33.だいたい悪いのは人間とエルフ
───どうやら竜人と呼ばれる種族は人間とエルフに滅ぼされたらしい。はいはい、またですかという感想だ。魔族に続いて竜人か…。だいたい悪い事してるのはエルフと人間だな。
「竜人の特徴は分かるか?」
「外見的な特徴で言えば人とドラゴンが混ざり合ったような姿をしています。基本ベースは人間ですがドラゴンのような翼や尻尾がありますし、個体差はありますが肌を護るように鱗に覆われていますね」
「魔族の四天王の『赤竜』のドレイクはもしかして竜人か?」
「実際に見た事はないですが、外見的な特徴は竜人と一致しますね」
人間とエルフに抑圧されて反逆した魔族と種族を滅ぼされた竜人。互いの利害は一致してるから魔族と共に闘うのか。もしかして竜人もかつて奴隷だったとかか? 魔族のように反逆して滅ぼされたとか。
「竜人も魔族のように奴隷にされていたのか?」
「いえ、竜人は奴隷ではありませんでした。奴隷に出来るほど弱い種族ではなかったので」
「違うのか?」
「はい。竜人はエルフに次ぐ魔力量を誇り様々な魔法を扱うセンスを持っていました。
その上、ドラゴンの特徴である翼を持っており飛ぶ事が出来たので機動能力は種族の中で頭1つ抜けていましたね。その体を覆う鱗も飾りではなく、並の剣では傷付ける所か逆に刃こぼれしてしまう程強固だったようです。
ドラゴンのように強力なブレスを吐くこと出来たので種族全体で見てもトップクラスと言えます」
デュランダルの説明を聞くと竜人という種族を奴隷にするのは無理だと分かる。あまりにもスペックが高すぎる。他の種族と比べても竜人だけが抜きん出てるのが分かる。
この化け物種族をどうやって滅ぼしたんだ昔の人間とエルフは。それだけが気になる。
「それだけ聞くと滅びるイメージが湧かないが、何かあったのか?」
「率直に言うと神に喧嘩を売ったんですよ。我らこそがこの世界を支配するのに相応しいと。その結果、神を信仰する人間とエルフを敵に回して滅びる事になりました」
「人間とエルフで滅ぼせると思えないのだが…」
「数が違い過ぎましたね。竜人はスペックは高いのですがその数は300に届くかどうかでした。対して人間とエルフは当時において2強と言える勢力を誇っていましたので。
竜人300に対して人間とエルフの連合1000万。流石に勝てませんよ。戦いは数だよマスター!」
最後の方がちょっと鬱陶しい。明らかにタケシさんの影響を受けているのが分かる。
そんな事はどうでもいい! つまり竜人は調子に乗って神に喧嘩を売った。その結果人間とエルフを敵に回して絶望的な戦力差で負けたと。
自業自得じゃないか? なんだ人間とエルフは悪くないじゃないか。
「つまるところ竜人の自業自得か?」
「最初のきっかけは竜人からでしたね」
「きっかけは?」
「はい。滅ぼすまでする必要は無かったんですよマスター。神も少し痛め付ける位でいいと思っていたので」
「だが滅んだぞ?」
「当初は神に喧嘩を売った事で理由で闘い始めましたが、竜人が体内に持つ魔晶石の存在に気付きました。途中から魔晶石が目当てになってましたね」
おっと、急に不穏になってきたな。魔晶石か。確か名前の通り魔石が結晶化したものだった筈だ。通常の魔石の何百倍の魔力を秘めており、魔石で動かせない大きな物を動かしたり様々な用途で使えた。個人で扱うものではなく、国や貴族といったもの達が使っていたな。数に限りがあるから表に流れてくることはなかった思う。
「竜人の体内に魔晶石があったのは何故だ?」
「竜人は他の種族と違って翼で空を飛べたりブレスが吐けたりします。翼を使って飛ぶのにも魔力を使うのですよ。当然ブレスも。頻繁に魔力を使っていたら幾ら竜人とはいえ魔力が尽きます」
「聞いてた話だとエルフよりは多くないみたいだしな」
「そうですね。だからブレスや翼での移動に使う魔力を別の所から持ってこようとして、幼少期の頃から余剰の魔力を溜め込んでいました。魔石を体内に取り込むことで魔力を留めていたようですね。長年の魔力が魔石に込められ塊となったのが魔晶石です。」
「人間やエルフでも魔力を溜め込めば魔晶石は作れるのか?」
「理論上は。やろうとはしませんがね。魔石を食べないといけませんから。体が異物と認識して排出しますよ」
何とは言わないが排泄物として出てしまうのだろうな。魔石を食べる? 小さいものでも5cmくらいはあるぞ。形も硬さも名の通り石のようなものだ。食べようという発想にはならないな。
「竜人の体の中の器官は人よりドラゴンに近かったのかもしれませんね。ドラゴンは魔石を食べる事で体内に魔力を溜め込み、より強い個体になりますので」
「ドラゴンを倒すと魔晶石が手に入るのも魔石を食べているからか。それと同じことを竜人がしていた訳だな。ただ、ドラゴンは個体差はあるが簡単に手を出せるほど弱い魔物ではない」
「その通りです。けど竜人は体の作りは人間に近かった。弱点も似ていましたね。ドラゴンと違って毒も効きましたので倒しやすかったのだと思います」
ドラゴンと同じように体内に魔晶石を溜め込んでいてドラゴンより狩りやすいか。前世でも絶滅した動物が同じように素材目当てで乱獲されていたと思う
国の発展に使える魔晶石は彼らからすれば喉から手が出るほど欲しかったものの筈だ。その結果、魔晶石欲しさに人間とエルフに滅ぼされたのか。欲望というのは末恐ろしい。
やっぱり悪いのは
「話を戻しますね。ロンダルギアは数少ない竜人の生き残りと魔族の間に産まれたハーフでした。
魔族が使う『闇』属性の魔法と竜人の特徴を持っていたので歴代でも最強と名高い魔王でした」
「種族の強みをどっちも持ってるならそりゃ強いか。闇属性以外の魔法を使えたのか?」
「魔族と違ってハーフだったからでしょうね。竜人と同じように様々な魔法が使えましたよ。『聖』属性を除く6つの属性の魔法を使ってきました」
俺の懸念通りだ。やはり魔族以外の血が流れるハーフの場合は他の属性の魔法が使えるか。魔王の容疑者としてサーシャも見ないといけない。トラさんとサーシャの2人の内どちらかが魔王か…。
それにしてもロンダルギアは魔族と竜人の良いところだけを取ったハイブリッドのようなハーフだな。歴代最強にも頷ける。
それを討伐したのだから4代目勇者ロイドは凄いな。タケシさんも活躍したんだろうか?
「どうやって倒したんだ?」
「闘っているうちに正攻法だと勝てないと判断しまして、一か八かの博打に出ました。
勇者ロイドが聖剣を投擲しまして、それを回避したロンダルギアに前のマスターが全ての魔力を使った奥義を放ちました」
「奥義?」
「『オタク神剣 コミケ戦士の情熱を舐めるな斬』ですね」
ダサい。
「言ってしまえば前のマスターの魔力と蓄積していた全ての魔力を使った超極大の魔力の斬撃ですよ」
「俺でいう『飛燕』か」
「はい。聖剣を避けたばかりのロンダルギアに回避する事は出来ず『オタク神剣 コミケ戦士の情熱を舐めるな斬』が直撃。両腕が吹き飛ぶ程の傷を負って怯んだ所を聖剣を拾った勇者ロイドが首をはねてどうにか倒しました」
奥義の名前はクソほどダサいけど、タケシさんの活躍があってこその勝利じゃないか。
勇者ロイドとタケシさんのコンビネーションも素晴らしい。固い絆に結ばれていたのだろうか?
加入は最後の方だったがそれでも2人しか男がいないから仲良くなったのだろう。俺もパーティーに男の仲間が欲しかった、トラさんが男だと思ってたら違ったので。
「タケシさんの大活躍だな。」
「はい!ですが奥義が外れるか防がれたら不味かったですね。魔力が尽きた前のマスターはそこまで強くないので
マスターと違って剣術より魔法剣士としての立ち回りをしていました。」
だからこその博打か。相応のリスクを背負わないと勝てないほどロンダルギアが強かったという事か。5代目魔王はどうだ?
先代勇者でも倒す事が出来ず封印という形で対処した筈だ。ロンダルギアより強い可能性もあるのか。
何か手掛かりはないか?
「5代目魔王とロンダルギアに繋がりはないか?」
「すみません、5代目魔王は情報が少なくて私でも分かりません。」
「デュランダルが知っている事でいい教えてくれ」
「ドラゴンの肉が好物だと聞いた事があります」
───そんな情報はいらない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます