第32話 決戦☆夏祭り開始!

 夏祭りの初めに、まず開会式が執り行われた。

 苗蘇神社びょうそじんじゃ苗蘇高校びょうそこうこう、そして地方自治体の関係者の挨拶や祝辞が続き、それが終わると静子しずこが祭りの開会を高らかに宣言した。

 そしてそれを合図に、いよいよ夏祭りが開演した。


 由佳ゆか狗巻いぬまきは本部席でお祭りの金券の販売を行っていた。

 屋台では金銭の受け渡しは行わず、本部席で販売している金券でやり取りをしてもらっていた。

 因みに金券は1枚200円が5枚綴りとなっていて、祭り会場ではペットボトル飲料が金券1枚、焼きそばやリンゴ飴などが金券2枚程度で販売されていた。

 夏祭りの開始直後は金券を求める祭客で本部は大忙しだったが、2時間程でその喧噪も収まった。

 この後、祭は夜の部の前にまた忙しくなるので、由佳と狗巻は今のうちに交代で休憩を取ることにした。


 先に休憩をもらった由佳は、祭り会場を離れ、苗蘇神社の様子を見に来た。

 今日は苗蘇神社のお祭りということもあって、多くの人が神社にお参りに来ていた。


 この日は神社の前におみくじやお札、お守りの販売所が設けられ、その場を楓が取り仕切っていた。


「あっ。由佳っ。ちょうどいいところにっ」


 由佳の姿を見ると楓かえでが助けを求めてきた。


「ごめんっ。ちょっとだけ手伝ってっ。これからが登場するんだけど、手が離せなくて」


「楓ひとりなの? 顕乗けんじょうさんも手伝うんじゃなかったっけ?」


「お兄ちゃんはイベントの準備に行っちゃったの。すぐ戻るって言うからちょっとの間だけならわたしひとりでも大丈夫かと思ったんだけど、急に忙しくなっちゃって」


 確かに今は、折悪しく、参拝客が集中してしまっている様子だった。


「そうみたいね。わかった。もちろん手伝うよっ」


 由佳は進んで楓の手伝いに入った。

 そして多くの参拝客にお守りや縁起物、それにおみくじを販売しながら「ふだんは自分しかいない苗蘇神社にこれほどの人がいるなんて───」としみじみ思った。


 その時、不意に由佳は、苗蘇神社がにぎやかで嬉しいと思う反面、ふと、いつもの自分だけの場所を、他人に踏み荒らされているような嫌な感覚を覚えた。

 由佳はそのことをすぐに自覚した。

 そして自分がこんな狭量なことを思うなんて、と意外に思った。


「最近、神様がいなくなったり、1万円のお賽銭を入れた人が誰か探したり、それにやっぱり大学受験もあって心に余裕がなくなっているわね…」


 由佳は小さく溜息をつくとともに、そんな狭量なことを思った自分を反省した。


 由佳が小さくため息をついたことに楓はすぐに気付いた。


「由佳、大丈夫? ごめんね。急に手伝わせちゃって。しんどかったら休んでくれてていいのよ。もともと由佳は本部の業務の合間に休憩でここに来たんでしょ?」


「あ、ごめん。楓。違うの。いいの。手伝わせて。楓の為だし、それに苗蘇神社がこれだけ賑わうのは私も嬉しいの」


 その言葉に安堵し、楓の表情は明るくなった。


「でも、神様はいないままだけどねっ」


 そういって楓は、しまったと思った。

 自虐的に、冗談めかして言ったつもりだったが、今の由佳に対しては失言で、不用意な発言だった。


「神様はどうしていなくなっちゃったんだろうね…」


 ポツリと由佳が呟いたので、楓はなんとか由佳を励まそうとやっきになった。


「ほ、ほら、由佳っ。本物の神様はいないけど、ならいるわよっ」


 楓が指さした先では歓声があがっていた。

 そこにはネコとネズミのマスコットの着ぐるみが登場していた。

 苗蘇神社には「びょうびょう」「」でネコとネズミのマスコットキャラクターがいるのだが、その着ぐるみたちだった。




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着ぐるみのマスコットってテンション上がりますよね♪

デパートとかでもイベントで登場すると「わー!」ってなります。

なので着ぐるみは大好きです!(๑•̀ㅂ•́)و✧


それはさておき───

今回のお話はどうでしたでしょうか?


ご意見やご感想をいただけますと幸いです。

宜しくお願い致します(⋆ᵕᴗᵕ⋆)

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