第14話 容疑者③ 二ノ瀬 静子

 翌朝、由佳ゆかはいつものように一条神社いちじょうじんじゃで神様に朝の挨拶をしていた。

 しかし挨拶もそこそこに、頭の中は1万円のお賽銭さいせんのことでいっぱいだった。


 次なる「容疑者」は二ノ瀬 静子にのせ しずこだった。


 静子しずこは中学1年の途中で転校してきて、由佳ゆかと同じクラスになった。


 静子の家は由緒ある家柄で、静子は地元では何不自由ない生活で伸び伸びと成長し、自分らしく振舞えていた。

 しかし、引っ越した先ではそのようにはいかず、まず、なんといっても独特の方言で周囲から好奇の目でみられるようになってしまった。


「なんでなんやろ。うちのしゃべりってそんなに変なんやろか?」


 涙を流す静子を由佳はよく慰なぐさめていた。

 そして不慣れな環境で、優しく手を差し伸べてくれる由佳を、静子は頼りにしていた。


 その上で、静子が以前住んでいた地域では、女性が男性の衣装を着て、歌劇を披露する舞台が人気だった。

 静子もその舞台に熱中していて、特に男装の麗人が、ゆるゆるふわふわした乙女と愛を育むストーリーが大好きだった。

 静子の将来の夢はそんな歌劇の団員で、男装の麗人のトップスターになることだった。


 そうした嗜好のある静子が由佳を好きになるのは、ある意味当然だったのかもしれない。


 由佳は、最初は静子が自分を頼り、慕ってくれているだけだと思ったが、静子の家で壁一面に貼られた歌劇のポスターを見て、これは別の様相があると察していた。


「女子同士の禁じられた恋だからね~……」


 由佳はぼそりと呟いた。


 その為、静子が「おなじくらすのきふねゆかにおもいがとどきますように」と願い事をする可能性は大いにあった。

 そして家が裕福な静子であれば1万円をお賽銭箱に入れることもできるかもしれないと由佳は思った。


「……やっぱり静子が一番怪しいわね……」


 由佳は眉間にしわを寄せて、うむむ…と唸った。




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宝塚歌劇団は良いですよね~(*´﹃`*)


静子は凛とした姿の生徒会長として生徒達から人気ですが、実はこの生徒会長は「男装の麗人」を意識してキャラクターを演じているんです。


方言(京ことば)を隠したい静子に、由佳が「じゃあ、こうしてみたら?」と提案したんです。


えらいぞ、由佳 Σd(≧∀≦*)ナイス!

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