を名乗っても恥ずかしくないとされている。


 今のところ専業探索者になるつもりもない私たちだから、パーティのバランスなんて最低限〝戦闘職がいる〟というレベルでも構わないだろうと思い直して。私は手元にある二つのDタグを、それぞれの持ち主へと返却した。



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