第4話 エリーナをバカにする男子の集団

エリーナとカーラが外壁で談笑していると、少し離れた場所で

白人男子達が集まって何か話し合っているのが見えた。


よく見ると、その中心にいるのはアメリカ格闘団体UFOでもっとも稼いだ

祖父の遺伝子を受け継いでいる白人少年、ジェイク・マグレカーだった。

彼の祖父は文明時代に、エリーナの祖先に近いぐらい高く取引されていた遺伝子だったらしい。


ジェイク・マグレカーは子供離れした筋肉と、早すぎる髭がとても目立つ少年だ。


「ねぇねぇ、聞いた?エリーナがまたボーイを投げ飛ばしたんだって!」


「マジで?あいつ、女のくせに男に手を出すなんて調子乗りすぎだろ。」


「だよなー。俺たちの中で一番強いお前でもかなわないんじゃね?」


ジェイクは鼻で笑い、「あんなゴリラ女に負けるわけねーだろ。まあ、強いのは認めるけどよ。

だけど女としてはありえねーよな。カーラの方が全然マシだ。」と言う。


他の男子達も同意するように頷く。


「確かにカーラなら可愛いし、女らしいしな。」


「エリーナみたいなのが好きな奴なんていないだろ。メスゴリラみたいだもん。」


「上級生のザイアン・ミランガもゴリラみたいなもんだろ?力が強いだけで、野蛮で女らしさゼロだからな!」


「ああ、俺たちが成長期になる頃には、もう普通の女の子なんていなくなるんじゃねーの?」


「そうなったら、余ったゴリラと恋愛するしかないのかよ...。絶対嫌だな!」


ジェイクはエリーナとカーラの方を見やり、両手を派手に広げて大声で言った。


「アメリカのスターだった俺のじいちゃんの時代から100年もしないうちに

人間はゴリラと恋愛しなきゃいけなくなったのか?

全然いねぇけど、どうせなら美人な女子をはべらせてぇよ!」


その言葉に男子達は大笑いする。男子達の話は続いた。

エリーナとカーラは30メートルほど離れていたため、ジェイクの大声以外の

男子達の会話の内容はほとんど聞き取れなかった。


しかし、カーラは時折聞こえてくる「ゴリラ」という言葉と、

男子達が自分たちの方を見てはニヤニヤしている様子から、おおよその内容を察することができた。

一方、エリーナは花に夢中で男子達の会話にほとんど気づいていないようだった。


カーラは内心穏やかではなかったが、エリーナに気づかれないうちに囁きかけた。


「ねぇ、エリーナ。私達、外れの方の公園に行かない?花もたくさんあるし」


「うん、そうだね。もっとたくさんの花を選ぼう!」


カーラは立ち上がり、男子達から離れる方向にエリーナを押し始めた。エリーナが気付かないよう、

できるだけ自然に振る舞いながら、その場を離れようとしたのだ。


カーラは男子達の態度にショックを受けていたが、親友のエリーナにはそれを悟られまいと必死だった。

エリーナへの禁句のせいで男子の集団と物理的な大げんかにもなりかねないからだ。

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