校長のお願いを聞いて女子校へ飛ばされた俺は…どうすればいい?

時計屋

第一部・第一章「新しい日常」

第1話「校長を叩き斬りたい生徒会長」

「はあ……はぁ……っ」


とある学校の一階、校長室では、この学校の校長である四ノしのみやつかさが冷や汗だらけになりながら頭の上で両手を合わせていた。

自分の頭を叩き割ろうとする日本刀を防ぐ為に。

司は白刃取りをしたまま引き攣った顔で刀を持ってる人物を見た。


「……………。」


この学校、江崎高校の生徒会長を務める2年生、椿奏つばきしんは何も言わず、ただ穏やかに、全てを慈しむような微笑みを司に向けている。

目が全く笑ってないどころか、殺意丸出しで白刃取りされてるのにも関わらず刀を片手でそのまま下に降ろそうとしているところを除けば、だが。


「安心しろ、ここに飾ってある模造刀だ。直撃しても頭が叩き割れるだけで済むから。」

「ねえ、お願いだから穏便に話し合おう?頼むから。」


あるお願いをした途端、高速の抜刀をされた刀を白刃取りをしてからそろそろ10分は経つだろうか。

まったく緩まないどころか少しずつ力を入れて降りてくる刀を何とか抑え込みながら司は懇願する。


「奏、そこまでにしときなよ。気持ちは分かるけど。」

「そうそう。息の根止めたいのは分かるけど、取り敢えず落ち着けよ。」



◆◆◆


「………………。」


後ろからかけられた2つの声にジト目を向けながら持っていた模造刀から力を抜き、鞘に納めて元の位置に戻す。

視線を向けた先にはソファーには二人の男子生徒が座っていた。


神崎圭一かんざきけいいち。同じクラスの友人であり、新聞部の部長もやっている。

一見、見た目の整った人当たりの良さそうな柔和な笑みを浮かべている男だが、その実、ある意味この学校で一番敵に回してはならない男でもある。


もう一人の後ろの髪を纏めてる目付きの鋭い男は高遠たかとお流人りゅうと

こちらも同じクラスの友人で、口は少し悪く、取っ付きにくそうな奴だが、意外とお人好しな人間でもある。


「付いてきて良かったな、流人。」

「ああ。ただでさえ問題児の集まりの学校なんだ。翌日のニュースで校長が模造刀で両断されました、なんてのが流されたら目も充てられん。」


(圭一は面白そうだからって理由で付いてきただけだろうがな…。)


何かあった時の為―奏のストッパー役として―に二人は付いてきていたのだ。

まあ、奏がそろそろ仕留めようかと思い出したその時まで、揃いも揃って自室で寛ぐかのように来客用の高い紅茶を勝手に飲んで楽しげに様子を眺めていただけだが…。


「あのな、どこの世界に………」


大きく溜め息を吐きながら、奏は言葉の続きをいう。


「女子校へ自校の生徒を一人で送り出す校長がいるんだよ!」

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