第2話 パンプキン・パイ争奪戦



うちの高校には、「食堂」がない。


下界(高台にあるので、みんなこう言っていた)までははるか遠く、近隣には食事をとれる店が3店しかないのにも関わらず、だ。

しかも土曜以外は利用禁止。

校門外から脱走したのがバレて、生徒指導室に呼ばれる者も数多あり。


唯一利用できるのは、校内売店が販売する「パン」のみ。

数は限られている。

まあうちの学校はよくマンガで見られる「争奪戦」みたいなことは起きず、ほとんどの人はお弁当を持ってくるか「下界」からちゃんと朝登校前に買ってくるので、いたって平和な利用状況だったのだが、ある時期だけちょっとした「争奪戦」が起きていた。


・・・と、言ってもカナと僕の間だけだったんだけど。


ある時期=ハロウィンも近い10月中頃からの約2週間ほど。

この時期だけ限定で、「パンプキン・パイ」が販売されていた。

最初に見つけたのはカナの方だった。


「今日買ったパンプキン・パイ美味しかったー」


「へー。そーなんやー。」


・・・気になる。超気になる。

そんなに美味しいのならば、買うしかあるまい。


翌日。

売店にパンが搬入されるのは2時間目と3時間目の間。

いろんなパンがケースに入れられて、長机に置かれたタイミングで、お目当ての「パンプキン・パイ」を探す。・・・・よし、ゲットー!


放課後。


「昨日言ってたやつ、食べたけど、確かにおいしかった。」


「でしょー?でも今日は私、食べれてないんだー」


「・・・2~3個しかなかったからなあ・・・」


「その1個が盗られたわけね!ズルい!」


「いやズルいって言われても」


けっこー人気があるらしく、タイミングを逃すと入手できないものであるらしい。

今も昔も「レア」には弱い僕は、いつしかささやかな「争奪戦」に身を投じることになる。

で、ゲットしたときには、カナと僕はお互いに「戦果報告」をしあって遊んでいた。

お弁当を持ってきているので、実はそんなに頻繁に買わなくてもよく、時々先に買ってカナに渡したり、お昼には食べないで帰り道に二人で分けて食べたこともあった。



味も確かにおいしかったけど、どっちかというとカナと共有することが楽しかったから買ってた、という方が、多分正解。


とはいえ、もう11月だから、パンプキンパイはもう売店にならんでない。



最近?


最近はなんかケンタッキーのビスケットにハマってるらしい。あれ、食感がモサモサしてて、あんまり好きじゃないんだけどなあ・・・





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